日経サイエンス  2002年3月号

宇宙の最初の星

R.B. ラーソン(エール大学) V. ブロム(ハーバード・スミソニアン天体物理研究所)

 ビッグバンから1億年後,漆黒の宇宙から最初の星々が誕生した。最初の星がどのように誕生したのか,それらの星がどのような星だったのかが,コンピューターシミュレーションで明らかになってきた。

 

近年になって,宇宙がどのようにして暗闇から光の世界に劇的に変わったのかに答えを出す大きな進歩があった。洗練されたコンピューターシミュレーションの結果,ビッグバンが残した「密度のゆらぎ」がどのように発展して最初の星々ができたかがわかってきたのだ。さらに,遠方のクエーサーの観測によってはるか昔のことがわかり,「宇宙の暗黒時代」の最後の日が垣間見えてきた。

 

 新しい宇宙物理のモデルによると,最初に生まれた星々は非常に質量が大きく,明るかった。それらができることによって,宇宙の進化が根本から変わったと考えられる。これらの星が周囲のガスを熱して電離した結果,宇宙の発達過程は一変した。また,これらの星々の中で重元素が初めてでき,それが宇宙に広がって,私たちの太陽系のようなシステム(恒星+惑星系)が生まれるもとになった。さらに,最初の星々が崩壊してブラックホールになり,銀河の中心に大質量の巨大ブラックホールを作り出して,クエーサーの壮大なエネルギー源になった例もあるだろう。つまり,最初の星々が現在私たちが見ている宇宙を生み出すきっかけになった。

著者

Richard B. Larson / Volker Bromm

2人は共同で“宇宙の暗黒時代”を終わらせた過程を理解するための研究をし,宇宙の最初の星の誕生の謎解明を成し遂げた。ラーソンはエール大学天文学教授。1968年にカリフォルニア工科大学でPh.D.取得後,エール大学の教授陣に加わった。専門は星形成の理論と銀河の進化。ブロムは2000年にエール大学でPh.D.を取得後,現在,ハーバード・スミソニアン天体物理研究所で研究員として宇宙の構造の出現に焦点をあてて研究している。エール大学準教授のコッピは,彼らとの初代星形成についての共同研究で多くの成果を上げた。

原題名

The First Stars in the Universe(SCIENTIFIC AMERICAN December 2001)