高村 薫×佐藤勝彦
高度に発達した現代の科学は,いまや一般人の理解や想像の及びにくい世界に入り込みつつある。私たちは最先端の科学とどう向き合えばいいのか。科学者たちは自らの発想をどう表現して市民に伝えていくのか。本誌を創刊時から定期購読している直木賞作家・高村薫氏が,宇宙論の第一人者・佐藤勝彦東京大学教授と語り合った。
おもなテーマ
・私が科学を読み続ける理由
・日常を超えた物理学の「発想」をどうとらえるか
・「知の冒険」についていく
・理解には「積み重ね」が必要なのだろうか?
・「面白さ」をどう表現するか
・科学者が自ら語りかける
・「知って何になる」が私たちの動機ではない
・「難しくても面白いこと」がある。
人間のものとしての物理学(高村薫さんの書き下ろし)
しかし 私たちは実利的な意図があって科学を読んでいるのではない。
「知の冒険」のストーリーにひきつけられるのだ
新仮説を提出するという冒険を繰り返しながら科学は一歩ずつ進んできた。
私たちにはそのストーリーを生き生きと伝える表現が求められているのだろう。
高村薫(たかむら・かおる)
1953 年生まれ,大阪府出身。国際基督教大学卒。
90 年『黄金を抱いて翔べ』で第3 回日本推理サ
スペンス大賞,93 年に『リヴィエラを撃て』で
日本推理作家協会賞,同年『マークスの山』で直
木賞。代表作に『レディ・ジョーカー』など。
佐藤勝彦(さとう・かつひこ)
東京大学大学院理学系研究科教授
1945 年生まれ,香川県出身。68 年京都大学理学
部卒。北欧理論物理学研究所客員教授などを経て
90 年から東大教授。専門は宇宙論と宇宙物理学
で,インフレーション理論の提唱者の1 人。2001
年4 月から東大理学部長を兼務。