
ごく普通のパソコン(PC)を数十台から数百台つないで,1秒間に数十億回の計算を行うパワフルなスーパーコンピューターを作ろうという試みが進んでいる。
天気予報や核爆発のシミュレーションといった複雑な問題を解くには,並列処理ができるスパコンが必要だ。IBMやクレイのスパコンには非常に高速のマイクロプロセッサーが多数組み込まれていて,並列的な動作を実現する。だが,こうしたスパコンは,数千万ドルものコストがかかっており,わずかな予算しかない研究グループにとっては手の届かない買い物だ。
そこでここ数年,研究者たちはPCをつないで独自のスパコンを作る方法を検討してきた。このシステムはPCクラスターと呼ばれ,Linuxのような使いやすい基本ソフト(OS),通信用のイーサネット(Ethernet),アルゴリズムの工夫などによって,大量の計算を必要とする問題が解けるようになった。(編集部)
著者
William W. Hargrove / Forrest M.Hoffman / Thomas Sterling
いずれもベオウルフ(Beowulf)コンピューターの開発者。ハーグローブは,テネシー州のオークリッジ国立研究所(ORNL)でコンピューター物理学および工学部門勤務。大きい問題と膨大なデータと格闘している景観生態学者である。ホフマンはORNLの環境保全科学部門のコンピューター専門家。空き時間があると,地下室でスーパーコンピューター作りに取り組んでいる。スターリングは,NASAのゴダード宇宙飛行センターで初のベオウルフクラスターを作った人物だ。カリフォルニア工科大学先進コンピューターセンターに籍を置くほか,ジェット推進研究所の主席研究員でもある。
原題名
The Do-It-Yourself Supercomputer(SCIENTIFIC AMERICAN August 2001)