日経サイエンス  2001年9月号

開発進む低公害HCCIエンジン

S. アシュレー(SCIENTIFIC AMERICAN編集部)

  ガソリンエンジンよりもクリーンで,ディーゼル並みの燃焼効率を実現できる“異種交配”エンジンが,直接噴射ガソリンエンジン(GDI)に続く“第4のエンジン”として期待を集めている。

 

 20年以上昔の乗用車やトラック,オートバイなどを運転したことのある人なら,「アフターラン」という現象を経験したことがあるだろう。キーを外してもエンジンが数秒間回り続ける現象のことだ。最近ではめったにないが,昔のドライバーはこの現象に悩まされたものだ。いま,この「アフターラン」の燃焼原理が自動車メーカーの関心を引きつけている。

 

 この原理は予混合圧縮自己着火燃焼(Homogeneous-Charge Compression-Ignition combustion, HCCI燃焼)と呼ばれ,従来のエンジンよりもすぐれた燃費性能と排気性能を実現できる燃焼方式だ。HCCI燃焼方式のエンジンなら,窒素酸化物(NOx)やすすを排出せずに,ディーゼルエンジンに匹敵する高効率を達成できると多くの研究者は考えている。

 

 HCCIは優れた燃料経済性と排出ガスの大幅な低公害化を実現できる技術だ。従来のガソリンエンジンとディーゼルエンジンの双方の優れた特徴を生かした「異種交配の技術」とみなすことができる。

 

 各国政府による有害排出物規制がますます厳しくなる一方,燃料電池自動車の実用化にはまだかなりの年月がかかるとみられている。世界の主な自動車メーカーやディーゼルエンジンメーカーは,技術と経済の両面から,HCCI技術の実現可能性を見極めようとしている。もしこの技術が導入されれば,この新燃焼方式による動力源は,現在のディーゼルエンジンやガソリンエンジンから,将来導入されるはずのよりクリーンな燃料電池への橋渡し的存在となるだろう。

原題名

A Low-Pollution Engine Solution(SCIENTIFIC AMERICAN June 2001)

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HCCI