日経サイエンス  2001年6月号

解き明かされる味覚の情報伝達

D.V. スミス(メリーランド大学) R. F. マルゴルスキー(ハワード・ヒューズ医学研究所)

 科学者は一般に人間の味覚を5つの種類(基本味)に分けて表現している。塩味,酸味,甘味,苦味,うま味である(英語でもumamiという)。

 

 ここ数年,さまざまな研究から,味を感じる仕組みが急速に解き明かされてきた。著者の1人,マルゴルスキーは,舌の味細胞が甘味と苦味物質を感じるために重要な役割を担うタンパク質を発見した。そのタンパク質は視覚の認識にかかわるものとよく似ていることもわかった。

 

 もう1人の著者,スミスらは,脳の神経細胞(ニューロン)や神経線維が同時に異なる種類の信号に応答する証拠をつかんだ。その仕組みは,網膜からの視覚信号がいくつもの色に反応できるという点で視覚の伝達にも似ている。
 味覚は感覚研究のなかでは未開の分野に近かったが,こうした発見によって,光明がさし始めている。(本文より)

著者

David V. Smith / Robert F. Margolskee

 スミスの専門は心理生物学と神経生理学。ピッツバーグ大学でPh.Dを取得後,ロックフェラー大学でポスドク研究を行う。1994年よりメリーランド大学医学部の教授となり,現在,解剖・神経生物学講座の神経生理学担当で,副講座主任を務める。

 マルゴルスキーの専門は分子神経生物学と生化学。ジョンズ・ホプキンス大学医学部で医師となり,分子遺伝学でPh.D.を取得後,スタンフォード大学生化学教室でポスドク研究を行う。現在,ハワード・ヒューズ医学研究所の準研究員,1996年よりマウントサイナイ大学医学部の生理学・生物物理学及び薬理学の教授を兼務。ラングエージェン社(Linguagen,ニュージャージー州)という名のバイオテクノロジー関係の会社を設立した。

原題名

Making Sense of Taste(SCIENTIFIC AMERICAN March 2001)