
現在の通信料金はサービス内容に比べて割高で,ユーザーにとって割に合わないという指摘も多い。モバイルITが急速に普及するかどうかは,通信料金に大きく左右される。
日本では携帯電話のネット接続が急速に普及したが,この勢いが今後も持続するかどうかはまだはっきりしない。携帯電話の小さなボタンで電子メールを書くのも煩わしい。「ディスプレーが小さく,サービスも貧弱なのに料金だけは高くつく」とぼやく利用者もいるかもしれない。アナリストの間にも「携帯電話のネット接続は料金に見合ったサービスを提供していない」という指摘が多い。
多くの企業が携帯電話ネット接続の技術的な可能性に注目し,消費者のふところを当てにしている。通信会社にとって,「いつでもどこでも電話が使える」ことは「利用者がいつでもどこでも金を使う」ことを意味する。モバイルITは「移動する財布」でもある。だが,携帯電話関連の企業が料金引き下げに努力しないと,「モバイルITがもたらす便利な社会」という宣伝文句は夢のままで終わってしまうかもしれない。
著者
David Wilson
サンノゼ・マーキュリー・ニュース紙記者。1991年以降,インターネット関連ニュースを担当している。「だれよりも遅く考える人が,最後に笑う」がモットー。
原題名
The Future Is Here. Or Is It?(SCIENTIFIC AMERICAN October 2000)