日経サイエンス  2001年1月号

特集:次世代モバイルIT

終わりなき開発競争

L.カーネイ(Wired News 誌記者)

 「第3世代(3G)」と呼ばれる新しい携帯電話技術の実用化が近づいている。しかし,3Gにもさまざまな課題があり,将来技術の本命ではない。課題を克服しようと,次々世代技術の開発が早くも本格化してきた。

 

 3G方式は携帯電話の第1世代,第2世代とは違って,音声だけでなくデータをやり取りするために開発された。通信会社は,3Gが普及すれば毎秒2.4メガビットの速度で通信が可能になると宣伝している。これは現在の有線方式の広帯域インターネットより2倍速く,動画や音楽,ゲームを短時間でダウンロードできるようになる。

 

 確かにそうかも知れない。しかし,3Gの能力は評判ほどではないと警告する声も,大合唱のように広がっている。3Gは単独の標準や技術ではなく,さまざまな高速インターネットサービスを携帯電話ネットワークで利用できるようにする概念全体を指している。多くの場合,3Gは現行システムを手直しし,機能を拡張して開発されてきたが,性能の限界が指摘されている。

 

 伝送速度を向上させたり,多数の利用者が同時に接続しても通信の品質を維持するには,性能をさらに高めた「第4世代」の携帯電話技術が求められる。次々世代のネットワークの主導権を握ろうと,「アレイアンテナ方式」「超広帯域伝送」「多重伝送」など様々な革新的な技術が生まれつつある。

著者

Leander Kahney

Wired News誌スタッフライター。

原題名

The Third-Generation Gap(SCIENTIFIC AMERICAN October 2000)