日経サイエンス  2001年1月号

特集:幕開ける脳科学の世紀

精神疾患から探る脳

精神分裂病は解明できるか

計見一雄(千葉県精神科医療センター長) 茂木健一郎(ソニーコンピュータサイエンス研究所リサーチャー)

 精神疾患は私たちが避けて通ることのできない問題だ。他の身体の病気に比べ,機能の面から病気に迫ろうという見方が遅れていることにも,治療や予防を難しくしている原因があるのではないか。急速に進展する脳科学によって,精神分裂病で苦しまなくてもよい時代はくるのだろうか──。精神科の救急医療の現場で活躍する臨床精神科医に,「脳とクオリア」で知られる気鋭の脳科学者が,分裂病とはどんな病気か,この病気の解明にはどんな考え方が有効なのかを聞く。(編集部)

■話し手:計見一雄(けんみ・かずお)
 千葉県精神科医療センター長,医学博士。 日本の精神科救急医療の開拓者として,臨床 の最前線で活躍している
■聞き手:茂木健一郎
 ソニーコンピュータサイエンス研究所リサ ーチャー,理学博士。専門は脳科学。視覚認 識を中心とする脳の高次情報処理を理論的, 実験的に研究している。最近は,両眼視野逃 走を特に詳しく調べている。