
ビジネスや生産現場,医療などで意思決定する際に,よりよい選択をするための統計的手法がある。こうした方法を利用することによって,多くのよりよい判断ができるようになれば,しばしば人命を救うことにもなる。
医師は胸部X線を見て疑わしい部分が腫瘍ではないかどうかの判定に苦しみ,仮釈放審査委員会は凶悪犯罪の可能性のある犯罪者の釈放について悩む。また,飛行機の整備士はいろいろな超音波検査装置の値を見ながら,翼に致命的な裂け目があるのではないかと心配する。
彼らは皆,診断や分析結果を判断する決定問題を解決しようと努力している。不完全な,あいまいな証拠に基づいて,ある条件が存在するか,あるいは起こるかの判断を下さなければならない。そのような問題は健康管理,公共の安全,ビジネス,環境,法律,教育,工業,情報処理,軍隊や政府でしばしば起こりうる。しかも,その代償は高く,多くの場合,間違った判断は人々の死を意味する。
驚くかも知れないが,診断上の意思決定プロセスは,分野が異なっても本質的に変わらない。したがって,ある産業分野でプロセスを改良する方法は,通常,他の分野でも有効だ。そのような統計的方法が少なくとも2つある。ここでは眼の病気である緑内障を例に,その手法を紹介する。
著者
Johon A. Swets / Robyn M. Dawes / JohnMonahan
3人は,最近,米国心理学会が発行する雑誌の創刊号に,この論文の内容について,もっと技術的な論文を共同執筆した。それは広範囲で重要な問題について心理学的研究を概観している。スウェッツはマサチューセッツ州ケンブリッジにあるBBN技術研究所の名誉主任科学者で,ボストンのブリガム・アンド・ウィメンズ病院放射線科専門研究員で,ハーバード大学医学部の保健治療政策科講師でもある。ドウズはカーネギー・メロン大学の社会科学・決定科学部のチャールズ・J・クイナン・ジュニア教授で,RationalChoice in an Uncertain Worldの著者でもある。モナハンはバージニア大学法学部ドハティー講座の心理学者で,精神衛生の研究ネットワークとジョン・Dとキャサリン・T・マッカーサー法律研究所所長でもある。
原題名
Better Decisions through Science(SCIENTIFIC AMERICAN October 2000)