
2000年のノーベル化学賞に輝いた筑波大学名誉教授の白川英樹氏は,電気を通さないと考えられていたプラスチックに高い導電性を持たせることに成功し,今回の受賞につながった。ある偶然をきっかけに導電性プラスチックの開発に突き進み,共同受賞者の米ペンシルベニア大学教授のA.G. マクアダイアミッド氏とカリフォルニア大学サンタバーバラ校教授のA. J. ヒーガー氏と協力して1977年に導電性プラスチックを世界に先駆けて実現した。
この開発はそれまでの常識を覆しただけでなく,それをきっかけに導電性プラスチックが小型電池や表示装置,光電子部品などさまざまな産業応用されるようになり,それも授賞の理由としてあげられた。
導電性プラスチックの研究は,東京工業大学の資源化学研究所の助手だった白川氏のもとで研究していた外国人研究者がポリアセチレンの合成の際に誤って高濃度の触媒を使ってしまい,薄膜状のポリアセチレンをつくったのがきっかけで,白川氏はこの薄膜状のポリアセチレンに導電性を持たせるのに力を注いだ。共同受賞者との出会いがそれを結実させ,後の成果につながった。
こうした開発経緯や導電性の仕組みを共同受賞者のマクアダイアミッド氏が紹介,白川氏が翻訳した論文「導電性プラスチックの発見」を掲載,さらに共同受賞者との出会いが白川氏の後の研究に与えた影響をまとめた論文「出会いが生んだ飛躍」,白川氏の研究哲学をまとめた「自ら明かす研究哲学」を掲載している。
導電性プラスチックの発見 A. G. マクダイアミッド/R. B. カナー
出会いが生んだ飛躍 竹内雅人
自ら明かす研究スタイル 編集部