日経サイエンス  2000年11月号

星の誕生の謎に迫る

T.P.レイ(ダブリン高等研究所)

 これまで星がどのように生まれるのかはよくわかっていなかった。200年以上前,フランスの数学者ラプラスが「太陽系は回転するガス雲から作られた」と考えた。重力でガスが中心に落ち込み,それが太陽になる。同時に,物質の一部は,回転による遠心力で落ち込まず,太陽のまわりを円盤状に取り囲み,それが惑星になるという考えだった。星の形成もこのシナリオにしたがうように思われたが,確かめるすべがなかった。

 

 ここ数十年で,観測技術が飛躍的に向上し,ラプラスの仮説を確認できるようになった。新発見から理論とこれまでの観測の矛盾点もいくつか解決され,研究者はようやく星形成の過程を推測できるようになった。

著者

Thomas P. Ray

 現在,アイルランドのダブリン高等研究所の教授であり,サセックス大学とハイデルベルク のマックス・プランク天文学研究所にも勤めている。高校時代,進路指導の先生に「天文学者 になりたい」と相談したところ,「それはすごいじゃない。でも本業はどうするの」と言われた ことがある。彼はハッブル宇宙望遠鏡による若い星からのジェットの観測に常にかかわってい る。クエーサーや彗星,天文考古学(ストーンヘンジのような遺跡の研究),ヨット,ギネスビ ールに関心がある。 

原題名

Fountains of Youth: Early Days in the Life of a Star(SCIENTIFIC AMERICAN August 2000)