
芸術家としてその名を知られるレオナルド・ダ・ヴィンチは,ペニスの謎を科学的に解明しようと務めた科学者でもあった。「ペニスには自分の意思があるように思える」とダ・ヴィンチは書き残している。彼は,勃起中のペニスを満たしているのは空気や精神的な何かではなく,血液であることまでは突き止めたが,その後の研究の道のりは長かった。
現在では,ペニスは中枢神経系,つまり脳と脊髄の完全な支配下に置かれていることがわかっている。さらに,分子生物学の進歩により,勃起と消脹(萎えた状態に戻ること)を引き起こすペニス内のプロセスが詳しく解明されている。
この分野の本格的な研究は始まってまだ日が浅いが,勃起障害(ED)に悩む男性の新たな治療法につながるものと期待されている。女性に関する研究は男性よりはるかに遅れているが,性機能に関しては,男女間には相違点だけでなく,驚くべき類似点があることも明らかになってきた。
著者
Irwin Goldstein / the WorkingGroup for the Study of Central Mechanisms in Erectile
ボストン大学泌尿器科医師。1998年に結成された「勃起障害の中枢機構研究に関するワーキンググループ」のメンバー。他のメンバーは,インディアナ大学のバンクロフト(JohnBancroft),南パリ大学医学部のジュリアーノ(Francois Giuliano),オンタリオ州クイーンズ大学のヒートン(JeremyP. W. Heaton),ジョージア医科大学のルイス(Ronald W. Lewis),カリフォルニア大学サンフランシスコ校のルー(TomF. Lue),ノースウェスタン大学のマッケナ(Kevin E. McKenna),南カリフォルニア大学のパドマ=ネイサン(HarinPadma-Nathan),ロバート・ウッド・ジョンソン医科大学のローゼン(Raymond Rosen),コネティカット大学のサックス(BenjaminD. Sachs),ケース・ウェスタン・リザーブ大学のセグレーブズ(R. Taylor Segraves),バージニア大学のステアーズ(WilliamD. Steers)。著者は全員が1社以上の製薬会社(アボット,イーライ・リリー,メルク,ファイザー,TAPなど)のコンサルタントや研究員を現在または過去に務めている。サックスはアボットの株主。ヒートンはアポモルフィンに関する特許数件を共同所有。
原題名
Male Sexual Circuitry(SCIENTIFIC AMERICAN August 2000)