日経サイエンス  2000年9月号

特集:様相変わる戦争

戦場に駆り出される子供たち

N. G. ブースビー(ともに子供を救う会) C. M. クヌドセン

 世界の貧しい国々の軍司令官にとって,子供はあらゆる戦略の遂行に欠かせない存在だ。子供は大人の兵士に比べて敏しょうで,感化しやすく,いざという時に見捨てることも簡単だ。危険な検問所で監視させたり,地雷を見つけさせたり,敵の陣地に潜入させたりもできる。子供ならではの道徳,慈悲などに対する感受性の強さも,訓練によってたたきのめし,捨てさせてしまえる。

 

 子供へのそんな仕打ちはまれにしかないと,誰もが思いたい。しかし,現実は違う。毎日,世界中で子供たちは連れ去られ,軍隊の兵士に採用されている。推定によれば,30 万人もの子供が,アジア,ヨーロッパ,アフリカ,南北アメリカ,旧ソ連の36 の紛争に参加している。シエラレオネの反乱軍では,全軍の80 %が7 ~ 14 歳の少年だ。1989 年から1997 年まで続いたリベリア内戦では,7 歳児が戦闘に参加していた。名目上は1980 年代初めに終結したカンボジア内戦では,負傷兵の1/5 が10 ~ 14 歳の少年たちで占められていた。

 

 多くの人は「少年兵士」という言葉を聞き,CNN テレビの映像で見るような,自動小銃を手にした10 代の少年を想像する。だが現実には,政府軍もゲリラ軍も,6 歳になったばかりの幼い少年少女を雇っている。年少の子供はスパイ,運び屋,料理番などに使う。年長になると,武器をとり,戦闘に参加するようになる。子供は家族のもとから連れ去られることもあるが,自らの身の安全と生き残りをかけ,進んで武装勢力に入隊する場合もある。私たちはアフガニスタン,ルワンダ,モザンビーク,カンボジアでの活動を通じ,少年兵問題の広がりと根の深さを見てきた。18 歳未満の少年兵は広く採用されている。




再録:別冊日経サイエンス251『「戦争」の現在 核兵器・サイバー攻撃・安全保障』

著者

Neil G. Boothby / Christine M. Knudsen

2 人はワシントンの「子供を救う会」のメンバー。ブースビーは国連高等難民弁務官事務所(UNHCR)やその他の機関,支援団体で難民の子供たちのためのプログラム調整担当を歴任した。1986~1996年にデューク大学教授,1989年,赤十字国際委員会より国際人道主義者賞受賞。クヌドセンも1997~ 1999年,UNHCRでの活動に従事し,ブルンジ和解プログラムを提案したり,その他数ヶ国で戦後復興に関する研究調査を行った。

原題名

Children of the Gun(SCIENTIFIC AMERICAN June 2000)