日経サイエンス  2000年9月号

骨から探るアメリカ先住民の暮らし

C.S. ラーセン(ノース・カロライナ大学チャペルヒル校)

 スペイン人が,アメリカ大陸に上陸してから,アメリカ先住民(アメリカ・インディアン)の生活は劇的に変わった。西洋人による征服と,伝染病の流行で,短期間に多くの先住民が命を失った,その様子を当時の記録は生々しく描写している。だが,古文書の記録だけからは,スペイン人との接触が先住民にどのような影響を与えたかを正確に知るには不十分だ。

 

 生物考古学(Bioarchaeology)は人骨など考古学的な遺物から,当時の人の健康状態や労働状況などを探る比較的新しい研究分野だ。この研究から,米国南東部のかつて「ラ・フロリダ」と呼ばれていた地域で,スペイン人宣教師が建てた布教施設に暮らしていた先住民の健康や日常生活について新たなことがわかった。

 

 フロリダ州やジョージア州では,スペイン人宣教師が16世紀頃に建てた大きな教会の跡がいくつか発掘された。その教会に埋葬された先住民の骨を,先祖たちの骨と比較してみると,栄養に乏しい食事や衛生状態の悪化,過酷な労働でかなり健康がむしばまれていたことがうかがえた。

著者

Clark Spencer Larsen

米国や海外からの多数の研究者が参加しているラ・フロリダ生物考古学プロジェクトを指揮している。カンザス州立大学で1年生のときから古代の人の骨の研究を始め,1974年に文学士号を取得,1980年にミシガン大学で生物人類学の博士号を取得した。ラーセンは,ノースカロライナ大学チャペルヒル校の人類学の教授で,ニューヨーク市のアメリカ自然史博物館の共同研究員でもある。現在米自然人類学会の会長も務めている。

原題名

Reading the Bones of La Florida(SCIENTIFIC AMERICAN June 2000)