日経サイエンス  2000年8月号

最古のピラミッドに隠されていたもう1つの墓

K.ミシュリヴィエッツ(ワルシャワ大学考古学研究所)

 古代エジプトの王族が埋葬されている地域としては最も広大なサッカラ。ここでは,最古のピラミッドとしてジェセル王の階段ピラミッドが有名だ。ただその西側は,考古学者にあまり関心をもたれていなかった。ポーランドの考古学チームは,あえてその手つかずの場所を選び発掘を始めた。財政難による9年間の中断など紆余曲折を経て,豪華な内装の宰相の墓を掘りあてた。

 

 

再録:別冊日経サイエンス210「古代文明の輝き」

著者

Karol Mysliwiec

現在,ポーランド科学アカデミーの地中海考古学研究所と,ワルシャワ大学考古学研究所の所長。ワルシャワ大学では,故ミカロブスキー教授のもとで研究に励み,後にミュンヘンでミューラー(WolfgangMuller)教授のもとで研究を続ける。1969年以来,ワルシャワ大学のポーランド考古学研究所とドイツ考古学研究所の考古学チームと共に,エジプト(アレクサンドリア,デイルエルバハリ,クルナのセティ1世の神殿,ミンシャットアブーオマール,テルアトリッブ,サッカラ)で発掘作業を続けている。また,シリア,スーダン,キプロスの発掘調査にも参加している。1985 ~1995年,テルアトリッブ(ナイル・デルタの遺跡)にアレクサンダー大王の兵士たちが造ったといわれている古代の町の発掘作業を指揮した。また1987年以来,サッカラのポーランド・エジプト発掘調査隊の隊長として活躍している。

原題名

Nowe odkrycia przy najstarsej piramidzie swiata(SWIAT NAUKI Sierpien 1999)