
1世紀以上も前に,ダーウィン(Charles Darwin)は,地球上のすべての生物の系統を祖先へと遡っていくと,最終的には1つに集約されて,生命の起源にたどりつくと主張した。すべての現世種や絶滅種の関係は1本の系統樹として示せるはずとした。現代の研究者たちも,ここ10年間は,遺伝子から生物の系統関係を調べていく研究から,最も古い根の部分であり,全生物の共通祖先と呼ばれる約35億~38億年前の1つの細胞に至るまで,系統樹のおおよその形は明らかになっているということで意見が一致していた。
しかし最近,生命の歴史の始まりのころは,遺伝子は,親細胞から子細胞へと受け継がれるだけでなく,種の壁を超えてひんぱんにやりとりされていたらしいことがわかってきた。現在の系統樹の姿が単純化されすぎているとする研究者もいる。
著者
W. Ford Doolittle
ハーバード大学とスタンフォード大学で学位を取得した。現在はダルハウジー大学(カナダ・ノバスコシア州)の生物化学と分子生物学の教授で,カナダ高等研究所の進化生物学プログラムのリーダーでもある。
原題名
Uprooting the Tree of Life(SCIENTIFIC AMERICAN February 2000)