
自然界にある元素よりも原子番号の大きな超重元素は,つくりだせたとしても寿命が極めて短い。だが,そのなかに寿命が比較的長い元素もあるはずといわれてきた。理論に基づくその予想を確認する原子番号114の元素がようやく,見つかった。
天然の元素で原子番号が最も大きいのはウランで,原子番号は92だ。これより大きいのは超ウラン元素と呼ばれ,人工的にしかつくれないが,つくった後に安定しているのはネプツニウム(原子番号93)とプルトニウム(同94)だけだ。残りはつくった後に1秒もしないうちに放射線を出して崩壊してしまう。
ただ,1960年代後半に,原子番号が114の元素は安定性が高いと理論的に予測され,その元素づくりがいろいろ試みられてきた。ロシアなどの研究グループは40日間,粒子加速器を動かして原子番号114の元素をつくることに成功,その寿命が30秒以上あることを確認した。これにより,原子核の安定性に絡んだ理論を裏付けた。
著者
Yuri Ts. Oganessian / VladimirK. Utyonkov / Kenton J. Moody
オガネシアンは物理学者で、ロシアのモスクワ近郊のデュブナにある原子核共同研究所(JINR)のフレロフ核反応研究室の科学部長。彼は1956年にモスクワ物理・工学大学を卒業後、原子核物理と核化学の研究に携わってきた。ウチョンコフは、1978年にモスクワ物理・工学大学を卒業後、フレロフ研究室に研究員として加わった。1997年からはJINRの研究グループの副部長として重元素の創生と性質を研究してきた。ムーディは1983年に、カリフォルニア大学バークレー校で核化学のPh.Dを取得、1985年からローレンス・リバモア国立研究所の分析核化学部門で研究している。3人は1989年以来、超重元素の創生で協力してきた。
原題名
Voyage to Superheavy Island(SCIENTIFIC AMERICAN January 2000)