
地球の温暖化防止では,石油などの化石燃料を燃やすと出てくる二酸化炭素(CO2)の排出抑制が議論されてきた。しかし,化石燃料の使用制限は難しいので,むしろ排出されるCO2を地中や海中に封じ込めることを目指す動きが一段と活発化している。
現在のCO2の大気濃度は産業革命前に比べ30%増の370ppmあり,毎年じわじわと増え続けている。CO2が大気中にたまることによって引き起こされる地球温暖化の防止策として,先進国は排出量の削減で合意しているが,発展途上国の経済成長に伴う排出増を考えると,新たな対応策が必要だ。
そこで浮上しているのが,地中や海中へのCO2封じ込めで,実際にノルウェー沖合にある天然ガス生産施設では天然ガス中に含まれるCO2を海底下の地層に戻して,閉じこめる試みを進めている。こうした試みは,米国やオーストラリア,日本などでも始まろうとしており,その安全性や環境への影響,コストなどを見極めようとしている。地中や海中へのCO2封じ込めには,様々なアイデアがあり,その実現性を探る動きは今後,活発になるだろう。
著者
Howard Herzog / Baldur Eliasson / OlavKaarstad
3人は1992年3月にアムステルダムで開かれた第1回CO2除去国際会議で,出会った。ハーゾックはマサチューセッツ工科大学(MIT)エネルギ-研究所の主席研究員であり,1997年に米国エネルギー省がまとめた「炭素封じ込めに関する白書」の筆頭執筆者だ。エリアソンはスイスのABB社のエネルギー地球環境変化対策プログラムの責任者で,国際エネルギー機関(IEA)の温暖化ガス研究プログラムのスイス代表。同研究プログラム評議会副議長でもある。カルスタドはノルウェーの石油・天然ガス会社のスタトイル社で,エネルギー・環境分野の主席研究顧問を務めており,現在,北海スライプナー鉱区でのCO2封じ込め事業に関わっている。
原題名
Capturing Greenhouse Gases(SCIENTIFIC AMERICAN February 2000)