日経サイエンス  2000年5月号

経済成長を持続させる地球温暖化対策は何か

D.W. キース(カーネギー・メロン大学) E. A. パーソン(ハーバード大学)

 地球温暖化防止のため,当面,大気中のCO2濃度を産業革命前の2倍の状態で安定させることにすると,2050年ではCO2排出量を現在の見通しより約50%減にする必要がある。これほどの削減となると,世界のエネルギーシステムを再構築する必要がある。
 ただ,現状で利用できる非化石エネルギーは高価で,風力など新エネルギー(再生可能エネルギー)は単位面積当たり獲得できるエネルギー量が少ない。だから,大規模な新エネルギー源を確保しようとすると,最も貴重な自然資源である土地を何らかの形で損なうことにもなる。新エネルギーのコストを下げる技術進歩があるにしても,エネルギー密度を高められない。
 このため,温暖化対策として現実的なのは,火力発電所などから排出されるCO2を封じ込めるなど炭素管理技術と考えられる。社会が炭素管理技術を広く取り入れれば,化石燃料に依存している産業や国々はエネルギー市場や炭素管理に絡む市場で利益の上がるビジネスを続けられ,大幅なCO2排出削減の政策も受け入れやすくなる。

著者

David W. Keith / Edward A. Parson

キースはカーネギー・メロン大学のエネルギー・公共政策学部の助教授。パーソンは,ハーバード大学準教授。2人は,環境政策で共同研究することが多い。

原題名

A Breakthrough in Climate Change Policy?(SCIENTIFIC AMERICAN February 2000)