2011年11月4日
日経サイエンス復刻版希望アンケート
創刊40周年記念ノーベル賞受賞者論文復刻版希望アンケートにたくさんのご応募、誠にありがとうございました。おかげさまで108人の方から、ちょうど500件の復刻希望を頂きました。結果を発表いたします。
2011年12月20日より,記事ダウンロード販売を開始いたしました。
1本200円の謝恩特価です。
第1位
得票数 53票
1974年9月号掲載
「素粒子の相互作用に関する統一理論」 S. ワインバーグ (1979年物理学賞受賞)
素粒子間には4つの相互作用があるが,“弱い”相互作用と電磁相互作用は同じものらしい。
第2位
得票数 45票
1985年7月号掲載 G.ブラウンとの共作
「超新星爆発のメカニズム」 H. A. ベーテ (1967年物理学賞受賞)
星の内部の重力崩壊によって生じた衝撃波は,星の大きさにより異なる仕組みで伝わっている。
第3位
得票数 38票
1975年12月号掲載
「最新のクォーク理論」 S. L. グラショウ (1979年物理学賞受賞)
多くの理論を統合した最新の素粒子論では,色と香りをもつ12種類のクォークが基本となる。
第4位
得票数 36票
1977年4月号掲載
「半導体技術の展望」 江崎 玲於奈 (1973年物理学賞受賞)
半導体技術の発展を促したのは,理論の実用のデバイスとの間の緊密な結びつきである。
第5位
得票数 34票
1996年6月号掲載
「真核細胞はどのように生まれたか」 G. ド. デュープ (1974年生理学・医学賞受賞)
核膜を持つ真核細胞の誕生は,進化史上でもっとも注目される事件の一つだ。
複数の仮説を組み合わせると,原核細胞から真核細胞へのストーリーが描ける。
ご覧の通りの接戦でしたが、1位のワインバーグ「素粒子の相互作用に関する統一理論」は頭ひとつ抜けていました。ゲージ理論が統一理論の最有力候補に躍り出た70年代前半に書かれたもので、科学者らしい冷静な筆致ながら、当時の強い期待感が感じられます。
2位の「超新星爆発のメカニズム」を執筆した ベーテは、1939年に恒星のエネルギーが核反応によって作られることを示しました。98歳で亡くなる最晩年まで息長く一線で研究を続け、この記事も1985年に書かれています。
3位の「最新のクォーク理論」は1位のワインバーグとともにノーベル賞を受賞したグラショウが、量子色力学が確立した直後に書いたもの。
4位はがらりと目先が変わって、江崎玲於奈が書いた70年代後半当時の半導体工学に関する総説です。
5位は唯一、生理学・医学分野の記事が入りました。この1本だけをリクエストされることが多かった記事です。生物系は物理系に比べて票が分散してしまったため、ちょっと残念な結果に。
以上の5件を復刻販売いたします。販売開始は12月20日。1本200円の謝恩特価です。
お手にとって科学が歩んできた歴史を感じて頂けましたら幸いです。
※お詫び※
販売開始を12月15日からとご案内しておりましたが,諸般の事情により数日遅らさせていただきました。
ご投票いただいた皆様をお待たせしてしまいましたこと,深くお詫び申し上げます。
今後とも日経サイエンスを宜しくお願い申し上げます。
【復刊選外論文得票結果】
第6位 得票数 33票「ガンをひき起こす遺伝子」J. M. ビショップ
第7位 得票数 31票「遺伝子を自動的に複製するPCRの法の発見」T. R. チェック
第8位 得票数 28票「超流動体ヘリウム3」D. M. リー
第8位 得票数 28票「プリオンはどこまで解明されたか」S. B. プルシナー
第10位 得票数 27票「C60の科学」R. F. カール/R. E. スモーリー
第11位 得票数 25票「走査型トンネル電子顕微鏡」G.ビーニッヒ/H.ローラー
第12位 得票数 22票「スーパーコイルDNA」F. H. C. クリック
第13位 得票数 21票「遺伝子組み換えでインシュリンを作る」W. ギルバート
第13位 得票数 21票「酵素機能をもつRNA」T. R. チェック
第15位 得票数 20票「免疫系分子群」利根川進
第16位 得票数 18票「レーザーによる中性粒子のトラップ」S. チュー
第17位 得票数 11票「動物体の形成に働く細胞接着分子」G. M. エーデルマン
第18位 得票数 9票「単一クローン性抗体」C. ミルシュタイン
復刊ノミネート論文一覧:参考
1974年9月号掲載
「素粒子の相互作用に関する統一理論」 S. ワインバーグ (1979年受賞)
素粒子間には4つの相互作用があるが,“弱い”相互作用と電磁相互作用は同じものらしい。
1975年12月号掲載
「最新のクォーク理論」S. L. グラショウ (1979年受賞)
多くの理論を統合した最新の素粒子論では,色と香りをもつ12種類のクォークが基本となる。
1977年2月号掲載 N. D. マーミンとの共著
「超流動体ヘリウム3」 D. M. リー (1996年受賞)
絶対零度にごく近い温度でこのヘリウムの同位元素は、微小な穴を摩擦なしで通り抜ける。
1977年4月号掲載
「半導体技術の展望」 江崎 玲於奈 (1973年受賞)
半導体技術の発展を促したのは,理論の実用のデバイスとの間の緊密な結びつきである。
1985年7月号掲載 G.ブラウンとの共作
「超新星爆発のメカニズム」 H. A. ベーテ (1967年受賞)
星の内部の重力崩壊によって生じた衝撃波は,星の大きさにより異なる仕組みで伝わっている。
1985年10月号掲載
「走査型トンネル電子顕微鏡」 G.ビーニッヒ/H.ローラー (1986年受賞)
原子レベルの解像度を持ち,しかも試料にまったく損傷を与えない量子力学的な顕微鏡が開発された。
1992年4月号掲載
「レーザーによる中性粒子のトラップ」 S. チュー (1997年受賞)
気体を絶対零度近くまで冷却する新技術で,1000倍も高精度の原子時計を作る,DNAや分子をつかむ“光ピンセット”を実現するなどの応用が見込まれる。
化学賞
1980年6月号掲載 L. ヴィラ・コマロフとの共著
「遺伝子組み換えでインシュリンを作る」 W. ギルバート (1980年受賞)
遺伝子工学の著しい進歩により,インシュリンやインターフェロンの合成が可能になった。
1987年1月号掲載
「酵素機能をもつRNA」 T. R. チェック (1989年受賞)
ある種のRNAは,自分の一部を切り出して残った部分をつなぐ反応を酵素なしで行うことができる。
1990年6月号掲載
「遺伝子を自動的に複製するPCRの法の発見」 K. B. マリス (1993年受賞)
遺伝子のコピーを簡単に,しかも大量に作り出すPCR法は,カリフォルニアの山岳地帯をドライブしている最中に考えついたという。
1991年12月号掲載
「C60の科学」 R. F. カール/R. E. スモーリー (1996年受賞)
サッカーボール型分子のフラーレンは,大量生成法が発見され,ダイヤモンド,グラファイトに次ぐ第3の炭素物質として確立された。
生理学・医学賞
1980年9月号掲載 W. R. バウワー/J. H. ホワイトとの共著
「スーパーコイルDNA」 F. H. C. クリック (1962年受賞)
二重らせん構造をしているDNA分子が,さらに高次のらせん構造を形成することがある。
1980年12月号掲載
「単一クローン性抗体」 C. ミルシュタイン (1984年受賞)
抗体産生細胞と腫瘍細胞を融合してクローン化し,単一の抗体を多量に得ることができる。
1982年5月号掲載
「ガンをひき起こす遺伝子」 J. M. ビショップ (1989年受賞)
レトロウィルスに特有の現象だと思われていた「逆転写」は,いろいろな生物に存在する。
1984年6月号掲載
「動物体の形成に働く細胞接着分子」 G. M. エーデルマン (1972年受賞)
細胞接着分子は,1個の受精卵から動物の体がつくられていく課程で重要な役割を演じる。
1985年12月号掲載
「免疫系分子群」 利根川進 (1987年受賞)
抗体やT細胞受容体の種類数が膨大なのは,遺伝子断片の組み合わさって作られるためだ。
1995年3月号,1997年12月号再収録
「プリオンはどこまで解明されたか」 S. B. プルシナー (1997年受賞)
核酸を持たない“病原体”プリオンは,タンパク質の立体構造を変化させることにとって,正常型から病気をもたらす変異型へと姿を変えるらしい。
1996年6月号掲載
「真核細胞はどのように生まれたか」 G. ド. デュープ (1974年受賞)
核膜を持つ真核細胞の誕生は,進化史上でもっとも注目される事件の一つだ。複数の仮説を組み合わせると,原核細胞から真核細胞へのストーリーが描ける。