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BEYOND DISCOVERY
日経サイエンス
ビタミンDの謎を解く
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1. イントロダクション
2. 誤った同定
3. 病気の原因を追う
4. 「タンパク質や塩分とも違う物質」
5. くる病に迫る
6. 動物,植物,あるいはミネラル?
7. ビタミンDとカルシウム調整との関係
8. 働きはカルシウム調節だけではない
9. クレジット
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BEYOND DISCOVERY
THE PATH FROM RESEARCH TO HUMAN BENEFIT
 ビタミンDの謎を解く
■ イントロダクション
 健康を維持するのに果物や野菜,穀物,タンパク質,ある程度の脂質など,バランスのとれた食事が必要なことはよく知られている。ファストフードを食べたり,食事を摂り損なったりすることの多い時代になって,必須のビタミンやミネラルの最低摂取量を満たそうと栄養補助食品を摂っている人も多い。こうしたビタミンやミネラルは,病気の予防や健康維持のために,ごく微量ではあるが不可欠な栄養素だ。
 
 これらいわゆる微量栄養素は100年あまり前,壊血病や脚気,くる病などの原因を研究する中で発見された。この記事では,その1つであるビタミンDの発見と解明に至る紆余曲折に焦点をあてている。ビタミンDをもともと含んでいる食品は多くないが,皮膚の中で前駆体物質が太陽光中の紫外線と反応してビタミンDになる場合が多い。ビタミンDの活性代謝産物である1,25-ジヒドロキシビタミンD3が血液中に適度にないと,体は食品からカルシウム成分を吸収できなくなる。imageカルシウムは脳細胞間の電気化学的な信号伝達など生命活動に不可欠だが,これが利用できなくなってしまうのだ。食品中のカルシウムやリンが腸で適切に吸収されないと,丈夫な骨ができなくなる。子どもではビタミンDの欠乏はくる病を引き起し,脚の湾曲や肋骨の変形が残る。成人では骨粗鬆症につながる。
 
 団塊の世代が50歳代を迎えた現在,高齢化に伴う骨の障害や骨折への懸念が高まり,ビタミンDに対する関心が再び強まっている。ビタミンDは成長期の子どもだけでなく,生涯を通じて健康維持と病気予防に欠かせないことが明らかになってきた。最近の研究によると,中高年では男女ともビタミンD不足が「ひそかな流行病」になっているという。ビタミンDとカルシウムは骨の形成に影響を与えるだけでなく,結腸ガンや多発性硬化症,月経前症候群,乾癬(かんせん),高血圧,うつ病など,まったく別の病気や障害にも関係しているらしいことがわかってきた。
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原文はNASのBeyond Discoveryでご覧になれます。
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