■遺伝子診断
1. 遺伝子診断
2. 遺伝子の本質を解明する
3. 遺伝的な誤りが原因となる病気
4. 最先端を行く
5. すべてを物語る遺伝配列をふるいにかける
6. 病気の遺伝子探しに狙いを定める
7. 病気の遺伝子の配列を明らかにする
8. 革新的な複製技術の誕生
9. 結腸ガンの遺伝子を追う
10. 変質する医療
11. 遺伝子診断が投げ掛ける社会的ジレンマ
12. クレジット
革新的な複製技術の誕生
 病気を引き起こす遺伝子欠陥を調べる検査が病院に普及したのは,特定のDNA分子を複製する簡便で安価な方法が開発されてからだ。DNAの配列解読では,血液や組織から取り出した少量のDNAを大量に増やす必要があった。

 ここでも,基礎研究をしている科学者が問題を解決した。カリフォルニア州にあるバイオテクノロジーの小企業,シータス社の若手科学者マリス(Kary Mullis)が新たなアイデアを生み出した。目的のDNAを複製する際に微生物に頼るのでなく,微生物自体がDNAを複製する際に使っているDNAポリメラーゼという酵素が利用できるのではないかと考えた。彼が開発したポリメラーゼ連鎖反応(略称でPCRと呼ばれる)によって,どんなDNA配列でも試験管で増やせるようになった。

 ただ,1つ問題があった。この方法は1本鎖DNAだけに働くので,2本鎖DNAをほどくのに熱をかけると普通のポリメラーゼは壊れてしまう。幸いなことに,その数年前に温泉の沸騰水の近くで増殖する微生物が見つかっていた。この微生物から分離したポリメラーゼはPCR法で必要な高温でも働く。1980年代末には,PCR法は多くの実用的な開発に結びついた。遺伝子診断もその1つだ。
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原文はNASのBeyond Discoveryでご覧になれます。
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