■遺伝子診断
1. 遺伝子診断
2. 遺伝子の本質を解明する
3. 遺伝的な誤りが原因となる病気
4. 最先端を行く
5. すべてを物語る遺伝配列をふるいにかける
6. 病気の遺伝子探しに狙いを定める
7. 病気の遺伝子の配列を明らかにする
8. 革新的な複製技術の誕生
9. 結腸ガンの遺伝子を追う
10. 変質する医療
11. 遺伝子診断が投げ掛ける社会的ジレンマ
12. クレジット
病気の遺伝子の配列を明らかにする
 遺伝子診断の精度を上げるには,病気を引き起こす遺伝子の実際のDNA配列(A,C,G,Tの並び方)を明確にする必要があった。ハーバード大学の研究者がDNA配列を高速に読み取る方法を1977年に開発し,この試みが前進した。その1人,ギルバート(Walter Gilbert)は,微生物の中で特定の遺伝子が機能しなくなる(遺伝子で指示されたタンパク質がつくれなくなる)仕組みを解明しようとしていた。彼は微生物のDNAの特定の部位の配列を調べる必要があると考え,同僚のマクサム(Allan Maxam)と共同で,DNAを放射性同位元素の目印のついた特定の塩基のところで切断する化学物質し,サザン・ブロッティング法で長いDNAの正確な配列を素早く調べる革新的な方法を開発した。これと別に,同じようにDNA配列の読み取りがうまくできる方法を,ほぼ同時期に英国ケンブリッジのサンガー(Fred Sanger)が開発した。

 1980年代初め,マクサムとギルバート,サンガーの開発したDNA配列解読法は改良され,処理が自動化されて効率が上がった。病気につながる遺伝子の探索は比較的速くできるようになった。「ポジショナル・クローニング」という方法だ。まず,染色体着色やインシトゥ・ハイブリダイゼーションなどを利用して,病気の遺伝子がありそうな染色体に狙いをつける。病気の遺伝子がどの染色体にあるかがわかれば,RFLPやほかの遺伝子マーカーで病気に密接に関係している位置を探す。そして,目印のついた領域のDNA塩基配列を決定する。調べようとしている病気の人にだけ見つかるDNA配列が絞られれば,その研究は完了したことになる。ポジショナル・クローニングは,嚢(のう)胞性線維症やデュシェンヌ筋ジストロフィー,ある種のアルツハイマー病,早発性乳ガンなど50以上の病気の遺伝子の発見に用いられた。
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原文はNASのBeyond Discoveryでご覧になれます。
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