■遺伝子診断
1. 遺伝子診断
2. 遺伝子の本質を解明する
3. 遺伝的な誤りが原因となる病気
4. 最先端を行く
5. すべてを物語る遺伝配列をふるいにかける
6. 病気の遺伝子探しに狙いを定める
. 病気の遺伝子の配列を明らかにする
8. 革新的な複製技術の誕生
9. 結腸ガンの遺伝子を追う
10. 変質する医療
11. 遺伝子診断が投げ掛ける社会的ジレンマ
12. クレジット
遺伝的な誤りが原因となる病気
 DNA中のACGTの正確な並び方(配列)は,タンパク質を作り出すためのレシピそのものだ。この配列に余分な塩基が加わったり,塩基の並び方に誤りがあったり,あるいはいくつかの塩基が抜け落ちてしまうと,細胞は間違ったタンパク質を作ったり,正しいタンパク質を過剰に作ったり,あるいはほとんど作らなくなったりする。こうした誤りは病気を引き起こすことが多い。たった1カ所の塩基の違いが,鎌状赤血球貧血症などの病気につながる例もある。

 遺伝子の誤りで起きる遺伝病は,ハンチントン病や嚢(のう)胞性線維症,デュシェンヌ筋ジストロフィーなど,推定で3000~4000ある。さらに,遺伝子が変異するとある種のガンになったり,心臓病や糖尿病になることもわかっている。遺伝的欠陥があると,こうした一般的な病気や複雑な障害になるリスクが高まる。こうした病気は,遺伝子の配列の誤りと食生活や生活習慣など環境因子が相互作用して起きる。半数の人々は遺伝的な要因によって病気になりうると見る専門家もいる。

 遺伝暗号の解明は,病気の遺伝子の特定にすぐには結びつかなかった。DNAに詰め込まれている遺伝情報は膨大で,解読が壁にぶつかってしまったのだ。核のない精子や卵子,それに一部の血液細胞を除くと,人間の細胞には長さ1.8mのDNA分子がきつくねじれ,46本の染色体として細胞核の中に入っている。染色体は棒状で,細胞核はタンパク質がDNAの周りを覆った構造だ。DNAは30億の塩基対でできており,これを印刷するとニューヨーク市マンハッタンの電話帳1000冊以上にもなる。研究者たちはDNA分子を扱いやすい断片に分けようとしたが,無数のバラバラな断片ができ,もとのDNA配列がわからなくなってしまった。

   
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原文はNASのBeyond Discoveryでご覧になれます。
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