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BEYOND DISCOVERY
日経サイエンス
レーザーと眼科手術
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1. イントロダクション
2. はっきり見えます
3. 網膜――視覚の中枢
4. 一方,物理学の世界では…
5. 光のパワー
6. 分子に光を発生させる
7. まさにうってつけだったレーザー
8. アルゴンレーザーの登場
9. 目的に合ったレーザーを求めて
10. クレジット
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BEYOND DISCOVERY
THE PATH FROM RESEARCH TO HUMAN BENEFIT
素晴らしい視覚を守る――レーザーと眼科手術
■ イントロダクション
 糖尿病性網膜症は糖尿病に伴う危険な合併症で,成人が失明する主因となっている。知らぬ間にじわじわと進むこの疾患によって,米国では毎年1万2000人から2万4000人の糖尿病患者が視力を失っていると推定される。定期的に眼科検診を受ければ早期発見できるのに,これを受診しない人が多いためだ。しかし早い段階で発見すれば,焦点を絞った強いレーザービームを利用して,糖尿病による網膜血管の損傷を抑えるだけでなく,場合によっては好転させることもできる。レーザーによる治療を適切に施せば,糖尿病性網膜症患者の90%までは失明を避けられる。
 
 高精度のレーザーを利用すると,網膜にできた小さな破れを修復でき,網膜剥離へと進行するのを未然に防ぐこともできる。また白内障の手術にも使われるが,意外なことに,この場合は水晶体の混濁部そのものを除去するのではない。近年ではレーザー屈折矯正角膜切除術(PRK)と呼ばれる処置にも使われるようになった。眼を保護している透明な角膜の表面をレーザーによって“彫刻する”ように削り,近視を矯正する方法だ。これらレーザーを使った手術はいずれも数分ですみ,痛みや不快感もあまりない。
 
image 以下の記事は,2つの基礎研究の流れが,いかにして眼科医療に革命をもたらしたかを示す物語だ。1つの流れは人体解剖学と医学,もう1つは物理学における基礎研究だった。1960年代初頭に両者が結びついたことで,後に何十万人もの人々が重大な視覚障害や失明の危機から救われた。科学の世界ではよくあることだが,画期的な発見をなしとげた人たちを研究に駆り立てたのは,多くの場合,単に自然を理解したいという純粋な願望だった。そうした科学者たちの努力によって,思いがけない実用的な成果を数多く生み出す道が開かれたのだ。
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原文はNASのBeyond Discoveryでご覧になれます。
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