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BEYOND DISCOVERY
日経サイエンス
■地殻変動を探る
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1. 地殻変動を探る
2. 地震学から大陸移動説へ
3. 地磁気が手がかりに
4. 海からの洞察
5. 地磁気の反転
6. プレート運動の発見
7. 社会に貢献する地球科学
8. 新しい世界への窓
9. クレジット
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BEYOND DISCOVERY
THE PATH FROM RESEARCH TO HUMAN BENEFIT
■社会に貢献する地球科学
 今日までずっと,安全な生活を送れるよう腐心してきた人類にとって,プレートテクトニクスの解明は大きな福音になった。実際,1960年代のプレートテクトニクス理論の登場以来,カリフォルニア州のサン・アンドレアス断層は互いにゆっくりとすれ違う2枚のプレートの境界であることが科学者の常識になった。プレートのうち最大の太平洋プレートは北米から北西方向に動き,これと接する大陸の縁を引きずり込んでいる。カリフォルニア州が地震多発地帯であることを住民は昔から知っていたが,そこが主要なプレート境界であることがわかり,地震が避けられないことがはっきりした。「地震が起きるかどうか」ではなく「いつ起きるのか」が問題なのだ。
 
 地震の発生日時の予知はまだ不可能だが,サン・アンドレアス断層で起きる地震の傾向やその原因となるプレート運動の速度が解き明かされ,カリフォルニア州政府は防災対策に動き出した。1975年,州政府は地震安全委員会を設け,防災計画の立案や見直しなどに取り組んでいる。
 
 連邦政府も1977年に制定された地震災害軽減法に基づき国家震災軽減計画(NEHRP)を策定し,米国全土での震災軽減を目指している。同法は1964年のアラスカ大地震を教訓に,専門家らの呼びかけで制定された。NEHRP計画で進められている研究は,一般市民への啓蒙活動のほか建築構造物の設計・施工にかかわる耐震基準づくりにも影響を与えている。その代表が免震技術の導入を柱とした「統一設計基準」の見直しだ。免震技術とは建物の基礎の上に多数のベアリングを挟んで上部の構造物を支える方法だ。基礎の上に建物が固定されている普通の場合,地震で地面がある方向に動くと,建物の動きは基礎の揺れに追いつかず,見かけ上は揺れと逆の方向に動く。実際の地震は複雑な揺れ方をするので,建物は前後左右,あらゆる方向に揺さぶられる。しかしベアリングパッドによって基礎と建物とを隔てておけば,パッドが揺れを吸収して建物は基本的に安定しているはずだ。地震多発地帯であるカリフォルニア州や日本は耐震基準づくりでも世界的に先行しており,特に公立学校や橋,病院,ダムで先進的な技術が取り入れられている。
 
 プレートテクトニクス理論は公共の安全確保に役立っただけでなく,鉱業や石油探査などの産業活動にも恩恵をもたらした。1970年代以降,古地理学(いわゆる化石地理学)の地図の精度が高まり,石油や天然ガスなどの探査で活躍している。化石燃料がどこで形成され,どこに蓄積しているかを探れるようになってきた。
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原文はNASのBeyond Discoveryでご覧になれます。
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