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THE PATH FROM RESEARCH TO HUMAN BENEFIT
■地磁気の反転
 地質年代の違う岩石では磁化が逆向きになる例があることは,1920年代にわかっていた。現在と同様に北を指す“正常”な場合もあれば,別の時代の岩石では反転していることもある。1963年,米地質調査所(USGS)のコックス(Allan Cox)とドール(Richard Doell),ディアリンプル(Brent Dalrymple),オーストラリア国立大学のマクダガル(Ian McDougall)は,地磁気反転の年代史を定量的に測定する手法を開発した。陸上の溶岩について磁化の向きを調べ,放射性物質の年代測定によってその溶岩ができた年代を特定する方法だ。骨の折れる調査をへて,1966年,地磁気反転の歴史を350万年前までさかのぼって解明した。

image01 一方,海底では奇妙なパターンが見つかっていた。第二次大戦中,対潜水艦の探知能力を高めるため,音響探査だけでなく磁気探査の技術も急進展した。1961年,米スクリプス海洋研究所のラフ(Arthur Raff)とメーソン(Ronald Mason)はこれを使って,ワシントン州沿岸の海底で縞状の磁気異常を発見した。その1年後,ケンブリッジ大学のマシューズ(Drummond Matthews)はインド洋の海嶺周辺の磁気データを集め,やはり特異で奇妙な磁化の帯を発見した。海嶺の両側に磁化の強い部分と弱い部分が帯状に交互に並んでいたのだ。マシューズは英国に帰って,ケンブリッジ大学の大学院生で海洋地球物理学を研究しているヴァイン(Fred Vine)とこの発見について話し合った。2人は溶けた岩がマントルからしみ出して当時の地磁気に従って磁化し,その記録が海底に残されたという仮説を立てた。ヘスが示唆したように海底が拡大しているなら,地磁気の反転とともに岩石の磁化方向も逆転し,こうしてできた縞状のパターンが海嶺の両側に押し出されていくはずだ。

 ヴァインとマシューズの仮説は1963年秋に公表されたが,これを支持する地球科学者はほとんどいなかった。地磁気反転の年代史が完璧にはわかっていなかったため,海底の磁気異常のデータを仮説に当てはめてもあまりうまく説明がつかなかったのが一因だ。だが,2年後の1965年,サバティカルでケンブリッジ大学に滞在していたヘスと,トロント大学のウィルソン(J. Tuzo Wilsion)がヴァインのチームに加わり,ともに中央海嶺の研究を続けた。

 ウィルソンはバンクーバー島とカリフォルニア州南部の沿岸の海底についてラフとメーソンが作成した海底地図を精査し,海嶺からわき出す物質が海底を押し広げていると結論づけた。1965年10月にヴァインと共著で発表した論文では,磁化反転の縞模様が海嶺から遠ざかっていることを根拠に,北東太平洋の海底が拡大していると提唱した。海底の磁化反転パターンを陸上の岩石から確かめられていた地磁気反転の時期と比べるとややズレがあったが,ドエルとディアリンプルが発見した地上での磁化反転に関する新しいデータによって矛盾点が減り,海と陸のデータは驚くほどよく一致するようになった。

 1965~66年に行われたいくつかの観測結果によって,海底の拡大ははっきりと裏づけられた。その代表がラモント研究所のオプダイク(Neil Opdyke)が分析した海底堆積物の試料だ。南太平洋の海底を深さ方向に5~12m掘削して得た棒状の試料で,これを分析して得られた磁化反転のパターンや年代は,以前に陸上の溶岩や海底の岩石から得られていたデータとよく一致した。
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