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BEYOND DISCOVERY
日経サイエンス
■地殻変動を探る
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6. プレート運動の発見
. 社会に貢献する地球科学
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BEYOND DISCOVERY
THE PATH FROM RESEARCH TO HUMAN BENEFIT
■ 地殻変動を探る
――海底拡大とプレートテクトニクス
image01 1906年4月18日水曜日の早朝,米国西海岸のオレゴン州クース・ベイからカリフォルニア州ロサンゼルスまで,距離にしておよそ1000km一帯の住民は地面の揺れを感じて目を覚ました。特にサンフランシスコでは「揺れ」と表現するにはあまりに強い震動だった。市の商工業地域を巡回していた警官は低い地鳴りを聞き,目の前の道路が大きくうねるのが見えた。「海から押し寄せた大波が,そのまま陸地をうねらせているかのようだった」と,この警官は振り返っている。

 地震の規模を示すマグニチュード(M;欧米ではリヒタースケールという)が考案されたのは1935年だが,現在,この「1906年サンフランシスコ大地震」はM7.8に相当すると考えられている。大地震で多くの建物が倒壊・損傷し,街のいたるところで発生した火事が被害をいっそう大きくした。この地震による死者は約700人,家を失った人は25万人に達し,2万8000棟の建物が全半壊した。経済的損失は当時の金額で5億ドル,現在の価値に換算すると約90億ドルと推定される。

 サンフランシスコ大地震が歴史に残る地震とされる理由は,被害の大きさだけでなく,当時の科学の常識を超える異様な地震だったことにもよる。被災地の近くには「サン・アンドレアス断層」があり,断層の片側が他方に乗り上げたり潜り込んだりすると,局地的な地震が起きることもよくわかっていた。しかし地質学者たちが解析しても,なぜこれほど大規模な地震が起きたのか,まったく説明がつかなかった。実際,この断層は480km近くにわたってずれた。南はサンフランシスコ市南のサン・ベニート郡サン・ホアン・バチスタから,北はフンボルト郡のアッパー・マトル川に至る異常な長さで,海岸線から少し東側に位置している。当時の科学知識ではこれほど大規模な地殻変動を説明できなかった。それを可能にしたのが,およそ60年後に登場したプレートテクトニクス理論だ。

 プレートテクトニクス理論は現代科学の金字塔ともいえる理論だ。地球の表面が何枚かの巨大な岩板(プレート)に覆われ,大陸はその上に乗って地球上をゆっくり漂流していると考える。プレートどうしがぶつかる場所では,火山の噴火や大地震が発生し,それに伴う津波など大きな災害も起きる。地球科学者の間でこの理論が広く認められたのは1960年代になってからだった。以下の記事では陸や海で地殻変動がなぜ起きるのかという素朴な疑問から出発し,その解明を目指した研究者たちの軌跡を振り返る。こうした科学者たちの成果のおかげで,私たちの足下が大海の波のようにうねった時への備えが可能になったのだ。
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