日経サイエンス1995年:掲載論文一覧

「日経サイエンス」掲載論文一覧
 ※各項目は,掲載ページ,論文名,著者名,内容の要約の順に並んでいます。

 

 

1995年1月号  

P22「島大陸マダガスカルの奇妙な植物たち」

湯浅浩史
アフリカ大陸の南東400kmに位置する島国マダガスカル。ここでは動植物の3/4が固有種である。
マダガスカルの植物は,乾燥や強い日差しの下,幹に水を蓄えたり,枝が極端に短くなったり,
樹皮の下で光合成を行うなど,さまざまに適応し,奇妙な姿を見せる。

 

P38「自己増殖するインフレーション宇宙」

A.リンデ

宇宙は子宇宙,孫宇宙,曾孫宇宙……と自己増殖するフラクタルのように次々と新しい宇宙を
生み出す。各々の宇宙では物理法則が異なっているかもしれない。

 

P50「花を形成する遺伝子」

E.M.マイエローウイッツ
正しい位置に,花の器官が正しく分化するように働く遺伝子がわかってきた。この知見を使えば,
花を“設計”することも可能になるだろう。

 

P88「エッシャーが語りかける世界」

D.シャットシュナイダー
エッシャー作品の本質は“だまし絵”ではない。科学や数学の中に隠された抽象概念である
シンメトリー(広い意味での対称性)を具体的に提示することだった。

 

P96「コンピューターネットワークの安全性」

J.I.シラー
インターネットのような情報環境では,「誰でもアクセスできながら特定の人のみが情報を提供・
獲得するためのセキュリティ」を実現しなければならない。

 

P104「ゼノンのパラドックスを解く」

W.I.マクローリン
「英雄アキレスは先にスタートした亀に追いつけない」という論述は,紀元前から哲学者や数学者を
悩ましてきたが,最近,この問題が解決された。

 

P112「流行性脳脊髄膜炎を克服する」

P.S.ムーア/C.V.ブルーム
ありふれた細菌である髄膜炎は,しばしば途上国で流行性脳脊髄膜炎の大流行を引き起こす。
この流行は予防する手だてが見つかってきた。

 

P122「トレンド “黄金狂時代”の分子生物学」

T.ベアズリー
バイオテクノロジー産業の隆盛によって,古きよき学問としての生物学は少数派になろうとしている。
分子生物学の商業化に問題はないのだろうか。

 

 

1995年2月号

P14「サイエンス・ビュー 100年目のX線」

編集部・松尾義之
ちょうど100年前の1895年秋,レントゲンによって発見されたX線はまさに20世紀の科学を輝かせる
光となった。とくにX線の波長が原子や分子のスケールと対応していたため,「構造」を教えてくれる
手段を提供したのである。現在,SPring8に代表されるような第3世代の放射光施設が建設中であり,
21世紀もまた,X線は確実に自然界の謎に光を当て続けていくだろう。

 

P30「ゴビ砂漠の恐竜化石」

M.J.ノヴァツェク/M.ノレル/M.C.マッケナ/J.クラーク
アンドリュース隊の探検から70年を経た今日も,次々と新しい化石を産出し続けるゴビ砂漠は,
古生物学者にとってのパラダイスである。

 

P42「地球のリモートセンシング画像」

D.L.エバンズ/E.R.ストファン/T.D.ジョーンズ/L.M.ゴッドウィン
スペースシャトル「エンデバー」がとらえた地球のレーダー画像は,災害調査,環境保全,土地利用,
遺跡発掘などにきわめて有効な情報を提供している。

 

P50「新しい遺伝子医薬」

J.S.コーエン/M.E.ホーガン
短鎖のDNAやRNAを用いて,病気の原因となる遺伝子の転写および翻訳を阻害するアンチセンス
医薬とトリプレックス医薬の開発が進んでいる。

 

P58「物質と光の二重性」

B.G.エンクラート/M.O.スカリー/H.ヴァルター
電子や光子など微視的な粒子の粒子性と波動性を同時に観測できないのは,不確定性関係が
要請するからではない。それ自身が根本的な原理である。

 

P74「最大の単細胞性植物イワヅタ」

W.P.ジャコブス
世界で70種以上が知られる海藻の仲間のイワヅタ類は,単細胞性でありながら,葉,茎,根と,
形態分化をした器官を備えている。

 

P102「トレンド 電子ネットワークと学術論文」

G.スティックス
科学者は値段が高くて印刷が遅い学術誌より,世界中から論文にアクセスできるインターネットを
支持し始め,図書館や出版社も変革を迫られている。

 

 

1995年3月号

P22「サイエンス・ビュー 細胞内の物質輸送」

編集部ほか
細胞の中ではさまざまなタンパク質が並行して合成されている。その中にはホルモンのような
分泌タンパク質もあれば,小胞体やゴルジ体などで働くタンパク質もある。どのようにして選別されて
正しい場所に運ばれているのだろうか。

 

P24「小胞体からゴルジ体へ」

中野明彦
分泌経路の入り口にあたるこの部分は輸送を担う側のタンパク質について多くの知見が得られている。

 

P33「ゴルジ体内での選別と輸送」

多賀谷光男
ゴルジ体はタンパク質選別の中心的な場である。ここでの輸送も小胞が担っている。

 

P41「ゴルジ体以降の選別」

田中嘉孝/姫野 勝
輸送されるタンパク質の側のシグナルとダイナミックな小胞のリサイクルを紹介する。

 

P62「はくちょう座新星V1974の誕生と死」

S.スターフィールド/S.N.ショアー
この天体は“誕生”と“死”が初めて観測された新星であり,予想より約10倍も多い物質を噴き出す
など,新星進化の研究に新たな問題を提起している。

 

P72「プリオンはどこまで解明されたか」

S.B.プルシナー
核酸をもたない“病原体”プリオンは,タンパク質の立体構造を変化させることによって,
正常型から病気をもたらす変異型へと姿を変えるらしい。

 

P84「パンゲア以前の大陸移動」

I.W.D.ディエル
巨大大陸の一部だった北米は,南極から分離して赤道域をさまよい,南米と二度の衝突と分裂を
繰り返して,5億年後にパンゲア超大陸の一員となった。

 

P94「しなやかな生物分子機械」

D.W.アリー
生体の結合組織のタンパク質をまねた弾力に富むバイオポリマーの誕生は,次世紀の医療や日常生活を
大きく変えようとしている。

 

P102「健康な100歳老人の謎」

T.T.パールズ
95歳以上の老人は,80代や90代前半の人々よりはるかに健康的で活動的のように見える。彼らは
多くの障害お克服できる“選ばれし人々”らしい。

 

P110「デジタル文書をどのように残すか」

J.ローゼンバーグ
電磁的に記録された文書は,記録媒体の劣化,読み取り装置の旧式化,ソフトとハードの面での
激しい世代交代により,消失の危機に直面している。

 

 

1995年4月号

P18「サイエンス・ビュー インターネットと科学」

編集部ほか
科学者の便利な情報環境であるインターネットの世界に,他の分野の多くの人々が参加してきた。
この新しい変化の中で,科学者はどのようにインターネットとかかわっていけばよいのだろうか。

 

P20「変わる研究環境」

石田晴久
WWWやMosaicの登場により,多様性をもつインターネット環境が生まれた。

P26「物理学の世界での利用」

釜江常好/白橋明弘
データベースの利用が増加するなかで,将来のネットワーク像を検討する段階に入った。

 

P33「WIDEプロジェクト」

村井 純
より高機能のネットワーク実現のために,さまざまな基礎研究が推進されている。

 

P56「音響ルミネセンス」

S.J.パターマン
気泡の入った水に音波を当てると,エネルギーが1兆倍も凝集され,ピコ秒の光パルスが発生する。
しかし,この機構はまだ解明されていない。

 

P64「遺伝子の転写を調節する分子装置」

R.テイジャン

細胞の種類によって作られるタンパク質の種類は異なっている。その,遺伝子の発現を調節している
タンパク質複合体の構造と機能がわかってきた。

 

P80「地球に大異変をもたらした白亜紀のスーパープリューム」

R.L.ラーソン
白亜紀中期に,プリュームの活動がきわめて活発になった。海洋地殻の形成速度が速くなった
だけではなく,海水準や気温の変動など,影響は全地球に及んだ。

 

P102「躁うつ病と創造性」

K.R.ジャミソン
著名な作家や芸術家を対象にした複数の研究から,彼らは一般の人々よりも明らかに気分障害に
かかりやすいことがわかった。

 

P110「宇宙からのメーザー」

M.エリッツア
星の一生のうちの若い時期や老齢期は,ガスや星間塵にさえぎられて光では見えないが,宇宙メーザーを
調べることで詳細な構造が明らかになる。

 

P120「合成テストステロンの歴史」

J.M.ホバーマン/C.E.イエサリス
筋肉増強剤として使用が禁止されてきたテストステロンだが,“男性更年期障害”の治療薬としての
用途が開かれようとしている。

 

 

1995年5月号

P18「サイエンス・ビュー 文部省科学研究費のゆくえ」

編集部・松尾義之
大学では10年来「校費」が据え置かれた結果,アクティブな研究室では,いまや「科研費」が
その存亡を左右している。ところが,少なくとも「科研費」の一般分などでは,合理的な審査が
行われているとは言い難く,申請側の科学者もフラストレーションがたまっている。

 

P32「遺伝子変異の蓄積がガンを引き起こす」
W.K.キャベニー/R.L.ホワイト
細胞内に遺伝子の変異が蓄積するにつれて,正常な細胞はガン細胞に,さらには悪性度の高いガンへと
変わっていく。

 

P44「ボノボの性行動と社会」
F.B.M.ドゥ・ヴァール
人類にきわめて近い類人猿のボノボは,雌同士の結びつきが深く,雌優位の社会を作っている。
それは性行動をして争いを回避する平和な社会である。

 

P58「タンパク質分子でできた素子」
R.R.バージ
タンパク質分子でできた素子は,現在のメモリーの300倍もの記憶容量を実現する。並列処理や
ニューロコンピューターにも有望だ。

 

P70「重要医薬品評価の迅速化」
D.A.ケスラー/K.L.ファイデン
米国では,医薬品の承認までの手続きをスピードアップして,治療法のない重い病気にかかった患者に
開発中の有望な薬を供給することができる。

 

P80「古代ギリシャの環境破壊」
C.N.ランネルズ
地質学と考古学を組み合わせた研究から,古代ギリシャ人は,乱開発しては土壌の侵食を招いて土地を
放棄していたことがわかった。

 

P86「レーザーによる化学反応の制御」
P.ブルマー/M.シャピロ
光と物質が干渉する量子効果を利用すると,望みの化合物だけを作れる可能性がある。この手法は
特に製薬工業に利点が大きい。

 

P94「ロボット・マグロ」
M.S. トリアンタフィロ/G.S.トリアンタフィロ
魚は流れの中にある渦を巧みに操りながら素早く,また機敏に泳ぐ。この仕組みをまねた船舶の
モデル研究が進んでいる。

 

 

1995年6月号

P16「コンピューターが明かす名画の謎」
L.シュワルツ
「モナリザ」はダ・ビンチの似顔絵であり,シェイクスピアの肖像画はエリザベス女王を真似ていた。
コンピューターは美術史にも影響を与えつつある。

 

P24「両生類はなぜ減っているのか」
A.R.ブラウンシュタイン/D.B.ウエイク
世界の各地でカエルやサンショウウオの個体群が減っている。生息地の破壊など原因が明らかな種も
あるが,多くは理由のわからないままである。

 

P32「太陽圏の果てを求めて」
J.R.ジョキピ/F.B.マクドナルド
太陽の直接的影響が及ぶ宇宙の範囲を太陽圏と呼ぶ。多くの謎を秘めたその辺境領域に,いよいよ
パイオニアとボイジャーの4つの探査機が迫る。

 

P40「ヒトの抗体を作るトランスジェニックマウス」
西 義介
遺伝子ターゲティングと人工酵母染色体の技術が生んだヒト型抗体を作るマウスによって,
免疫療法は新しい時代を迎えようとしている。

 

P52「ヒントから学ぶコンピューター」
Y.S.アブ=モスタファ
賢いコンピューターを作る手法はまだ見つかっていないが,知能的なヒントを与えると,その
学習能力は格段に進歩することがわかった。

 

P60「動物の行動をつかさどる遺伝子」
R.J.グリーンスパン
ショウジョウバエの求愛行動には,多数の遺伝子がかかわっている。面白いことに,それらの遺伝子は,
求愛行動以外の機能も担っている。

 

P94「無限とは何か」
A.W.ムーア
無限を正しくとらえるのは難しく,ギリシャの時代から数学者を悩ませてきた。有名なカントールの
仕事によってもなお,未解決の問題が残されている。

 

 

P128「メソポタミアの古代都市に見る権力構造」
E.C.ストーン/P.ジマンスキー
紀元前2000年頃に繁栄した都市では,金持ちと庶民が軒を並べて住んでいた。古代の都市は
中央集権的だったという考えは改めなくてはならない。

 

 

1995年7月号

P18「サイエンス・ビュー 心の病気をさぐる」
編集部・菊池邦子
精神分裂病や躁うつ病に代表される精神障害の解明と治療は,どこまで進んでいるのだろうか。
分子遺伝学の研究,精神医学を大きく変えた抗精神病薬,社会復帰のための努力など,さまざまな
方面から心の病気をめぐる現状を伝える。

 

P28「連星中性子星の大爆発」
T.ピラン
2個の中性子星が連星となった連星中性子星は,最終的には合体して大爆発を起こす。これが,
謎の多いガンマ線バーストの発生源かもしれない。

 

P38「フラクタル構造をもつ高分子デンドリマー」
D.A.トマリア
樹木が枝を伸ばす様子にヒントを得たこの人工ポリマーは,大きさや性質を設計通りに合成できる
ため,医学や化学工業の分野で応用が期待されている。

 

P87「検証:ニールス・ボーアをめぐる核の疑惑」
P88「ボーアは原爆の秘密を漏らしたか?」
H.A.ベーテ/K.ゴットフリード/R.Z.ザグデーエフ
第2次大戦終結直後,マンハッタン計画の極秘情報を入手するためにソ連のスパイがボーアに
近づいたが,彼はあいまいな応対ではぐらかした。

 

P97「理論家ボーアの大いなる誤解」
J.バーンスタイン
1943年,ボーアはハイゼンベルクからドイツ軍の原爆製造計画を打ち明けられたと思い込んだ。
しかし,ハイゼンベルクが言及したのは原子炉だった。

 

P112「海洋のソルトフィンガー」
R.W.シュミット
水温と塩分濃度の異なる海水が接すると,低塩分の冷水が下から細かくわき上がることがある。
この小規模な現象が海洋の広い範囲に奇妙な構造を作る。

 

P120「高エネルギー物理学を支える半導体検出器」
A.M.リトケ/A.S.シュワルツ
トップ・クォークの発見に象徴される現在の加速器実験では,集積回路技術で作られた「マイクロ
ストリップ検出器」が高い測定精度を実現している。

 

P128「トレンド “過去”を保存する」
M.ハロウェイ
世界の遺跡が,開発,汚染,略奪,管理の怠慢などによって危機に瀕している。それを救おうとする
プロセスが,考古学を新しい科学に変えつつある。

 

 

1995年8月号

P18「サイエンス・ビュー 超伝導研究のデリバティブ」
編集部ほか
高温超伝導体を使った電力貯蔵や無損失送電,磁気浮上式鉄道といった“本筋”の応用は
進んでいない。しかし,研究が深まるにつれ,まったく新しいプロセス技術や物理現象など
“派生的な成果”があがりつつある。

 

P20「レーザー分子線エピタキシー」
鯉沼秀臣
レーザー分子線エピタキシーは,酸化物エレクトロニクスの世界を開く要素技術である。

 

P26「磁場で起こす結晶構造の変化」 
十倉好紀
磁場によって結晶構造を変化させることができる。磁気ヘッドやスイッチへの応用が期待されている。

 

P33「超伝導接合の特異な伝導現象」
樽谷良信 
超伝導接合では特異な伝導現象が見られる。絶縁体にも超伝導特性をもたせることができる。

 

P40「世界最強の電磁石」
G.ボービンガー/A.パスナー/J.ベック
ダイナマイトの威力に匹敵する73万ガウスの強磁場を,非破壊型の電磁石で達成した。原子核物理への
貢献や大型輸送分野への応用が望める。

 

P50「“囚人のジレンマ”と生物の進化」
M.A.ノワック/R.M.メイ/K.ジグムント
生物界には,助けあいが広く浸透している。どうして,協力しようとする相手をだまして,
自分だけが得をしようとしないのだろうか。

 

P58「囚人のジレンマ・ゲームを作ろう」
A.L.ロイド
アマチュアサイエンティスト 

 

P62「ハローをもつ原子核」
S.M.オースチン/G.F.バーチ
周囲を中性子もしくは陽子の雲が取り囲んでいる「ハロー原子核」は,原子核の結合の謎について,
解決の糸口を与えてくれるかもしれない。

 

P104「トレンド 岐路に立つサンタフェ研究所」
J.ホーガン
人工生命を含む複雑適応系の研究はフィーバーの時代を終えつつある。サンタフェ研究所の
目的である“複雑系の統一理論”にも懐疑的な声が出てきた。

 

P114「10億人を悩ます鉤虫感染」
P.J.ホッツ/D.I.プリチャード
鉤虫は腸に寄生する1cm程度の線虫だが,深刻な貧血症や発育障害の原因になる。鉤虫が作る
タンパク質の解明によってワクチン開発の可能性がひらけた。

 

P124「血縁を認識する動植物」
D.W.フェニッグ/P.W.シャーマン
ある種の動物や植物は,さまざまな手がかりをもとにして,自分の血縁者を識別する。血縁認識は
生物にとって,どのようにして有利になるのだろう。

 

 

1995年9月号

P14「サイエンス・ビュー CP非保存の謎に挑む」
編集部ほか
30年前,K中間子が崩壊する際にCPが保存されていないことが発見された。物質世界と反物質の
世界では物理法則が異なるというわけだが,保存されない理由はわからなかった。高エネルギー
物理学研究所の建設中のBファクトリーは,この30年来の謎の解明に挑戦する。

 

P15「Bファクトリーとは何か」
編集部・福田夏樹
計画中のBファクトリーとは,どのような目的をもっているのだろうか。また,この加速器には
どんな技術が使われるのだろうか。

 

P18「大量の粒子群を制御する加速器 KEKB 」
黒川真一
電子,陽電子それぞれ5000個というバンチの多さと蓄積電流の大きさが,設計を難しいものに
している。

 

P25「超精密な観測を可能にする検出器BELLE  」       
高崎史彦
エネルギー的にはトリスタンより低いが,大量に発生する個々の粒子を正確に測定しなければいけない
難しさがある。

 

P34「ラザフォードからBファクトリーへ」
編集部・福田夏樹
ラザフォードから現在まで,加速器技術と素粒子物理学の歴史を概観する。

 

P40「アカオオカミの起源と保護」
R.K.ウェイン/J.L.ギットルマン
絶滅危惧種のアメリカアカオオカミは,コヨーテとタイリクオオカミの雑種だった。しかし,
だからといって保護しなくていいわけではない。

 

P48「あやしく光る海洋性物」
B.H.ロビソン
海面下数百mから1kmの海洋中層域と呼ばれる場所には,かすかな光を放つ多様な生物が特殊な
生体系をつくっている。

 

P60「偽造に立ち向かう新ドル札」
R.E.シャフリック/S.E.チャーチ
1996年に新しい100ドル札が登場する。カラー複写機による偽造を防止するため,モアレ模様や
特殊インクなどを採用する公算が大きい。

 

P69「日本の偽造対策」
植村 峻
きめ細かな改良により,偽造者の出る幕はない。

 

P74「細胞移植による糖尿病の治療」
P.E.レーシー
移植したランゲルハンス島を免疫系の攻撃から守るためのアイデアが次々と出ている。この治療法は
近い将来,日常的に行われるようになるだろう。

 

P82「車も飛ばす投石機の威力」
P.E.シェベデン/L.アイゲンブロート/V.フォーレイ/W.スウェデル
復元による実験やコンピューターを駆使したシミュレーションの結果,中世最強の武器である
投石機の操作原理が明らかになった。

 

P90「物理学者オッペンハイマー」
J.S.リグデン
原爆製造計画で有名なオッペンハイマーは,分子物理学の基礎理論,中性子やブラックホールの
理論など,現在の物理学につながる確かな足跡を残した。

 

P98「トレンド 導電性プラスチックの将来」
P.ヤン
使い道によっては金属を上回る性質を示す材料が続々と開発されている。ただし,実用化の流れを
決めるのは,やや保守的な市場の動向である。

 

 

1995年10月号

P18「サイエンス・ビュー 分子時計の功罪」
生物が進化しながら種分化してきた様子を,遺伝子やタンパク質からたどることができるようになった。
しかし,従来の化石などの形態をもとにした系統進化のシナリオと合わないシナリオも出てきている。

 

P20「分子時計は信頼できるか?--古生物学者から見た分子時計」
瀬戸口烈司
人類の起源をめぐり,一躍脚光を浴びた分子時計だが,化石の証拠と合わない例も出ている。

 

P24「分子時計の有用性と課題」
熊澤慶伯
非常に有用なツールであるが,さらに確かなものにするための研究の余地は残っている。

 

P29「化石で見たクジラ類の系統分類」
岡崎美彦
歯鯨類とヒゲ鯨類は,歯の有無だけで区別できるわけではない。

 

P34「分子で見たクジラ類の系統分類」

木村敏之
分子系統学で調べると,歯鯨類は単系統群ではなくなってしまう。

 

P40「分子を中心に見たゾウ類の系統進化」
小澤智生/林 誠司
化石記録だけではまだ不明な点があるが,分子の情報がこの問題を解決できるかも知れない。

 

P45「形態からみたゾウ類の系統上の位置」
犬塚則久
長鼻目は海牛目や絶滅した束柱目に近い。しかし,この3目内での詳しい関係はわかっていない。

 

P49「化石から見るゾウ類内の系統分類」
三枝春生
複数の説が出ており,分子情報からのデータが出るのが待たれる。

 

P64「木星で最期を遂げた彗星」
D.H.レビー/E.M.シューメーカー/C.S.シューメーカー
1995年7月木星表面に突入したシューメーカー・レビー第9彗星の発見と観測には多くの幸運が
重なった。研究の成果が出るのはこれからだ。

 

P82「HIVはどのようにして免疫系を破壊するのか」
M.A.ノワック/A.J.マクマイケル
エイズウイルスは人の体内で限りなく変異し続ける。さまざまな変異株に攪乱された免疫系はやがて
戦力を低下させ,エイズが発病する。

 

P94「トルネードの驚異」
R.デービス=ジョーンズ
竜巻(トルネード)を発生する雷雲のメカニズムの解明はかなり進んでいる。しかし,竜巻自体が
どのように発生・発達するのかはよくわかっていない。

 

P106「潜水病の生理学」
R.E.ムーン/R.D.バン/P.B.ベネット
高圧環境から戻るときに起こる「減圧症」は1世紀以上も前から知られていたが,そのメカニズムが
最近になって解き明かされつつある。

 

P118「カエルのコミュニケーション」
P.M.ナリンズ
動物たちが鳴き競う熱帯雨林の中で,カエルたちは自分の声を同種の雌に確実に届けるために,
さまざまな工夫をしてきた。

 

P126「役に立つノイズ」
F.モス/K.ビーゼンフェルト
普通は検出できないような弱い周期信号が,ノイズ(雑音)を加えると検出できるようになる。
この例は,電子回路から生物の神経信号まで及んでいる。

 

 

 

1995年11月号

P08「SCIENTIFIC  AMERICANに見る150年の技術史」

P21「技術革新の不確実性」
J.レニー
偉大なアイデアや発明が順調に進まないこともあれば,地道な進歩が世界を変えることもある。

 

P25「情報通信技術」
より速く,より洗練されたデータネットワークとコンピューターが,私たちが仕事をしたり
遊んだりする“環境システム”を作っていく。人工知能や知的システムも,日常的な機械の中に
入ってくるだろう。

 

P26「2020年のマイクロプロセッサ」
D.A.パターソン
このまま進めば,25年以内に,1台のコンピューターが,現在シリコンバレーに存在している
全コンピューターの性能と同じになるだろう。

 

P31「ワイヤレス・ネットワーク」
G.L.ザイスマン
10年以内に,動き回る人々に対してはパーソナル通信が,電話のない人々には基本的電話サービスが
提供されるだろう。

 

P36「光ネットワーク」
V.W.S.チャン
エレクトロニクスによる信号処理が,光のままでの信号処理に置き換わり,光ファイバー通信は,
ますます高速大容量化していく。

 

P42「人工知能」
D.B.レナート
常識という知識を集約したものが形を見せ始め,人工知能への突破口がひらかれつつある。

 

P46「知的ソフトウエア」
P.メイズ
プログラムは自律的に動作可能となり,コンピューターに向かう人々の負担を軽減していくだろう。

 

P50「バーチャルリアリティー」
B.ローレル
仮想現実感は,コンピューターを私たちの身体の一部へと変えていく。

 

P52「途上国のための衛星通信」
R.ダガット
通信衛星こそ地球規模の情報経済を実現するエースである。

 

P55「輸送交通システム」
巨大な翼を持った飛行機や磁気浮上列車,そして無人自動車がお客を目的地まで運ぶだろう。
その一方で,小型の宇宙船が太陽系を探検することだろう。

 

P56「超高速鉄道」
T.R.イーストハム
ヨーロッパや日本で重要な輸送・交通手段になっている高速鉄道は,航空機や車を十分補完しうる。

 

P62「知能自動車」
D.ゼッツェ
知能情報機器を搭載した車は,ドライバーと複雑な交通システムの安全性向上に変革をもたらす。

 

P68「進化する航空機」
E.E.コバート
材料,エンジンそして操縦室の表示装置類の進歩によって,空の旅はより安全で安価なものに
なるだろう。

 

P74「21世紀の宇宙船」
F.J.ダイソン
失速しかかった“宇宙の時代”を復活させるのは,太陽系にある無数の小天体を探査する,安くて
小型の宇宙船かもしれない。

 

P79「なぜそんなに車を使うのか」
R.セルベロ
何百万もの人々が自動車から解放されるようになる。

 

P83「医療」
21世紀には遺伝子治療が日常的になり,多くの疾患が克服されるだろう。細胞からできた人工臓器も
普及し,慢性疾患の苦しみから患者を救うだろう。

 

P84「遺伝子治療」
W.F.アンダーソン
すでに数百人もの患者に対して遺伝子治療の臨床試験が始まった。21世紀には通常の医療の
ひとつとして普及するだろう。

 

P90「人工臓器
R.ランガー/J.P.バカンティ
組織工学は次世代の医療をになう究極的な治療技術だ。人工臓器を設計するのは生体の細胞自身
なのだから。

 

P95「未来の避妊法」
N.J.アレクサンダー
安全で効果が高く,容易に避妊前の状態に戻れるのが理想的だ。避妊ワクチンや新しいタイプの
インプラントが登場するだろう。

 

P102「医療は人間を幸福にするか」
A.カプラン
医療の進歩は生きること,死ぬこと,人間らしくあることの思想に挑戦する。

 

P104「医療の進歩を予測する」

 

P133「機械,材料,生産」
自分自身を修復するビル,ピンの頭ほどの小さな機械,整然と生産活動を行う分散工場が実現する
可能性がある。

 

P134「自己組織化する材料」
G.M.ホワイトサイズ
有機・無機の分子が人手を経ずに集合し,小型化・複雑化を極める未来の機械を自ら作り出す。

 

P139「マイクロマシン」
K.J.ガブリエル
大画面テレビや航空機の安定性向上に期待が大きい。半導体チップ上の電子図書館や化学工場も
可能になる。

 

P144「インテリジェント材料」
C.A.ロジャース
自然界にヒントを得て,自分自身を環境に適応させる。人工の神経,筋肉,脳の役割を担うことに
なるだろう。

 

P149「先端複合材料」
SCIENTIFIC  AMERICAN 編集部
補強材としての需要は限りない。

 

P150「米国の高温超伝導研究」
P.C.W.チュー
電流が流れにくい弱点は克服しつつある。有望な応用はセンサーやエネルギー関連だ。

 

P154「未来工場」
SCIENTIFIC  AMERICAN 編集部
通信,画像技術の進歩が生産を変える。

 

P156「21世紀のロボット」
J.F.エンゲルバーガー
家事や介護の分野で不可欠だ。

 

P159「エネルギーと環境」
21世紀と今世紀との決定的な違いとは何だろうか。それは,産業廃棄物,農業,エネルギー生産への
新たなる挑戦によって生じる変化である。

 

P160「太陽エネルギー」
W.ホーグランド
太陽光線からクリーンで安価な燃料だけでなく,電力エネルギーを生み出そうという技術が
進みつつある。

 

P168「核融合」
H.P.ファース
核融合により得られるエネルギーは,21世紀中ごろまでに広く使われるようになるだろう。

 

P174「21世紀の産業生態学」
R.A.フロッシュ
クリーンで効果的な産業経済がめざす,物質のリサイクルと廃棄物の減量の手本は自然界にある。

 

P179「持続型農業の技術」
D.L.ブルックネット/D.L.ウィンケルマン
次にやって来る緑の革命は,環境を守りながら収量を増やすという高度な科学技術に裏打ちされたもの
でなければならない。

 

P185「環境経済学のすすめ」
H.フォン・ラースナー
世界の国々が環境を保護しながら繁栄することは可能である。

 

P199「新しい技術とともに生きる」
技術がすべての問題を解決できるわけではない。逆に問題を作り出すことさえある。しかし,
そうした欠点にもかかわらず,常に私たちの生活を変えつづけていく。

 

P200「科学技術と標準化」
A.ブラボカー
新しい標準規格が設けられてこそ産業も発展するだろう。

 

P201「工業デザインのあるべき姿」
D.A.ノーマン
製品の設計者は,利用者の心理をあまりにも無視しすぎている。

 

P203「読み書き,そろばん,コンピューター」
R.A.ランハム
マルチメディアは,言葉と映像と音に対して,共通の役割を要請している。

 

P205「ネットワーク社会の経済学」
H.R.バリアン
2ビットがデジタル市場ではどれくらいの価値になるのだろうか。

 

P207「裸の王様にならないために」
S.ズボーフ
情報技術は行動よりも速く進化していく。

 

P208「技術だけではできないこと」
R.W.ラッキー
技術は私たちに健康も豊かさも大きなテレビも与えてはくれないだろう。

 

 

 

1995年12月号

P18「サイエンス・ビュー 天気予報の科学と技術」
あまりに身近なために忘れがちだが,天気予報は最新の科学的知識と最先端の技術の産物である。
地球科学の発展や地球環境保護意識の高まりと連動し,さらに進歩することが期待されている。

 

P20「数値予報の進歩と将来」
佐藤信夫
精度はコンピューターの能力に大きく依存する。

 

P28「長期予報への挑戦」
時岡達志
場所と季節を特定すればより適切な情報を提供できる。

 

P34「超短時間予報の可能性」
大野久雄
突風・雷などの危険度の評価が実用化のカギ

 

P40「予報を支える観測システム」
平木 哲/伊藤朋之/佐伯理郎
全球を対象とする国際的な動きが活発だ。

 

P48「出血熱ウイルスはなぜ現れるのか」
B.ル・グエノ
エボラ出血熱ウイルスに代表されるように,危険な病原体は毎年発見されており,人為的な環境の
変化が,それらの伝播をしやすくしている。

 

P58「若い星の連星系」
A.P.ボス
連星系自体はありふれたものだが,これまでの常識に反して,誕生したばかりの若い星の間でも,
連星系が普通に見られることがわかった。

 

P66「量子コンピューター」
S.ロイド
原子のエネルギー状態を情報の記録に利用し,論理演算も実行する。ある種の並列計算に威力を
発揮しそうだ。ただし,設計・製作はきわめて難しい。

 

P84「匂いの生物学」
R.エクセル
人間は約1万種類の匂いをかぎ分けられる。鼻の奥の嗅上皮にある嗅覚細胞から,嗅球をへて脳の
皮質へ至る経路のどこで識別しているのだろう。

 

P114「乳ガンと環境中のホルモン様物質」
D.L.デービス/H.L.ブラッドロー
多くの乳ガンの発症には,有機塩素化合物など環境中に残留しているホルモン様物質が関与している
疑いが濃くなってきた。

 

P122「トレンド 新たなる社会ダーウィニズム」
J.ホーガン
人間の好みや行動を決めているのは,文化か。それとも進化論に基づく本能か。心の役割がしめる
大きさは?盛り上がる人間行動進化学を紹介する。