サイエンス及び日経サイエンス1990年:掲載論文一覧

論文一覧
※1990年10月号より,誌名を「サイエンス」から「日経サイエンス」と改めています。
※各項目は,掲載ページ,論文名,著者名,内容の要約の順に並んでいます。

 

サイエンス1990年1月号

P7 「T細胞はどのようにして抗原を認識するか」

H.M.グレイ/A.セッテ/S.ブース

T細胞が抗原を認識するには,他の細胞が抗原を捕らえてアミノ酸に分解し,それをタンパク質に

くるんで提供することが必要である。

 

P18 (別冊97)「海王星」

J.キノシタ
12年の飛行で4番目の目的地“海王星”に到達したボイジャー2号は,45億kmの彼方から,

すばらしい画像を地球に送り届けてきた。

 

P28「二重ベータ崩壊」

M.K.モー/S.P.ローゼン

ニュートリノを放出しない二重ベータ崩壊が予言されており,その検出は,ニュートリノに

質量があるかどうかの問題と関係している。

 

P48「血液脳脊髄液関門」

R.スペクター/C.E.ジョハンソン

脈絡叢と呼ばれる組織は,血液から脳脊髄液に入るビタミンや核酸の量を調節することによって,

脳内の化学的環境を安定にしている。

 

P58「においと味のメカニズム」

栗原堅三

嗅細胞や味細胞は,外界からやってくる化学物質をどのようにして感知するのか。その仕組みが,

分子レベルで明らかになりはじめた。

 

P.70 「スペースシャトルはなぜ光るのか」

D.E.ハントン

地球低軌道を飛行するスペースシャトルは,大気中の原子状酸素のため機体表面が浸食されたり,

オレンジ色の光を発したりしている。

 

p78 「メタノール自動車」

C.L.グレイ/J.A.アルソン

公害発生源とされている自動車の燃料を,ガソリンからメタノールに切り替えれば,環境破壊

問題やエネルギー危機問題も解決できる。

 

P88 「イエローストーンの森林火災」

W.H.ローム/D.G.デスペイン

数カ月のうちに5600平方kmもの広い地域を焼きつくした大火災も,森林生態学からみれば決して

脅威ではなく,生態系の一部にすぎない。

 

サイエンス1990年2月号

P7「 戦略兵器削減の検証問題」

S.N.グレイビール/P.B.マックフェイト

米ソ間での戦略兵器削減をめざすSTART交渉は,思うように進展していない。その理由の1つが,

兵器削減事実の検証問題である。

 

P16 「脳の発達とシナプスの形成」

R.E.カリル

胎児期から新生児期にかけてみられる,脳内でのシナプスの形成には,若い神経線維に発生する

活動電位が大きな影響を及ぼしている。

 

P26「実測値でみた地球磁場の変遷」

J.ブロクシャム/D.ガビンズ

地球深部の外核を渦を巻きながら流れている溶けた鉄の運動と,地球磁場が変化する現象の間には,

密接な関係があることがわかった。

 

P50「カラー写真の誕生」

G.B.ローマー/J.ドラモワール

カラー化の試みは,150年前の実用写真の登場以前から始まっており,19世紀末には現在のカラー

写真の原型といえるものが誕生した。

 

P60「魚の鰓障害が示す水質汚染」

福田芳生

魚の鰓は,水中の環境汚染物質や有害生物によってさまざまな障害を受けるが,魚は鰓の呼吸

上皮を厚くしてこれに対抗しようとする。

 

P72「分子と固体をつなぐ“マイクロクラスター”」

M.A.ダンカン/D.H.ルーブレイ

原子が数百個程度まで集まった集合体は,固体でも分子でもない別の物質相であり,物質とは

何かをさぐる上で優れた研究材料になる。

 

P80「ゴクラクチョウの繁殖戦略」

B.M.ビーラー

ゴクラクチョウの仲間には,一夫一婦制をとるものと一夫多妻制をとるものとがあるが,

これは,何を主食としているかに関係がある。

 

P.90「テレオペレーター」

W.R.ウッタル

過酷な環境の下で,人間の代わりに作業してくれる機械が,テレオペレーターである。しかし

それは,完全自動化のロボットではない。

 

 

サイエンス1990年3月号

P6 「肝細胞増殖因子の発見と構造決定」

中村敏一

肝臓の再生力はたいへん強力であるが,そのもとになる肝細胞の増殖を促す因子が発見され,

その遺伝子の塩基配列も明らかになった。

 

P18「論争—機械はものを考えるか—NO:プログラムは記号でしかない」

J.R.サール

コンピューターは,プログラムという,意味のない記号を操作しているにすぎず,両者は人間の

脳と心のような関係にはないのである。

 

P.27「論争—機械はものを考えるか—YES:統合化が心をつくる」

P.M.チャーチランド/P.S.チャーチランド

古典的なAI(人工知能)では,意識をもつ機械は作れない。しかし,人間の脳をまねたニューラル・

システムなら可能かもしれない。

 

P48(別冊95)「アンチセンスRNAとDNA」

H.M.ワイントラウブ

RNAやDNAと結合するアンチセンス分子が,遺伝子の発現を止めることによって,ある種の病気を

引き起こしている可能性がある。

 

P57「何が氷河期を引き起こすか」

W.S.ブロッカー/G.H.デントン

氷河の成長や後退と地球軌道の周期の変化は直接には関係がない。大気や海洋の状況が大きく

変化した結果,氷河期が起こるのである。

 

P68「自然はなぜ左右非対称なのか」

R.A.ヘグストローム/D.K.コンデプディ

原子や分子からDNA,アミノ酸,タンパク質,細胞,動植物にいたるまで,自然には鏡対称構造の

うちの左か右のどちらかしかない。

 

P80「微小プラズマの物理

J.J.ボリンシャー/D.J.ワインランド

電磁場容器の中に数個から数百万個のプラズマを閉じ込め,レーザー法で極低温まで冷やすと,

中性子星と同じ物質状態を実現できる。

 

P90「宇宙背景放射探査機」

COBE
S.グルキス/P.M.ルービン/S.S.マイヤー/R.F.シルバーバーグ

「ビッグバン」によって宇宙が誕生したという現在の宇宙形成理論を検証するため,米航空宇宙局は

宇宙背景放射探査機を打ち上げた。

 

 

サイエンス1990年4月号

P15「ガンの痛みを取り除く新しいモルヒネ投与法」

R.メルザック

モルヒネは麻薬常習の危険があるため,不十分な量しか使われなかった。しかし,

投与法を変えればガンの痛みを鎮めることができる。

 

P24「太陽活動の地球への影響」

P.V.フォーカル

太陽磁場の変動に伴って太陽が反射する紫外線,X線,荷電粒子の量が変動し,この変動が地球環境に

さまざまな影響を及ぼしている。

 

P34「植物はどのようにして酸素をつくるか」

ゴビンジー/W.J.コールマン

緑色植物とシアノバクテリアは電子を得るために水を分解するが,この分解は,水の酸化クロックと

呼ばれる巧妙な装置が担っている。

 

P56「身体の中のカオスとフラクタル」

A.L.ゴールドバーガー/D.R.リグニー/B.J.ウエスト

肺につながる気道全体はフラクタル構造を示し,心臓の拍動リズムはカオス的変化を示す。

 

P66「母性遺伝の分子細胞メカニズム」

黒岩常祥

遺伝現象の中には,母親の形質だけが子に伝わる「母性遺伝」がある。これがどのような段階を経て

起こるのかが明らかになってきた。

 

P80「ガリウムヒ素半導体の進展」

M.H.ブロドスキー

スイッチングが速く,光素子も作れるという特徴を生かし,ガリウムヒ素半導体は,コンピューター

や通信の分野で応用を広げている。

 

P92「血液を分けあうチスイコウモリ」

G.S.ウイルキンソン

ウマやウシの血を吸うチスイコウモリは,二晩,吸血に失敗すると死んでしまうが,そのような時は,

親しい仲間が血を分けてくれる。

 

P100「経済活動を説明する“正のフィードバック”」

W.B.アーサー

古典的な経済学では,現在の社会で起こっている経済活動を厳密に説明することはできない。

そこで,新しい経済理論が登場してきた。

 

 

サイエンス1990年5月号

P7「月面天文台」

J.O.バーンズ/N.デューリック/G.J.テイラー/S.W.ジョンソン

月面は太陽系のなかで天体観測に最も適した場所である。建設計画がすすむ月面天文台は天文学に

新しい地平を開くことになるだろう。

 

P16「インターロイキン2の発見と応用」

K.A.スミス

侵入してきた異物を集中的に攻撃するために体内の免疫細胞群はインターロイキン2と名付けられた

物質を通じて必要な能力を高める。

 

P26 「新しい核分裂」

W.グライナー/A.サンデュレスク

ウランの発見から約40年が経過し,ようやく新しい放射線が発見された。この根拠となったのが

「二中心殻模型」という新理論である。

 

P49「世界通信網を超える情報通信技術」

K.ライト

マクルーハンが予言した“地球村”を超える新しい世代の情報通信技術が芽をふき出した。

 

P66「安定な大陸地殻で発生する地震」

A.C.ジョンストン/L.R.カンター

文献や地史の研究から,プレート境界から遠く離れた大陸中央でも,数百年から数千年の間隔で

大地震が起こっていることがわかった。

 

P76「水中の餌をこしとって食べる動物たち」

S.L.サンダーソン/R.ワッサーサグ

ヒゲクジラやカモ,サメ,オタマジャクシは水中に浮かぶ餌を食べる動物であり,そのため,

彼らの頭部や口の構造は特殊化している。

 

P84「太陽風プラズマの物理学」

寺沢敏夫

「さきがけ」や「すいせい」など慧星探査機による観測結果の分析から,太陽風プラズマの振る舞いや

加速機構が明らかになってきた。

 

P94「無意識のうちに行なう判断」

J.ワイス

精神療法を受けている患者を対象にした精密で定量的な研究から,人間は,無意識にある種の計画

をたて,実行できることがわかった。

 

 

サイエンス1990年6月号

P8( 別冊96) 「政策が加速する熱帯林破壊」

R.レペト

熱帯林を抱える発展途上国政府の多くは,過度の伐採や開墾を政策的に奨励している。これが

熱帯林の急速な破壊に拍車をかけている。

 

P16「遺伝子を自動的に複製するPCR法の発見」

K.B.ミュリス

遺伝子のコピーを簡単に,しかも大量につくり出すPCR法は,筆者がカリフォルニアの山岳地帯を

ドライブしている最中に考えついた。

 

P26「銀河系の中心で何が起こっているか」

C.H.タウンズ/R.ゲンツェル

電波や赤外線領域で銀河系の中心を観測した結果,そこには何も発しない巨大質量天体・ブラック

ホールがあるらしいことがわかった。

 

p52「溶媒中の化学反応速度」

立矢正典

反応分子と溶媒との相互作用を「平均自由行程」という量で表わし,再結合反応速度を統一的に記述

する新しい理論モデルが誕生した。

 

p64「安全で経済的な新型軽水炉」

M.W.ゴレー/N.E.トドリアス

原理的により優れた「受動的な」安全特性を備え,効率的な管理や経済性を考慮した新型軽水炉が,

原子力発電を魅力あるものにする。

 

P74「地球上のクレーター」

R.A.F.グリーブ

地球上に残る隕石クレーターは,数こそ少ないが隕石衝突の衝撃の激しさを雄弁に物語っている。

生物の進化にも影響を与えただろう。

 

P83「眼の感度を調節するカブトガニの脳」

R.B.バーロー
カブトガニの眼の感度は,夜には昼の100万倍になるが,これは脳内の体内時計が眼に信号を送り,

網膜の機能を調節するからである。

 

P90「古陶磁器の色とつや」

P.B.バンディバー

古来の陶磁器の美しい色やつやをつくり出している釉薬の技術は,現代のハイテク・セラミックス

につながる精巧で高度なものである。

 

 

サイエンス1990年7月号

P8「培養リンパ球を使ったガン治療」

S.A.ローゼンバーグ

患者の血液やガンの結節から取り出したリンパ球をインターロイキン2で増殖し,再び患者の

体内に戻す免疫療法の研究が進んでいる。

 

P18「低空高速用パラシュート」

C.W.ピーターソン

高度100mを時速1500kmで飛ぶジェット機から投下された物質を,時速70kmまで急激に減速させる

パラシュートが開発されている。

 

P26「予想より少なかった太陽ニュートリノ」

J.N.バーコール

太陽中心部から放出されるニュートリノの量について詳しい観測が行なわれ,その値が従来の

理論値と決定的に異なることが判明した。

 

P38「これからのクルマはどうなるか」

K.ライト

道路情報などをリアルタイムで表示する“インテリジェント・カー”の開発が進んでいる。

 

P82「冷やすと消えるナメクジの記憶」

関口達彦

食物で条件付けした後にナメクジを冷却すると,記憶が失われることがわかった。この現象を

利用すると,記憶の構造が明らかになる。

 

P94「始祖鳥」

P.ウェルンホーファー

始祖鳥が,現在の鳥の直接の祖先かどうかははっきりしていない。だが,その骨格は明らかに

爬虫類と鳥類の中間の特徴をもっている。

 

P104「科学が証言台に立つ時」

P.N.ニューフェルド/N.コールマン

血液検査などの科学鑑定は裁判の行方を大きく左右するが,その検査自体が信頼できるか否かに

ついての科学的な議論は不十分である。

 

P113「アフリカの人口爆発」

J.C.コードウェル/P.コードウェル

世界のほとんどの地域での動向とは逆に,サハラ砂漠以南のアフリカでは宗教や社会的な圧力から

人口増加に歯止めがかかっていない。

 

サイエンス1990年8月号

P8「自然に帰る米国農業」

J.P.レガノルド/R.I.パペンディック/J.F.パール

化学肥料と農薬に依存した結果,土壌流失などの耕地の荒廃を招いた米国農業は,自然を最大限に

活用する持続的農業に転換し始めた。

 

p16「イザリウオ類の愉快な生態」

T.W.ピエッチ/D.B.グロベッカー

イザリウオの仲間は,周囲の環境にそっくりに体の色を変え,背びれが変化してできた“疑似餌”で

獲物をおびきよせて一気に吸い込む。

 

p26 (別冊97)「冥王星と巨大衛星」

シャロン
R.ビンゼル

凍りついたメタンの表面と稀薄な2層の大気をもつ冥王星は,直径が冥王星の1/2もある巨大衛星

シャロンをつれて公転している。

 

p54(別冊99)「中央海嶺の不連続構造」

K.C.マクドナルド/P.J.フォックス

地球を野球ボールに例えれば,縫い目に当たるのが中央海嶺。全長7万5000km,地上最長のこの

山脈は寸断されていることがわかった。

 

p66「妊娠中絶薬RU486」

A.ウルマン/G.トウェッチ/D.フィリベール

化学構造がプロゲステロンに似ているこの薬は,プロスタグランジンと併用することによって,

安全確実に流産を起こすことができる。

 

p74「音波情報を処理するコウモリの神経機構」

菅乃武男

コウモリは,獲物に当たって返ってきた音波を自分が発したパルスと比較分析するためにきわめて

高度な神経機構をつくりあげている。

 

p84「ヘリウム3超流動渦の発見」

O.V.ルーナスマ/G.ピケット

フェルミ粒子であるヘリウム3は,絶対温度0.001度という超低温で初めて超流動になって,

ヘリウム4にはない奇妙な渦糸をつくる。

 

p94「マグマがつくる天然ガス」

脇田宏

地下数千mの火山岩層に存在する天然ガスの起源は,マグマに由来する二酸化炭素や水素などが

炭化水素に変化したものと考えられる。

 

サイエンス1990年9月号

P9「地球温暖化論争」

R.M.ホワイト

気温の上昇は人類社会に壊滅的な影響を与えるが,起こるという科学的な証明はできていない。

私たちはこの問題にどう対処すべきか。

 

P18「糖尿病を引き起こす自己免疫作用」

M.A.アトキンソン/N.K.マクラーレン

インスリン依存型の糖尿病は,自分の免疫系がすい臓のベータ細胞を冒す自己免疫疾患であり,

そのメカニズムが明らかになってきた。

 

P28「新時代に入った宇宙開発競争」

E.コーコラン/T.ベアズリー

米国が長く独占していた衛星打ち上げに,ソ連,欧州,日本,中国などの競争者が現れた。

衛星ビジネスは戦国時代に突入している。

 

P54「電子顕微鏡像に現われた正五角対称」

平賀賢二(お名前の賢は,右上が又ではなく忠)

非周期構造でありながら規則正しい原子配列をもった準結晶を説明するため,ペンローズ格子と

原子クラスターを組み合わせたモデルが提案された。

 

P66「成長する正二十面体」

梶川泰司

正十二面体を分割して作った10種のモジュールを放射対称的に最構成していくと,正十二面体,

正二十面体などさまざまな5回対称多面体が現れる。

 

P78「脊椎動物の形を作るホメオボックス遺伝子」

E.M.デ・ロバーティス/G.オリバー/C.V.E.ライト

無脊椎動物の体を作るのに重要な役割を果たすホメオボックス遺伝子が脊椎動物にもある。

 

P88「世界最大の加速器LEPコライダー」

S.マイヤース/E.ピカソ

電子と陽電子を衝突させてZ0粒子を作り出す円形加速器が動き始めた。得られたデータから.Z0

粒子の寿命や質量がわかる日も近い。

 

P98「打ち上げ花火の光彩」

J.A.コンクリング

花火の赤や青の色は,配合されたストロンチウム,銅などに由来する。アルミニウムは強烈な

白色光を発するが,鉄は鈍い金色になる。

 

P106「無秩序を否定するラムジー理論」

R.L.グラハム/J.H.スペンサー

星ぼしが星座を作るように,大きな数が集まると,そこには必ずある規則に従ったグループが

できてしまうことを,この理論は教える。

 

 

日経サイエンス1990年10月号

※以降の号は全て誌名は「日経サイエンス」

P6「検証:臓器移植」

編集部・豊川博圭/福田夏樹

心臓移植の再開には脳死を死と認める社会的合意が必要という不思議な理論が横行し,科学の

芽を摘み取ってしまった。

 

P22「中東に広がる弾道ミサイル」

J.E.ノラン/A.D.ウィーロン

先進超大国の武器輸出競争は,第三世界のミサイル保有数を急激に伸ばしている。中東を中心に,

世界はミサイル新時代に突入した。

 

P32「地球温暖化を断言する」

P.D.ジョーンズ/T.M.L.ウィグリー

地球の温暖化については,否定説も出ているが,観測データを徹底的に分析すると,やはり

地球は温暖化していることがわかった。

 

P42「レーザー走査顕微鏡の開発」

大出孝博

レーザービームで走査し,反射信号をメモリーに蓄えることで,広い範囲に焦点の合う新しい

顕微鏡が誕生した。

 

P62「フラクタル言語」

H.ユルゲンス/H-O.パイトゲン/D.ザウペ

フラクタルは幾何学を記述する新しい言語である。その構成要素はそれぞれ独立した意味を

もち,漢字のような表意文字に近い。

 

P74「高温超伝導体の結晶構造」

R.J.キャバ

「1-2-3物質」に代表されるような銅酸化物高温超伝導体は,結晶構造の中に電子が自由に動き

回れる銅-酸素面をもっている。

 

P90「損傷が深刻化するマヤの壁画」

J.キノシタ

大気汚染や酸性雨の影響でマヤ遺跡の壁画が色あせてきた。早急に写真撮影や模写を行って

記録に残さねばならない。

 

P98「融点と凝固点が異なる物質」

R.S.ベリー

普通,物質の融点と凝固点は同じだが,分子や原子が数個から十数個集まったクラスターには,

融点が凝固点より高いものがある。

 

 

日経サイエンス1990年11月号

P6「日本の二酸化炭素削減のシナリオ」

槌屋治紀

効率の改善や新エネルギーを積極的に導入する政策をとれば,経済成長を遂げながら二酸化炭素

の排出削減を達成することができる。

 

P20「地球にやさしいエネルギー」

G.R.デービス

増大するエネルギー需要に応じながら地球環境を維持するには,世界全体を「持続可能」な経済

社会へと変えなければならない。

 

P30「電力利用の効率化」

A.P.フィケット/C.W.ゲリングス/A.B.ロビンス

将来にわたって世界が必要とするエネルギーを供給していくには,最新技術の成果を活用して,

大規模な電力の節約を行う必要がある。

 

P42「ビルと住宅の省エネルギー」

R.ベビントン/A.H.ローゼンフェルド

業務用ビルは省エネの潜在力がきわめて高い。私たちは,効率改善への設備投資が将来の大きな

節約につながることを意識すべきだ。

 

P58「産業分野の省エネルギー」

M.H.ロス/D.スタインメイヤー

産業界は省エネ投資と生産効率の向上を進め,商品構造を軽薄短小に転換した結果,生産高は

増え,エネルギー消費量が減った。

 

P68「自動車輸送の省エネルギー」

D.L.ブレビス/P.ウォルツァー

自動車の燃費向上,クリーンな燃料への転換,交通システムの改良などによって,石油危機

と環境汚染は回避できる。

 

P78「発展途上国のエネルギー対策」

A.K.N.レディ/J.ゴールデンバーグ

これらの国に必要なのは,巨大な原子力発電所ではなく,小さな発電所を各地に設け,つくった

エネルギーを無駄なく使うことである。

 

P88「ソ連,東欧,中国のエネルギー対策」

W.U.チャンドラー/A.A.マカロフ/周大地

計画経済の国々が経済発展をめざすなら,市場経済と西側の技術を積極的に導入していかなければ

ならないが,前途は険しい。

 

P97「化石エネルギー」

W.フルカーソン/R.R.ジャドキンス/M.K.サングビー

石炭,石油,天然ガスなどの化石燃料は有限であり,環境破壊の原因になるため,賢く使う技術

が求められている。

 

P110「原子力エネルギー」

W.ヘーフェレ

安全性,廃棄物処理,核兵器の拡散問題を国際機関で管理すれば,原子力は地球温暖化を阻止

する強力な援軍となるだろう。

 

P120「太陽エネルギー」

C.J.ワインバーグ/R.H.ウイリアムズ

太陽電池,バイオマスなど環境にやさしいエネルギーが実用段階を迎えた。普及のためには

社会システムを変える必要がある。

 

P130「21世紀のエネルギー」

J.P.ホルドレン

いま最も重要なのは,先進各国が協力体制をつくり,もてる資金と人材を代替エネルギー開発と

効率改善の研究に投入することだ。

 

 

日経サイエンス1990年12月号

P6「展望21世紀への科学技術」

鳥井弘之

科学技術と依存し合う現代社会。環境や人口などの問題解決が急がれる今,科学技術の役割が

変わってきた。

 

P20「コンピューターはチェス名人に勝てるか」

許峯雄/T.アナンサラマン/M.キャンベル/A.ノバジク

チェスの高段者を次々に破ったコンピューターも,名人カスパロフには,敗れた。史上最強の

名人を上回る機械はつくれるのか。

 

P28「遺伝子のインプリンティング」

C.サピエンザ

遺伝子は,父親と母親のどちらに由来するかによってマーク付けされているため,同じ遺伝子が

異なる働きをする場合がある。

 

P40「論争:恐竜はなぜ絶滅したか=小惑星衝突説」

W.アルヴァレズ/F.アサロ

白亜紀末,直径10kmもの巨大な地球外物質が地球に衝突した結果,気候変動が起こり,地上の

生命の半数が絶滅した。

 

P49「論争:恐竜はなぜ絶滅したか=火山大噴火説」

V.E.クルティヨ

インドのデカン高原を形成した大規模な噴火は,大量絶滅と同じ時期。大気汚染と生態系破壊の

真犯人は火山噴火である。

 

P66「ガンの選択的放射線療法BNCT」

R.F.バース/A.H.ソロウェイ/R.G.フェアチャイルド

ガン細胞にホウ素を取り込ませておいたあと弱い中性子線を照射すると,正常細胞を傷つける

ことなく,ガン細胞だけを破壊できる。

 

P74「修正を迫られる宇宙論」

J.ホーガン

銀河団の巨大構造や100億光年先のクエーサーが観測され,「冷たい暗黒物質モデル」が危機に

瀕している。

 

P94「筋ジストロフィー遺伝子の発見」

石浦章一

筋ジストロフィーの中で最も重いデュシャンヌ型の病因遺伝子が明らかになった。正確な診断が

可能になり,治療にも展望が開けてきた。