※「日経サイエンス」の1990年9月以前の誌名は「サイエンス」です。
※各項目は,掲載ページ,論文名,著者名,内容の要約の順に並んでいます。
サイエンス1988年1月号
P8「ガンを減らす食事」
L.A.コーエン
脂肪や単純炭水化物の摂取量を減らし,繊維などをふやせば,ある種のガン発生は減らせる。
P16(別冊88)「応用分野が広がるシンクロトロン放射光」
H.ビニック
この放射はパルス光で,指向性がよく,部分的にはコヒーレントという特性をもっている。
P28「人工染色体」
A.W.マレー/J.W.ショスターク
プラスミドに動原体などを挿入することにより,人工的に染色体をつくり出すことができる。
P46「ハイブリッド型人工肝臓」
中村敏一
培養したイヌの肝細胞を組み込んだハイブリッド型人工肝臓を用いて,肝臓を摘出したイヌを48~72
時間,生存させることに成功した。
P60(別冊98)「新しいタイプの超新星」
J.C.ウィーラー/R.P.ハークネス
大質量星が水素の多い外層をはぎとられ,残されたコアが重力崩壊してできたものだろう。
P72「悪魔とエンジンと第二法則」
C.H.ベネット
熱力学の第二法則を破るかにみえる“マクスウェルの悪魔”の問題が,ようやく解決した。
P84「ジャイアントパンダの祖先」
S.J.オブライエン
類縁関係を調べた結果,ジャイアントパンダはクマ科ジャイアントパンダ亜科が適切らしい。
P92「潮汐発電所と環境」
D.A.グリーンバーグ
すぐれたモデルを構築すれば,潮汐発電ダムを作った場合の環境への影響を正確に評価できる。
サイエンス1988年2月号
P8「サービス産業を変える技術革新」
J.B.クイン/J.J.バルッチ/P.C.パケット
農業と製造業を発展させてきた技術は,いまやサービス産業の成長の原動力となっている。
P20「月の古磁場」
S.K.ランコーン
月もかつては磁場をもっており,しかも,その磁極の位置が最低でも3回変化したらしい。
P30「ガラスはなぜ壊れやすいのか」
T.A.ミカールスケ/B.C.バンカー
ガラスは真空中では合金の10倍の強さであるが,水があるところで力がかかると壊れやすい。
P48(別冊87)「脳をモデルにした集団並列計算機」
D.W.タンク/J.J.ホップフィールド
生物の神経をモデルにして電子回路を構成すると,ある種の複雑な問題をすばやく解ける。
P60「動物細胞はどのようにして移動するか」
M.S.ブレッチャー
白血球やガンなどの細胞は,表面の膜をキャタピラのように動かすことによって移動する。
P70「『インファントサイド』を抑える行動原理」
関口茂久
生まれたばかりの子供を殺す“子殺し”の行動を調節している原理を実験で明らかにする。
P78(別冊89)「コスミック・ストリング」
A.ビレンキン
星の分布が一様でなく銀河や銀河団をつくるのは,膨大な質量のストリングが存在するからだ。
P88「トカゲの擬似交尾行動」
D.クルーズ
ムチオトカゲのある種は雌しかいないが,時期によって雄のように求愛行動をしたりする。
サイエンス1988年3月号
P9「南極のオゾンホール」
R.S.ストラルスキー
オゾンホールの生成の主な原因はフロンガスのようだが,気象条件も関係があるようだ。
P18「新しい巨大電波望遠鏡VLBA」
K.I.ケラー/A.R.トンプソン
直径25mの電波望遠鏡10台で構成されるもので,地球の大きさの電波望遠鏡に相当する。
P28「希土類は豊富に存在する」
G.K.メッケ/P.メーラー
名前とは逆に希土類は地球に豊富に存在するが,低品位の鉱物の形でしか産出しない。
P44「実験が光をあてる量子力学の奇妙な世界」
A.シモニー
最近の実験結果をみると,常識的な解釈では理解しにくい量子世界はやはり正しいらしい。
P56(別冊106)「『キラー細胞』はいかにして細胞を殺すか」
J.D-E.ヤング/Z.A.コーン
キラー細胞は標的細胞にしっかり結合し,パーフォリンというタンパク質を放出して殺す。
P66「名前を呼び合うクモザル」
正高信男
クモザルの音声コミュニケーションの研究で,彼らが命名体系をもっていることがわかった。
P74「美術と錯覚の視覚系」
M.S.リビングストン
視覚情報は3つに独立した経路で処理されるため,錯覚などいろいろな視覚効果が生まれる。
P84「変圧器の歴史」
J.W.コルトマン
電力技術のなかでも,約1世紀前に実用化された変圧器が最も重要な役割を果たしてきた。
サイエンス1988年4月号
P18「金星・地球・火星の気候の進化」
J.F.カスティング/O.B.ツーン/J.B.ポラック
惑星のうちなぜ地球にだけ生命が存在し,他の惑星には存在しないような環境になったのだろう。
P28「宇宙をつくった対称性の破れ」
R.K.アデア
物質が存在するのはCP対称性の破れのためで,その基本力を特定する実験が進行中である。
P50「興奮を抑制するGABA作動性ニューロン」
D.I.ゴットリーブ
GABAを分泌する抑制性ニューロンは,情報を整理し解析する働きに関係しているらしい。
P60「火山現象としての岩屑流」
宇井忠英
成層火山や溶岩円頂丘では,大規模な高速の地滑り運動「岩屑流」を発生することがある。
P72「電気を通すプラスチック」
R.B.カナー/A.G.マクダイアミッド
導電性プラスチックの研究開発が進展して,銅の電気伝導度まであと1桁に追っている。
P8「DNAマーカーによる染色体地図の作成」
R.ホワイト/J.M.ラルエ
制限酵素を使うことによって,人間の染色体の地図を描くことができるようになってきた。
P80「キタオポッサムの驚異的な適応力」
S.N.オースタッド
キタオポッサムが生息域を急速に拡大できたのは,非常に適応力に富んでいるからである。
P88「天才数学者ラマヌジャンとπ」
J.M.ボールウェイン/P.B.ボールウェイン
32歳の短い生涯を駆け抜けたインドの天才数学者は,πの計算アルゴリズムを残していた。
サイエンス1988年5月号
P8「ソナーを使わない潜水艦探知技術」
T.ステファニック
従来の音響的な方法とは別に,レーザー光線や生物発光などによる方法が検討されている。
P16(別冊87,94)「量子効果デバイスの可能性」
R.T.ベイト
集積回路素子の小型化は限界に近づいており量子効果を用いたデバイスが研究されている。
P22「触媒活性をもつ抗体」
R.A.ラーナー/A.トラモンタノ
触媒としての働きをする抗体は,新しいワクチンの製造をはじめ広い分野で役立つだろう。
P50「重力と反物質」
T.ゴールドマン/R.J.ヒューズ/M.M.ニード
最新の重力理論によると,ガリレオが示したという「等価理論」が破れている可能性がある。
P64「ヒョウの斑点はどのように決まるか」
J.D.マレー
ヒョウやシマウマなどの毛皮模様は,胎児時代の形と大きさによって決まっているらしい。
P74「建設用クレーン」
L.K.シャピロ/H.I.シャピロ
誕生して約2000年,その機能や種類は驚くほど進歩したが,安全対策はまだ不十分である。
P84「骨細胞が語る恐竜の生理」
福田芳生
走査電子顕微鏡による観察で発見された骨細胞は,恐竜の骨の高い代謝機能を示している。
P95「肥満と生殖機能」
R.E.フリッシュ
女性が,ダイエットや過激な運動によって脂肪を限度以上に減らしてしまうと不妊になる。
サイエンス1988年6月号
P8「自然楽器とコンピューターによる新しい演奏」
P.ブーレーズ/A.ゲルソー
自然楽器が奏でる音楽を,コンピューターが高速で演算処理して新しい音をつくり出す。これにより,
新しい音楽分野が開かれ始めた。
P16「ヒゲクジラ類の行動」
B.ビルジッマ
海の哺乳類クジラは,摂餌行動やコミュニケーション,母子関係などを通して,陸生動物と同じように,
ひとつの社会を形成している。
P26(別冊106)「自己免疫が果たす役割」
I.R.コーエン
自己免疫疾患は免疫系が自己の組織を攻撃する疾患であるが,免疫系が自己を認識すること自体は
健康体にとっても重要な働きである。
P46「ブラックホールの“膜パラダイム”」
R.H.プライス/K.S.ソーン
ブラックホールを扁平な球状で,導電体の薄い膜につつまれたものと考えると,電磁波の影響などを,
直観的に理解できるようになる。
P60「芳香族化合物はなぜ安定か」
相原惇一
ベンゼンに代表される芳香族化合物はきわめて安定であるが,この理由が,グラフ理論共鳴エネルギー
によってついに明かになった。
P72(別冊95)「植物遺伝子の光による発現制御」
P.B.モーゼス/N.H.チュア
日光は遺伝子に作用して,光合成を起こしたり植物の成長に影響を及ぼすが,最近,光に反応する
遺伝子のDNA配列が明かになった。
P80「気体中のスピンが引き起こす量子力学効果」
F.ラロエ/J.H.フリード
低濃度の水素やヘリウム3などの気体を絶対零度近くまで冷却すると,通常の気体では観測されない
ような量子力学効果が現れる。
P90「実験動物学の父トランブレー」
H.M.レンホフ/S.G.レンホフ
トランブレーは1740年代にヒドラに興味をもちその体を2つに切断して再生現象を調べたが,このことが
実験動物学の始まりとなった。
サイエンス1988年7月号
P9(別冊93)「屋外より汚染されている室内の空気」
A.V.ニーロ
室内の空気は,放射性物質や有機物などで屋外の空気よりも汚れている。今後,健康リスクを
考えた対応策が必要になってくるだろう。
P18(別冊91)「ガン壊死因子TNFの働き」
L.I.オールド
マクロファージから分泌され,ガンを壊死させるものとして発見されたTNFは,実際には,炎症や
免疫反応に広範にかかわっている。
P28「地球磁場はなぜ逆転するか」
K.A.ホフマン
逆転を繰り返している地球磁場だが,その仕組みはいぜん謎のままである。そこで,磁気ベクトルを
使った新しい方法で謎に挑戦する。
P48(別冊94)「量子雑音を克服する『スクイーズド光』」
R.E.スラッシャー/B.ユーケ
光を使った精密測定の限界は,量子力学的ゆらぎによって決まってしまうが,この「量子雑音」を
解決する画期的な手法が発見された。
P59「大マゼラン雲に現れた超新星1987A」
野本憲一
1987年2月に発見されたこの超新星は,16万光年という至近距離にあり,ニュートリノの観測をはじめ
数多くの成果がもたらされている。
P70「カモノハシ」
M.グリフィス
この一見原始的な動物は,餌を探すために電場を感知する受容器があるとか体温調節がうまいなど,
水辺での生活によく適応している。
P80「エアロゲル」
J.フリッケ
ゲル状の物質を収縮させないように乾燥してつくるエアロゲルは軽くてユニークな特性をもっている
ので,その応用が期待されている。
P88「宇宙定数の謎」
L.アボット
宇宙の構造を解くカギになる宇宙定数は,理論値と観測値とで46桁も違う。これは,研究方法の
根本的見直しを迫っているようである。
サイエンス1988年8月号
P9(別冊89)「粒子加速器が検証する宇宙論の予言」
D.N.シュラム/G.スティーグマン
現代宇宙論は「素粒子の族は,現在の3つのほかに,あってもあと1つ」と予言しておりこれは
巨大加速器の実験で確認されるだろう。
P18(別冊95)「mRNAのスプライシングを担う“スナープス”」
J.A.スタイツ
mRNA前駆体からイントロンを除去する作業で,核内低分子RNA-タンパク質複合体粒子(“スナープス”)
が重要な役割を演じている。
P26「南極氷原に出現する“湖”ポリニヤ」
A.L.ゴードン/J.C.コミソ
南極大陸を囲む海氷原中には,ポリニヤという海水面ができる。これが“地球熱機関”を動かし
世界の機構変化に影響を与えている。
P48「ペロブスカイト」
R.M.ハーゼン
高温超伝導で注目されたこの結晶構造は,多種多様の変形が可能であり,絶縁体から超伝導体まで,
さまざまな電気的性質が現れる。
P60「多細胞生物のように活動する細菌」
J.A.シャピロ
細菌は,多数が集まって高度に組織化されたコロニーをつくるので,単細胞生物ではあるが,
多細胞生物の個々の細胞のように見える。
P70「米国経済再生のシナリオ」
R.ランダウ
米国の実質経済成長率は,日本や西ドイツよりも低い。米国が,かつての勢いを取り戻すには,
技術革新と投資の活性化が必要である。
P82「ヒルの摂食行動を制御するセロトニン」
C.M.レント/M.H.ディキンソン
セロトニンという神経伝達物質が,ヒルの摂食行動を制御していることがわかった。これは,
神経と行動の関係を解明するカギになる。
P90「働きバチの行動の起源」
大谷剛
個々の個体を追跡する方法により働きバチの行動を詳細に観察,分析すると,その行動型は
狩りバチ時代に培われたものと考えられる。
サイエンス1988年9月号
P8「年をとるとなぜ老眼になるのか」
J.F.コレツ/G.H.ハンデルマン
近くが見えにくくなるのは,眼の構造の幾何学的変化により水晶体の調節がしにくくなる
上に,水晶体の屈折率が減少するためである。
P16(別冊99)「分裂と結合を繰り返す超大陸」
R.D.ナンス/T.R.ワースリー/J.B.ムーディー
地球上の大陸は約4億4000万年の周期で,分裂と結合を繰り返している。これは地殻や気候の
変動にまで影響を与えているようである。
P24「血液細胞の成長を刺激するホルモン」
D.W.ゴルデ/J.C.ガッソン
血液細胞には赤血球のほかに多くの種類の白血球があるが,それらはただ1種類の細胞から,
造血ホルモンによって分化・増殖される。
P56「汎用コンピューターでの実時間“ごみ集め」”
湯浅太一
リスト処理で不可欠の“ごみ集め”はプログラムの実行を中断させるが,これを克服して
汎用機で実時間処理できる方法が考案された。
P72(別冊89)「重力レンズで宇宙を探る」
E.L.ターナー
宇宙の偶然によって生じる重力レンズを詳しく研究すれば,宇宙の大規模特性や不均一性の
存在といった謎を解く手掛かりが得られる。
P82「コンデンサー」
D.M.トロッター
電気的な緩衝装置であるコンデンサーは,集積回路の発展に対応して材料と設計の両面で
進歩を遂げ,小型で大容量のものが登場した。
P90「数学に潜むランダム性」
G.J.チェイティン
数学の原理は,考えられているほど確実なものではない。アルゴリズム情報理論から,
数学にも,ランダム性があることが証明された。
P98「米国大統領選を左右する3つの地域」
J.C.アーチャー/F.M.シェリー/P.J.テイラー/E.R.ホワイト
米国は,経済的・文化的な亀裂のため,3つの地域に分断されている。大統領選に勝つには,
亀裂を越えた連合を形成する必要がある。
サイエンス1988年10月号
P8(別冊93)「酸性雨の脅威」
V.A.モーネン
大気汚染物質が引き起こす酸性雨は,自然環境を破壊しており,大きな社会問題になっている。
いま,酸性雨の抑制が求められている。
P20(別冊95)「DNAの複製はなぜ正確なのか」
M.ラドマン/R.ワグナー
DNAの複製が正確に進んでいるかどうかは3つの段階でチェックされ,その結果,遺伝情報の
誤りは100億文字にわずか1個となる。
P30「コンピューターの真の発明者アタナソフ」
A.R.マッキントッシュ
世界最初のディジタル・コンピューターはエニアックではなく,アタナソフ博士によるマシンが
第1号であることが明らかになった。
P54「新しいX線回折法による表面構造回析」
高橋敏男
X線の回折強度が入射X線の波長に依存して変化する性質を利用して,結晶表面の構造を立体的に
決定する新しい解析法が開発された。
P65「白血病の光化学治療」
R.L.エーデルソン
8-MOPを含んだ血液を紫外線で照射することにより,皮膚T細胞リンパ腫という白血病の治療に
画期的な効果をあげることができた。
P74「第4世代の素粒子」
D.B.クライン
素粒子物理の「標準模型」に残された疑問や最近の実験結果を検討すると,クォークとレプトンは,
あと2個ずつあるのかもしれない。
P84「符号化マスクを使ったX線源撮像装置」
G.K.スキナー
X線源の像を撮るには,複数の穴をもつ“変形ピンホールカメラ”を使うとよい。これを天文学の
分野で用いると,観測範囲が広がる。
P92「宇宙測地学でみた米国西部の地殻変動」
T.H.ジョルダン/J.B.ミンスター
米国西部は,太平洋・北アメリカの2大プレートの相対運動のため,激しい地殻変動が続いている。
その詳細を,宇宙測地学で調べた。
サイエンス1988年11月号
P9「視覚野の発見と井上達二の業績」
N.グリックステイン
第一次視覚野が後頭葉にあることは,19世紀末に発見された。そこへの投射パターンの解明には,
日本人の眼科医が大きな貢献をした。
P20(別冊90)「ガン抑制遺伝子」
R.A.ワインバーグ
細胞中のガン抑制遺伝子の欠失がガンを引き起こすという,新しいガン発生機構が,網膜芽細胞腫の
研究により,明らかになってきた。
P32「レーザーによる原子・分子の個別検出」
V.S.レトコフ
レーザー分光法と質量分析器を結合した「共鳴イオン化分光法」によると,これまでにない感度で
原子や分子を検出することができる。
P52「インシュリンはどのように作られるか」
L.オルチ/J.D.バサリ/A.ペレレ
インシュリンは,DNAから作られた前駆体が,細胞内の粗面小胞体,ゴルジ装置,分泌顆粒を経るに
したがって,でき上がっていく。
P64(別冊94)「アモルファス半導体超格子」
広瀬全孝
不規則な原子配列をもつアモルファス半導体を規則正しく積層して超格子構造を作ると,まったく
新しい特性を引き出すことができる。
P75「探査機ジオットが観測したハレー彗星」
H.バルジガー/H.フェヒティヒ/J.ガイス
『ジオット』を初めとした,6機のハレー彗星探査機団が2年前に収集したデータの解析が進み,
彗星の詳しい正体が解明され始めた。
P84「プラズマによる材料のコーティング」
H.ハーマン
セラミックスや金属の粉末を高温プラズマで溶融して吹きつけると,耐食性,耐熱性,耐摩耗性に
優れた被膜を形成することができる。
P92「一般市民をも巻きこむ軍事施設への核攻撃」
F.N.フォン・ヒッペル/B.G.レビ/T.A.ポストーン/W.H.ドハティ
米ソのどちらかが,軍事施設だけを狙った核攻撃を行った場合,約3000万人の一般市民が巻き添え
を食って死亡することがわかった。
サイエンス1988年12月号
P9「エイズ研究の現状1988年」
R.C.ギャロ/L.モンタニエ
ウイルス発見者2人のはじめての共同執筆でエイズの出現から,ウイルスの発見過程,治療薬や
ワクチン開発の可能性までを解説する。
P20「エイズウイルスの分子生物学」
W.A.ヘイゼルチン/F.ウォン=スタール
エイズウイルスは体内で激しく増殖するが,潜伏したり穏やかに複製する時期もある。
この違いは3つの調節遺伝子の相互作用による。
P32「エイズウイルスの起源」
M.エセックス/P.J.カンキ
ヒトとサルのエイズウイルスは共通の祖先から進化してきたようであり,両者の起源に
関する知識は治療法やワクチンの開発に役立つ。
P54「米国のエイズの実情」
W.L.ヘイワード/J.W.カラン
米国のエイズ患者は1992年には,約37万人になると見られている。しかし,エイズ対策は
その感染経験を把握し,避けることしかない。
P64「世界のエイズの実情」
J.M.マン/J.チン/P.ピオト/T.クイン
全世界に,エイズがどの程度広まっているかは,正確にはわからない。WHOでは,これまでの
患者数は25万人を超えると推定している。
P74「HIV感染症の臨床医学」
R.R.レッドフィールド/D.S.バーク
エイズはHIV感染症として全体的にとらえるべきで,できるだけ早期にウイルスを検出する
ことが,患者に延命をもたらすカギになる。
P88「HIVの細胞への感染」
J.N.ウェーバー/R.A.ワイス
HIVの細胞への感染については,エンベロープ・タンパク質gp120が細胞表面のCD4分子と
結合する第1段階だけしかわかっていない。
P96「エイズ治療薬の開発」
R.ヤーショアン/満屋裕明/S.ブローダー
エイズの原因であるHIVの,増殖サイクルの仕組みがわかってきた。その中の弱点を集中的に
攻撃する薬剤の開発が進められている。
P110「エイズワクチンの開発」
T.J.マシューズ/D.P.ボロネシー
ワクチンの開発には,このウイルスがきわめて変異しやすいことなど,数々の問題点があるが,
世界中で不断の努力が続けられている。
P120「社会問題としてのエイズ」
H.V.ファインバーグ
20世紀後半になって突然大流行しはじめたエイズは,私たち人類の隠された弱点を暴き出し,
社会の多くの分野に影響を及ぼしている。
P129「日本のエイズの実情」
西岡久壽彌
日本はエイズ患者・感染症の数こそ少ないがB型肝炎対策などの経験をいかした,個人と社会を
防衛する積極的対策をとるべきである。