※「日経サイエンス」の1990年9月以前の誌名は「サイエンス」です。
※各項目は,掲載ページ,論文名,著者名,内容の要約の順に並んでいます。
サイエンス1984年1月号
P12(別冊75)「誇張されすぎているソ連の先制核攻撃力」
M.バン/K.ツィピス
先制核攻撃の効果を評価する場合,攻撃側からみた不確定性を明確に考慮する必要がある。
P24(別冊94)「未来の半導体“超格子”」
G.H.デーラー
2種類の半導体材料を交互に積み重ねることにより,優れた性質をもつ半導体が生まれた。
P34「激しく活動する銀河ケンタウルス座A」
J.O.バーンズ/R.M.プライス
ケンタウルス座Aなどの活動銀河は,通常の銀河の100万倍ものエネルギーを放射している。
P58(別冊90)「遺伝子レベルの解明が進む発ガン機構」
R.A.ワインバーグ
正常な遺伝子を狂暴な腫瘍遺伝子へと変身させるいくつかの仕組みが明らかになってきた。
P82(別冊70)「画期的なX線写真システム」
山田達哉/高野正雄/加藤久豊/宮原諄二
新型の感光材とデジタル画像処理を用いると従来の数十分の1の線量でX線写真がとれる。
P92「長距離大量輸送に有望な石炭パイプライン」
E.J.ワスプ
遠く離れた炭鉱と発電所をパイプラインで結ぶ大規模な石炭輸送計画が米国で進んでいる。
P102「有害な種子を食べて育つマメゾウムシ」
G.A.ローゼンタール
マメ科の植物が合成する猛毒なアミノ酸が,マメゾウムシでは重要な窒素源となっている。
P112「クラカタウの大噴火」
P.フランシス/S.セルフ
クラカタウ島は100年前に大噴火を起こしたが,その噴火活動の全容がはっきりしてきた。
サイエンス1984年2月号
P8(別冊90)「ヒト白血病をひき起こすウイルス」
日沼頼夫
日本の南西地方に多い成人T細胞白血病の原因は,レトロウイルスであることがわかった。
P20「未来の“空気力学的”自転車」
A.C.グロス/C.R.カイル/D.J.マレウィッキ
空気力学に十分な配慮をして設計した自転車は,時速100kmの高速を記録した。
P30(別冊76)「木星の月イオの火山」
T.V.ジョンソン/L.A.ソーダブロム
木星のガリレオ衛星の1つであるイオは,惑星系の中で最も火山活動の活発な天体である。
P56(別冊71)「DNA二重らせんの立体構造」
R.E.ディッカーソン
人工合成したDNAの単結晶X線回析により,らせん構造の細部の様子が明らかになった。
P74「量子重力理論」
B.S.デウィット
重力を量子力学的にとらえると,空間と時間の幾何学が連続的にゆらぐことになってくる。
P90「オオヤマネコの生態にみる獲物の転換」
A.T.バージェラッド
人為的に持ち込まれたウサギのために,ニューファンドランド島の生態系は大きく乱れた。
P101「錯視図形と視覚のしくみ」
D.D.ホフマン
網膜像から推論を組み立てるとき,視覚系はある種の“規則性”を利用することが判明した。
P110「最新鋭の砕氷船」
J.D.ハーブロン
砕氷船は高緯度地域での海上輸送の主役であり,氷と闘うための数々の装備をもっている。
サイエンス1984年3月号
P18「エルチチョンの噴火とその影響」
M.R.ランビノ/S.セルフ
このメキシコの火山の噴火は,北半球の気温低下などさまざまな異常気象を引き起こした。
P30(別冊71,94)「リボソーム合成の調節機構」
野村真康
大腸菌のリボソームの構成成分は,2つの調節機構の働きによって過不足なく合成される。
P46「重い原子核の高エネルギー衝突」
W.C.マクハリス/J.O.ラスムッセン
クォーク理論や宇宙論と深い関係をもつ“アノマロン”の奇妙な実体がはっきりしてきた。
P64(別冊72)「幻の物質と宇宙論」
佐藤文隆
光や電波では見えない“幻の物質”が,宇宙の構造や進化を明らかにするカギをにぎっている。
P78「気球から始まった近代化学」
A.F.スコット
近代化学は,約200年前に人間が気球で空を自由に飛ぼうとしたことから大きく発展した。
P90「球の充填問題」
N.J.A.スローン
球をできるだけ多く詰め込む純粋に数学的な問題が,群論や情報科学で重要な役を果たす。
P104「単為生殖をするトカゲ」
C.J.コール
米国南西部や中南米にすむムチオトカゲは,脊椎動物では珍しい単為生殖を行なっている。
P112「イネ」
M.S.スワミナサン
イネには約12万の品種があり,現在も病虫害に強く収量の多い新品種の開発が進んでいる。
サイエンス1984年4月号
P20「焼き畑農業の生態学」
久馬一剛
タイの試験地での研究から,焼き畑は熱帯の環境に適した面をもっていることがわかった。
P32「極低温気体の分子スペクトル」
D.H.レビ
液化温度よりもはるかに低温でスペクトルを調べると,分子の詳しい性質がわかってくる。
P42「膜タンパク質の立体構造」
N.アンウィン/R.ヘンダーソン
最新の電子顕微鏡技術によって,生体膜にあるタンパク質の立体構造が解明されつつある。
84.05.112(別冊75
核兵器の“非・先制使用”政策を検討する
K.ゴットフリード/H.W.ケンドール/J.M.リー
“非・先制使用”政策をとれば,ヨーロッパの安全保障を実質的に強化することができる。
P122「古代メソポタミアの数と計量体系」
J.フリーベリ
最古の粘土板刻文の解読が進み,当時の数や計量体系がどのようなものだったか判明した。
P132「細胞核をもつ最古の生物」
G.ビダル
真核生物の始まりと見られる単細胞の浮遊生物の化石が,14億年前の地層から発見された。
P144「氷河期はなぜ起こるか」
C.コーベイ
氷河期は,地軸の傾きと公転軌道の小さな変動により周期的に起こることがわかってきた。
P156「タイプ速度の秘密」
T.A.ソルトハウス
タイピストは,同時にいくつかの過程を重複して処理しているのでタイプを速く打てる。
P164「単独生活をするハナバチ」
S.W.T.バトラ
社会組織を形成しない単独性のハナバチ類は,さまざまな植物の花粉媒介に役立っている。
サイエンス1984年5月号
P18「筋肉が出す音」
G.オスター
筋肉の音の研究は,動物のコミュニケーションの解明や,心臓病の診断にも役立っている。
P26(別冊98)「X線パルサー」
早川幸男/長瀬文昭
この天体のX線パルスの周期変動を観測すると,中性子星で何が起こっているかがわかる。
P38「生得的行動を支配する遺伝子」
R.H.シェラー/R.アクセル
アメフラシの産卵行動を支配する遺伝子が,組み換えDNAの手法により明らかになった。
P56「ハウスマウスの驚くべき適応力」
F.H.ブロンソン
この小さな哺乳類は,人家をはじめ砂漠や炭鉱,冷凍食品庫にまで住みつくことができる。
P66「材料科学の夢“励起子物質”」
J.P.ウォルフ/A.ミスロビッツ
光によって半導体の中につくられるこの物質は,基礎科学や応用分野で広い可能性をもつ。
P80「ヒトはどのように進化したか」
D.ピルビーム
この5年間に,旧世界ザルから類人猿,さらにヒトへの進化の過程が詳しくわかってきた。
P98「激しい動きをみせる深海流」
C.D.ホリスター/A.R.M.ノウェル/P.A.ジャマース
これまで静かな場所と考えられてきた深海で,激しい嵐が吹き荒れていることがわかった。
サイエンス1984年6月号
P08.(別冊78)「動物体の形成に働く細胞接着分子」
G.M.エーデルマン
細胞接着分子は,1個の受精卵から動物の体がつくられていく過程で重要な役割を演じる。
P22「分子雲からの星の誕生と銀河の構造」
N.スコビル/J.S.ヤング
星を生み出す分子雲の分布を電波で観測し,銀河の多様性を説明する手がかりが得られた。
P36「人間の視覚と機械の視覚」
T.ポッジオ
両眼立体視という人間の視覚能力が,コンピューターのソフトウエアで初めて実現された。
P70「ダイヤモンド・アンビル型超高圧装置」
A.ジャヤラマン
片手で持ち運び可能なこの装置は170万気圧まで発生でき,物性研究に革命をもたらした。
P84「トルネード」
J.T.スノー
破壊的な力をもつ強大な竜巻のしくみが,ドップラーレーダーなどによってわかってきた。
P98「ガンのレーザー光化学治療」
加藤大典
腫瘍親和性の高い化学物質を投与し,アルゴンレーザー光を照射するとガンを破壊できる。
P112「恐竜の巣造りと子育て」
J.R.ホーナー
米国北西部で出土した多数の卵や幼体の化石から,恐竜の営巣行動が明らかになってきた。
P122「母乳保育と避妊効果」
R.V.ショート
母乳保育は,乳児の健全な発育はもちろん,避妊効果によって人口問題にも役立つ。
サイエンス1984年7月号
P8「経済性の高いミニミル製鉄所」
J.R.ミラー
鉄鋼大手が不況に悩む一方で,スクラップを原料とする小規模製鉄所は活況を呈している。
P18「電荷移動錯体」
井口洋夫
電子を出しやすい分子と受け取りやすい分子の間の特殊な結合は,新しい材料を生み出す。
P30「大洋の誕生と海洋断裂帯」
E.ボナッティ/K.クレーン
大洋の底を長々と横切る何本もの谷と高まりは,海洋底拡大に伴う壮大なドラマを物語る。
P54「チューリング機械」
J.E.ホップクロフト
英国の数学者チューリングが考案したこの想像上の機械は,計算可能性の限界を明示する。
P67「寄生虫が動物の行動を変える」
J.ムーア
ダンゴムシに寄生する鉤(こう)頭虫は,宿主の行動を変化させて鳥に食われやすくする。
P78(別冊89)「インフレーション宇宙」
A.H.グース/P.J.スタインハート
私たちが観測できる宇宙は,ビッグバンの直後に爆発的に膨張した宇宙の一部にすぎない。
P98「“はしか”はどのように広がるか」
A.クリフ/P.ハゲット
離島でのはしかの流行の記録は,伝染病の広がり方を分析する上で貴重な手がかりとなる。
P108(別冊78)「細胞はどうやって特定の物質を取り込むか」
A.ドートリー・バルサ/H.F.ローディッシュ
レセプター(受容体)を介して,細胞が高分子物質を取り込む仕組みが明らかになってきた。
サイエンス1984年8月号
P12(別冊75)「対衛星兵器の開発は禁止すべきか」
R.L.ガーウイン/K.ゴットフリード/D.L.ハフナー
人工衛星を破壊する対衛星兵器は世界平和を脅かすので,その開発は条約で禁止すべきだ。
P26「キクイムシの音響信号と化学信号」
L.C.ライカー
北米産の松の害虫の行動に,化学物質と虫の鳴き声が重要な役割を果たすことがわかった。
P36「古代アンデスの金めっき技術」
H.レヒトマン
アンデスの金細工師は,銅に金や銀をめっきして卑金属を貴金属に見せる技をもっていた。
P54「多面体を折りたたむ」
梶川泰司
辺と自由自在に動くジョイントで多面体模型を作ると,不思議な幾何学の世界が現われる。
P66「トウモロコシの“動く遺伝子”」
N.R.フェドロフ
マクリントックによって発見された動く遺伝子は,遺伝子発現に大きな影響を与えている。
P82「星間塵のライフサイクル」
J.M.グリーンバーグ
星間空間中の微粒子は2重,3重の複雑な内部構造をもち,太ったりやせたりを繰り返す。
P102「寒冷化が海洋生物を絶滅させた」
S.M.スタンリー
限られた温度環境だけに適応していた海洋生物が,過去7億年間にたびたび一斉絶滅した。
P114「原子の左右非対称性を検出する」
M-A.ブーシア/L.ポティエ
原子を使ったきわめて高精度の実験により,弱い力が及ぼすパリティの破れが検出された。
サイエンス1984年9月号
P12「精神障害に悩む米国の浮浪者たち」
E.L.バサック
路頭にまよい,緊急保護施設に群がる浮浪者の多くは,精神障害者であることがわかった。
P20「3次元多様体と宇宙の構造」
W.P.サーストン/J.R.ウィークス
位相幾何学の研究が進み,宇宙の構造と関連した3次元多様体を解明する糸口がつかめた。
P34「多言語ワードプロセッサーの開発」
J.D.ベッカー
1台のワードプロセッサーで,アラビア語などの複雑な言語も同時に扱えるようになった。
P64(別冊91)「ガンの“ミサイル療法”をめざして」
R.J.コリアー/D.A.カプラン
正常細胞を傷つけずに,ガン細胞だけを効率よく殺してしまう治療法の研究が進んでいる。
P78「海底火山」
R.ヘキニアン
潜水艇などで見た地殻生成の現場は,溶岩と海水とが作り上げた異様な地形だらけだった。
P90「菌類に感染するウイルス」
牛山六男
キノコやカビなどの菌類に感染するウイルスの多くは,二本鎖RNAを遺伝物質としてもつ。
84.10.102
視覚をもつロボット
B.K.P.ホーン/池内克史
容器の中の一番上の部品を“見て”,それだけをつかむことのできるシステムが開発された。
P100「特異な連星“共生星”」
M.カファトス/A.G.ミカリチアノス
この天体の奇妙なスペクトルは,特定の連星で起こっている物質移動や加熱などを物語る。
P114「魚のデザインと泳ぎ方」
P.W.ウェップ
魚の泳ぎ方を回析したところ,魚の体形と泳ぎ方の間に密接の関連のあることがわかった。
サイエンス1984年10月号
P12(別冊75)「核戦争は気候をどう変えるか」
R.P.ターコ/O.B.ツーン/T.P.アッカーマン
戦争が起こると地上に厳しい“核の冬”が訪れ,多くの生物が絶滅の危機にひんすることがわかった。
P26「超高圧に挑む“二段式軽ガス銃”」
澤岡昭
超高圧を再現するために開発した装置“二段式軽ガス銃”を使って,新物質を合成する研究が進んでいる。
P38「植物の光ファイバー伝送」
D.F.マンドリ/W.R.ブリッグス
植物の芽生えの組織は,光ファイバーのケーブルのように,4~5�も離れた部分まで光を伝送できる。
P62「大マゼラン星雲の異常に明るい天体」
J.S.マチス/B.D.サベイジ/J.P.カシネリ
小銀河である大マゼラン星雲中には,太陽より5000万倍も明るい天体が存在する。
P78(別冊90)「ガンタンパク質の働き」
T.ハンター
ガン遺伝子は,正常な遺伝子の一部が変化したもので,通常は,生体に重要なタンパク質を暗号化している。
P92「微生物が化石燃料をつくった」
G.オリソン/P.アルブレヒト/M.ローマー
石炭や石油などに含まれる有機物質の大部分は,細菌や菌類といった微生物の脂質であることがわかった。
P114「ドングリキツツキの共同繁殖」
P.B.ステイシー/W.D.ケーニッグ
ドングリキツツキは繁殖するブリーダーが産んだ卵を繁殖しないヘルパーと共同で育てる。
サイエンス1984年11月号
P14(別冊74)「コンピューター・ソフトウェア」
A.ケイ
利用者の頭の中に思い描く“幻想”を利用した新しい対話型ソフトウエアが生まれた。
P24(別冊74)「データ構造とアルゴリズム」
N.ビルト
データ構造とアルゴリズムは,プログラムが意図した通りに働くかどうかを確かめる重要なカギを握っている。
P36(別冊74)「プログラミング言語」
L.G.テスラー
非手続き的言語やオブジェクト指向言語,並列処理言語といった言語が,人工知能との関連で注目を集めている。
P54(別冊74)「オペレーティング・システム」
P.J.デニング/R.L.ブラウン
このシステムは,関係する概念を抽象化のレベルごとに分けた階層構造に基づいて組み立てられる。
P66(別冊74)「自然言語処理」
T.ウィノグラード
私たちが日常的に使っている自然言語を,コンピューターに処理されることは,きわめて難しい。
P82(別冊74)「コンピューター・グラフィックス」
A.バン・ダム
CADや数学モデルなど,対話型コンピューター・グラフィックスが普及してきた。
P100(別冊74)「情報管理ソフトウェア」
M.レスク
メモリー内の膨大な情報を利用するには,データを体系化し,効率良く検索するソフトウエアが不可欠である。
P112(別冊74)「プロセス制御ソフトウェア」
A.Z.スペクター
列車の運行,電力の配分,室温の管理など,コンピューターはプロセスの制御にも広く使われている。
P124(別冊74)「科学と数学のソフトウェア」
S.ウォルフラム
コンピューターを使った“計算”は,物理や数学のシステム(系)を探る新しい手段になった。
P138(別冊74)「人工知能システム」
D.B.レナート
人間がそなえている創造のための知的な道具を,コンピューターの中に実現する試みが続けられている。
サイエンス1984年12月号
P12(別冊75)「“スターウォーズ”計画は核の脅威を減らすか」
H.A.ベーテ/R.L.ガーウィン/K.ゴットフリード/H. W. ケンドール
ソ連の弾道ミサイルを宇宙から撃ち落とそうという米国の計画は,効果がないうえ,軍備拡大をまねく。
P28「アジアの栽培稲の起源と伝播」
渡部忠世
遺跡のれんがに含まれる籾(もみ)殻を手掛かりに,雲南とアッサムを結ぶ帯を起源地とする新説が生まれた。
P40「地震波トモグラフィーでマントルを探る」
D.L.アンダーソン/A.M.ジュオンスキー
多数の地震波データを解析することによって,マントル内の密度や温度の分布を3次元的に描き出せる。
P60「ぎょしゃ座イプシロン星」
M.ハック
この天体は“食連星”であり,主星を隠す伴星は,塵やガスの雲の中にある高温の若い星である。
P70(別冊78)「核酸をもたない生命体“プリオン”」
S.B.ブルシナー
中枢神経系を浸す難病の原因となるこの感染症の物質は単一のタンパク質からなり,DNAやRNAを含まない。
P86「水晶宮」
F.T.キールステット
1851年,第1回万国博覧会のために,水晶宮はプレハブ工法でわずか17週間で建てられた。
P100「ソ連の金属連続製造システム」
A.I.ツェリコフ
原料の鉱石から最終製品まで,途切れることなく製造していくシステムが開発された。
P110「軟骨」
A.I.カブラン
軟骨は,骨形成の足場となったり,骨同士の動きを滑らかにするなど,生体で重要な役割を果たしている。