SCOPE & ADVANCE

味を変える食器〜日経サイエンス2023年6月号より

甘味や塩味を操るハイテク食器の数々

糖分や塩分の多い食べ物は健康によくない場合があるが,多くの人にとってそうした味つけはあまりにおいしいので減らせない。だが,これらの化合物を実際には摂取せずに,何らかの方法でその味を楽しめたらどうだろう? 最近ある学生チームが,味蕾を刺激して甘味を感じさせる構造を備えたスプーンを設計した。カロリーや化学物質を加えずに,甘味を生じる。この取り組みは,微弱な電流で塩味を増幅する箸など,味を強める食器に関する以前の研究に続くものだ。

学部生と大学院生の5人からなるこのチームは,糖尿病などの人々のためにこの新しいスプーンを開発した。米国人の11.3%が糖尿病を患っており,その多くは糖類の摂取を制限しなければならない。



「シュガーウェア」と名づけられたこのスプーンは,下側にこぶのような突起がいくつかあり,舌に接する表面積を従来品よりも広くするとともに,その表面を「リガンド」と呼ぶ分子の層でコーティングしてある。味蕾細胞の表面で通常は砂糖の分子や人工甘味料と反応している受容体タンパク質とこれらのリガンドが結合し,一連の神経信号を引き起こして,脳が甘味を感じるようにする。こうして,食事をしている人は「砂糖や人工甘味料を摂取しなくても甘味受容体を刺激できる」と,同チームはオンラインで開催された教育競技会「2022バイオデザイン・スプリント」で説明した。シュガーウェアは学生部門で第2位を獲得した。(続く)



続きは現在発売中の2023年6月号誌面でどうぞ。

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