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記憶の脳波〜日経サイエンス2022年12月号より

睡眠時の脳波が個別の学習と結びつけられた

睡眠中の脳に生じる「睡眠紡錘波」という特徴的な脳波は長い間,最近に形成された記憶全般の強化と関連づけられてきた。新たな研究は,この電気活動の高まりを覚醒時の個別の学習行動と結びつけることに成功している。

睡眠紡錘波は脳波図上に鋭いスパイクの集団として表れる突発的な電気活動で,それ以外の脳活動が全般に低下している睡眠の初期段階に生じる傾向がある。Current Biology誌に発表された研究は,被験者が覚醒時に課題を学習する際に活性化していた特定の脳領域に睡眠紡錘波が顕著に生じることを示した。そうした睡眠紡錘波が強いほど,眠りから覚めた後に学習内容をよく覚えている関係が見て取れた。

学習中の脳活動を計測して関連を裏づけ
「学習に使われた脳領域と睡眠中の紡錘波活動をそれぞれの被験者で関連づけることができた」と今回の研究論文の上席著者となった英オックスフォード大学の認知神経科学者スタレシーナ(Bernhard Staresina)はいう。スタレシーナと英バーミンガム大学のペツカ(Marit Petzka)らは,各被験者に円のなかに表示された画像の配置を覚えてもらう実験をした。同チームが「記憶アリーナ」と名づけた課題だ。被験者がこの課題にあたっている間,頭につけた電極で脳活動を計測した。被験者はその後2時間の仮眠を取り,新たな画像セットを記憶する課題に挑んだ。そしてその終了後に,仮眠前に学習した元の画像の配列を再現するよう求められた。

被験者の仮眠中,以前の記憶作業の際に活性化していた特定の脳領域で強い睡眠紡錘波が記録され,それらの脳領域は被験者ごとに異なっていた。これは,紡錘波の出現パターンが脳の決まった場所に“組み込まれている”のではなく,当人の思考パターンと結びついていることを示唆している。チームはまた,記憶課題に使われた脳領域で強い睡眠紡錘波が生じていた被験者のほうが,仮眠後に画像の位置を再現する課題の成績がよいことを見いだした。(続く)


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