SCOPE & ADVANCE

渇いた空気〜日経サイエンス2022年11月号より

米国の特に西部で「蒸発需要」が増大し,干ばつと山火事を悪化させている

干ばつになるのは単に雨や雪が少ないためだと考えられることが多い。だが,大気が地面から水分を引き出す能力を示す「蒸発需要」も大きな要因だ。米国の大部分で大気の乾燥が過去40年にわたって大きく進んでいることが新たな研究でわかった。Journal of Hydrometeorology誌に報告。

蒸発需要は「洗濯指数」のようなものだと,この研究には加わっていないネバダ州の気候学者マカフィー(Stephanie McAfee)はいう。洗濯物を戸外に干す場合,「暖かく,晴れていて,風があり,乾燥している日に最も速くよく乾くのは知っての通りだ」と説明する。この指数は温暖化に伴って単にじわじわと上がるのではなく指数関数的に急上昇するのだと,ネバダ州リノにある砂漠研究所の生態水文学者で研究論文の筆頭著者となったアルバーノ(Christine Albano)はいう。「気温が1度か2度上がるだけで,蒸発需要はそれをはるかに上回るペースで高まる」。


James O’Neil/Getty Imagess

40年前に比べ約10%増
アルバーノらは大気の“渇き”がどう変わってきたかを測るため,蒸発需要に影響を及ぼす気温と風速,太陽放射,湿度を含む1980年から2020年までの5つのデータセットを調べた。この結果,米国で蒸発需要が最も大きく増えたのは南西部の諸州で,これに対し東部では湿度の上昇が気温の高まりを相殺していることを発見した。

南西部のリオ・グランデ川流域の場合,2020年の年間大気蒸発需要は1980年に比べ135~235mmの増加となった(率にして8~15%増)。これだけの水が,農作物をうるおすことも帯水層を満たすこともなく,蒸発したのだ(蒸発需要が40年前の10%増ということは,同様に管理された同じ農作物で40年前と同じ収穫を得るために10%多くの水が必要になることを意味する)。

今回の研究は気温の上昇や湿度の低下に加え,風速の高まりと太陽放射の増加にも注目した。乾燥地域では,気温の上昇に伴って湿度が下がる。太陽光と風が変化している理由はまだはっきりわかっていないとアルバーノはいう。(続く)

続きは現在発売中の2022年11月号誌面でどうぞ。

サイト内の関連記事を読む