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タマムシの目くらまし防御〜日経サイエンス2022年11月号より

玉虫色の変化は身を隠すのと脅しの両方に働いている

虫にとって,キラキラ玉虫色に輝く殻を備えることは,腹をすかせた鳥から逃れるための最善の進化戦略ではないように思える。だが,見る角度によって色が変わるこの玉虫色が木漏れ日の差す葉に止まったタマムシにはカムフラージュになることが近年の研究で示された。そしてAnimal Behavior誌に発表された新たな研究によると,玉虫色には別の防御的な働きがあるらしい。鳥は生まれつき,こうした色の変化を警戒するようなのだ。

単なる光沢や鮮やかな色ではなく玉虫色が捕食者を抑止することを示したのはこれが初めてだと研究論文の著者たちはいう。「色が変わるという玉虫色の最大の特徴こそが,この防御機能に重要なのだ」と,論文の主執筆者となった英ブリストル大学の研究者キェルンスモ(Karin Kjernsmo)はいう。

光沢ありとつや消しの殻で比較実験
キェルンスモらは玉虫色の甲虫の色の変化に鳥がどう反応するかを調べるため,玉虫色に輝いて色が変わるミドリフトタマムシ(Sternocera aequisignata)の甲殻と,光沢ありと光沢なしの緑に彩色した人工の殻,つや消しニスを塗った玉虫色の甲殻を用意し,それぞれにゴミムシダマシの幼虫をつけて,生後1日のヒヨコの前に並べた。

ヒヨコは光沢のない緑色の殻の下にある餌を平らげたが,光沢のある殻と,変色する玉虫色の殻(光沢ありとつや消しの両方)は敬遠した。鳥が光沢を避けることは以前の研究で示されていたが,色の変化が明らかに避けられることを報告した例はこれが初めてだという。

鳥が光沢を避けることを示した以前の研究に加わったが今回の研究には参加していないヘルシンキ大学の生物学者マッペス(Johanna Mappes)は,キェルンスモのチームが殻の風合いを変えて比較した手法を絶賛する。「光沢なしの玉虫色を設定したのが特に素晴らしい。実に天才的だ」。(続く)

続きは現在発売中の2022年11月号誌面でどうぞ。

 

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