中高生が学ぶ サイエンス講義

三菱電機、人と機械の融合技術を紹介 〜高槻中高生、遠隔操作ロボットを体験

高槻中学校・高等学校(大阪府高槻市)で7月、人と機械の遠隔融合を学ぶ特別講義が開かれた。三菱電機先端技術総合研究所メカトロニクス技術部の春名正樹博士が中学生と高校生に、人間の触覚を再現したロボットの研究開発を紹介。校内にロボットアームを持ち込み、生徒は近未来で実現するロボットの遠隔操作を体験した。

期待高まる遠隔操作ロボット
春名氏はまず遠隔操作のロボットが危険な場所や宇宙空間など様々な分野で活躍が期待されていると説明。エンターテインメント分野でもアバターや分身ロボットとしても応用が広がっていると魅力を伝えた。

ロボットの応用例として、春名氏が開発を手掛けた天文台の事例を挙げた。国立天文台などが参加する国際チームが米国ハワイ島のマウナケア山頂で建設を進める天文台で、138億年前の光をとらえる望遠鏡のメンテナンスにロボットを導入した。天文台には492枚の鏡を組み合わせた口径約30メートルの主鏡が設置される予定だが、一枚ずつ人手でメンテナンスするのは時間がかかる。ロボットの導入によって作業時間が大幅に短縮できることを実証した。海外の研究者と共同で実現した「達成感は最高でした」と研究開発の楽しさを語った。

遠隔操作ロボットの研究は、人間がどんな認知能力を持つかを知るのにも役立つという。人間は周りの人たちとどうコミュニケーションするのか。人とロボットが情報交換をうまくするにはどうすべきなのか。ロボットを知ることは人間を知ることにもなる。

そんな人間の五感のうち、春名氏が最も力を入れて研究しているのは触覚だ。触覚の研究は「ハプティックス」と呼ばれる。遠隔操作技術で最も成功した外科手術ロボット「ダヴィンチ」の実例に触れながら、人間は直接触ったという感覚がなくても映像を見るだけで触れたように感じる「錯覚」があると指摘。

脳波を使って操作性を調べたところ、視覚だけでも遠隔操作がスムーズにできることがわかってきた。錯覚を巧みに使って遠隔操作する技術を「ビジュアル・ハプティックス」と呼び、「力を目で感じる」技術の開発を目指しているとした。

研究で大事なのは諦めないこと
研究者としての大切な心構えも伝えた。春名氏は世界のロボット研究で先頭を走る米マサチューセッツ工科大学(MIT)の留学経験がある。MITで開発が進む人型や犬型のロボットが突然止まったり転倒したりする映像を見せながら、「MITでは最先端技術が使われている印象はあるが、ロボットの研究開発は失敗の連続。大事なのは諦めないことだ」と研究者としての心構えを強調した。

今年11月に米国カリフォルニアで開かれる優勝賞金10億円のロボット大会決勝戦に選抜された春名氏は「優勝を勝ち取りたい」と意気込みを語った。

講演の終了後には、人と機械の遠隔融合を目指したロボットアームの操作を体験した。生徒が等身大の巨大な映像の前で手を動かすと、その動きがカメラを通じてロボットに伝わった。手を空中にかざすだけで、まるで魔法使いのように離れた場所のロボットが思い通りに動く様子に、生徒は歓声を上げながら未来の最先端技術を体感した。
 生徒からは講義を通じて「ロボットの研究開発に憧れを持ちました」「ロボットと融合するには気持ちもつながっているのが大事だと思いました」などの感想が聞かれた。■


(日経サイエンス2022年10月号に掲載)
※所属・肩書きは掲載当時

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協力:日経サイエンス 日本経済新聞社