SCOPE & ADVANCE

リチウム金属電池を再生する充電法〜日経サイエンス2022年7月号より

劣化を修復して寿命を延ばすことが可能

 

電気自動車を1回の充電でできるだけ長く走らせるには,電池に相当な力がなければならない。選択肢のひとつは,リチウムという軽い元素を片方の電極に用いた「リチウム金属電池」だろう。同じ電極がグラファイト(黒鉛)でできた「リチウムイオン電池」はおなじみだが,これよりも蓄電容量が大きくなる。リチウム金属電池は同サイズのリチウムイオン電池よりも多くのエネルギーを蓄えられるものの,劣化するのも速く,充放電の回数が限られる。だが最近,この問題を克服する新たな充電方法が見つかった。劣化した材料を実質的に修復し,電池の寿命を大幅に延ばせる。

 

リチウムをベースとする電池は充電・放電の際に,プラスの正極(カソード)とマイナスの負極(アノード)の間をリチウムイオンが行き来する。だがしだいに,このリチウム活物質の小片が負極の本体にくっつかなくなる。この失われたリチウムは電池内部で小さな塊となって“島”を形成し,ほとんどの研究者はこの島を不活性とみなしてきた。これに対しスタンフォード大学の研究チームは今回,これらの分離したリチウムが依然として電気的に反応し,充放電に伴って物理的に移動しうることを発見してNature誌に報告した。

 

フル充電の直後に少しだけ放電

同チームはこれらの島がある程度は動いて,負極との間で電気的接続を再び確立しうることを見いだした。そして,電池をフル充電した直後に少しだけ放電することによって,この物質を元の状態にうまくまとめられることに気づいた。「分離したリチウムを負極に向かって成長させ,電気的接続を復活させるのだ」と研究論文の筆頭著者となったスタンフォード大学の材料科学者リウ(Fang Liu)はいう。試験用のリチウム金属電池をこの手法で充電したところ,充電可能な回数が増え,標準的な方法で充電した電池に比べて寿命が29%延びた。(続く)

 

続きは現在発売中の2022年7月号誌面でどうぞ。

 

サイト内の関連記事を読む