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サメ肌でスクラッチ〜日経サイエンス2022年5月号より

魚たちが自ら進んで体をこすりつけている

 

ウィリアムズ(Lacey Williams)が南アフリカ共和国のプレッテンバーグ・ベイで1頭のホホジロザメを水中ドローンで追跡していたところ,レアフィッシュ(アジの仲間)の群れがこの捕食者を避けるのではなく,積極的に追いかけ始めた。そして体をサメの尾にこすりつけ始めた。まるで軽石で皮膚をこそげ落としているようだ。「これには心底驚いた」とマイアミ大学の大学院生として海洋生物学を専攻しているウィリアムズはいう。

 

サメを含む多くの海洋生物が砂や岩に体をこすりつける行動が,過去の多数の研究によって確認されている。おそらく寄生虫や細菌を除去するためだと考えられる。だが,他の魚がサメの紙やすりのような皮膚に体をこすりつける行動は,不確かな事例報告はあったものの,きちんと調べられた例はなかった。



過去の記録映像などから再発見

ウィリアムズは同じ大学院生のアンステット(Alexandra Anstett)とともに,こうしたこすりつけ行動を記録している可能性のある資料をすべて集めた。水中ドローンで撮影したビデオや写真,ダイバーが撮影したビデオ,不確かな事例報告などだ。そして8種類のサメに12種の魚と1種のサメが体をこすりつけている合計47件の事例を見つけた(サメどうしの例はクロトガリザメがジンベエザメに体をこすりつけているもの)。場所はマサチューセッツからメキシコ,ガラパゴスまで3つの海にわたる13カ所だ。Ecology誌に発表されたこの発見は,魚がサメに体をこすりつける行為が以前に考えられていたよりも広範に行われていることを示している。「これほど多くの種にわたって進化してきた行動なのだから,何らかの生態学的な機能を果たしているに違いない」とウィリアムズはいう。

 

こすりつけ行動の持続時間はたったの8秒から5分以上に及ぶものまで様々だった。また1匹だけが単独で行う例も,100匹以上の群れが集団で行う場合もあった。多くのサメは自分のサメ肌が“孫の手”代わりに使われることを気にしていない様子だが,一部のホホジロザメは体をくねらせたり錐もみ潜水したりするなど,他の魚を振り落とそうとしているような行動を取った。驚いたことに,サメがこれらの魚を食べようとする行動は観察されなかった。(続く)

 

続きは現在発売中の2022年5月号誌面でどうぞ。

 

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