中高生が学ぶ サイエンス講義

日立システムズが特別講義 〜お茶の水女子大附属高でデータ分析を解説

 様々な企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)への取り組みを加速しようとしているが、課題のひとつがデータサイエンティストの不足だ。2030年にデータサイエンティストが14万人以上不足するといった予測もあり、すでに人材の奪い合いが始まっている。

 お茶の水女子大学附属高等学校(東京都文京区)で2021年12月、「実践で学ぶ統計的データ分析」と題した特別講義が行われた。登壇したのはITサービス大手の日立システムズのエキスパートデータサイエンティスト、板井光輝氏。

 「データサイエンスは学問の“総合格闘技”で数学や統計学はもちろんのこと、物理学、化学、生物学、そして社会学や経済学、経営学といった幅広い領域の学問が必要になる。多様な課題を解決するためには、様々な学問を体系的に修得し、横断的に活用していくことが重要」と語り始めた。


基礎知識を学び、演習に挑戦
 データ分析の標準プロセスは、「課題検討とデータ収集」「データ理解とデータ整形」「数理分析」「結果検証」「成否判断」の5つからなると説明。高校1年生を対象にした今回の特別講義は、このうち「数理分析」と「結果検証」に関するものだ。ただし、「最初の課題検討を軽んじてしまうと数理分析や結果検証などすべての後工程がぶれてしまう。またデータ収集も重要で、『ゴミを入れたらゴミが出てくる』というデータ分析用語があるくらいです」と板井氏。

 講義の前半では、統計的データ分析の考え方と基本知識を学ぶ。標本平均や標準偏差などの基本統計量、間隔の取り方で情報の価値が決まるヒストグラム(度数分布図)、標本同士の線形的関係性を定量化した相関係数、有効情報の抽出……。こうした聞き慣れない用語を真剣な眼差しで聞き入る生徒たちに対して、板井氏は「聞き馴染みのない話は1割理解できたらいい」と語りかけた。

 後半の演習講座では「レジャー施設企業Y社の課題・解決」という演習に取り組んだ。

 課題は「顧客満足率の向上につながると考えられる有効情報の抽出と、その統計的根拠を挙げること」などで、アミューズメントパークが抱える課題を解決する方策案をデータ分析から科学的に検討し、妥当な解決策を提案するというもの。

 生徒4人が1組になり、顧客満足率、施設利用回数、施設内の売上高など6年分のデータを分析して課題に取り組んだ。

『勘と経験と度胸』より合理的判断
 あるグループは「飲食に注目して調べたところ、カフェは中高年の男女に人気だった。若者がカフェに行きやすいようにイベントメニューや若者向けメニューを増やすといい。そうすればレストランの混雑緩和、待ち時間を解消し別の消費を促せるのでは」と提案した。

 板井氏は最後に「数学、統計学を広く深く学んでおくと、社会課題解決の成功確率向上につながるほか、『勘と経験と度胸』に頼らない合理的な実務が実行でき、またキャリアの選択範囲が拡大する」と強調した。

 講義を受けた生徒たちから、「今まで受けた講義の中でも、かなりためになった」「エクセルに苦手意識があったが、データの扱い方への理解が深まった」「医療系の進路を考えていたが、データサイエンスもいいかなと思った」といった感想が相次いだ。  ■


(日経サイエンス2022年4月号に掲載)
※所属・肩書きは掲載当時
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協力:日経サイエンス 日本経済新聞社