地下深くの岩清水〜日経サイエンス2022年3月号より
樹木の根は岩盤にまで侵入して水分を得ている場合が多い
樹木の根が軟らかな土壌の下まで伸び,硬い岩盤に入り込むことがある。そうした事例の報告は昔からあったが,極めてまれだったため,単なる例外と見なされていた。だが2013年,水文学者のレンペ(Daniella Rempe)がカリフォルニア州北部丘陵地帯の地下を詳しく調べ,木々の根が岩盤から相当な量の水分を吸い上げていることを発見した。深部の岩盤に生じた空孔や割れ目に,地下水が浸み込んでたまっているものだ。「これがどれほどの規模の現象なのかを調べたいと考えた」とテキサス大学オースティン校のレンペ研究室にいる生態水文学者マコーミック(Erica McCormick)はいう。そこで研究チームは,樹木による岩盤地下水の利用状況を米国本土全体で地図化することにした。
同チームは2003~2017年の大量の地質学データを組み合わせ,米国の森林と灌木地のうち,木の根が届きうる深さに岩盤が存在している場所を特定した。その後,降水量と蒸発量,土壌の水分容量に関する既知のデータを用いて,循環水のうち出所が不明な水量を計算した。その分は地下深くの岩盤に由来すると考えられる。
Nature誌に発表された解析結果は,多くの植物にとって岩盤地下水は最後の頼みの綱などではないことを示している。米国内の樹木と灌木の24%以上が,降水量が平年並みの年であっても,岩盤層から水を定常的に得て渇きをいやしている。カリフォルニアやテキサスなどの暑く乾燥している州では,樹木が得る水の50%以上が岩盤に由来している。(続く)
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