中高生が学ぶ サイエンス講義

東洋紡、プラスチック社会語る 〜日比谷高生、環境課題で質疑活発

 東洋紡は2021年11月中旬、東京都立日比谷高等学校(東京・千代田)でプラスチックと環境をテーマにした特別講義を開いた。海洋プラスチック問題や地球温暖化との関係、技術開発による環境課題解決の挑戦について、参加した31人の生徒と講師との間で活発な質疑応答が繰り広げられた。

洋ごみ問題と地球温暖化
 講義前半は東洋紡の歴史などをリニューアブル・リソース事業開発部の久保田冬彦部長が説明した。明治時代に繊維業として創業し、現在は包装フィルムや自動車・電子部品、医療用など幅広いプラスチック製品を展開していると紹介。またプラスチックの製造法などの基礎知識と、同社が力を入れているリサイクル技術などの環境対策を伝えた。

 後半は同社の総合研究所で環境にやさしい材料を開発している山本佑氏が、プラスチックが引き起こす2つの環境問題を解説した。

 第1は海洋で急増する廃プラ問題。「安定性が高い素材だからこそ自然環境中に残存し続ける」と説明し、2050年には海中で魚の量よりも多くなるとの専門家の試算を紹介した。特に紫外線などで大きさが5mm以下になったマイクロプラスチックが海洋生物に取り込まれ、生態系への悪影響があると指摘した。東洋紡は海中で分解される海洋生分解性プラスチックの開発を進めている。

 第2は気候変動との関係。石油を原料とするプラスチックは、焼却すると温暖化ガスの二酸化炭素を排出する。現在の日本のリサイクルは焼却による熱回収が主流になっている。温暖化対策のためには「植物由来の原料で作るバイオマスプラスチックを採用してカーボンニュートラルにする必要がある」と説明した。

循環型社会に向けた多角的挑戦
 ただ生分解性プラスチックやバイオマスプラスチックが、すべてのプラスチック製品に代替できるわけではない。環境対策では廃プラを自然界に出さず、燃やさずに済むことが一義的に求められる。東洋紡は「廃プラを熱回収ではなく製品に再生しやすくするケミカルリサイクル技術の開発と普及にも力を入れている」と循環型社会に向けた多角的な挑戦を説明した。

 生徒からは質問が相次いだ。「環境対策でコスト高になる生分解性などの製品は普及するのか」との問いに、山本氏は「技術革新でコスト削減努力をしていく」と説明。久保田氏は「2050年といった未来を考えると、コスト増でも環境対策ができない企業は生き残ることができない。持続可能な社会のために必要なコストは、世の中もある程度許容する時代になりつつある」と補足した。

 「生分解性プラスチックなど新技術の登場がプラスチックの可能性をさらに広げるのではないか」との質問には「今まで気づいていないニーズに応えられる可能性はある。一般的に研究開発をするうえで、これまでと違う視点を持ったり、発想を転換したりすることは大切。新たな発見につながることがある」(久保田氏)と生徒たちにアドバイスをした。

 このほか海水を淡水化する逆浸透膜や医療用の神経再生誘導チューブなど東洋紡の他の製品に関する質問もあった。講義を終えた生徒からは「身の回りにあふれているプラスチックの有用性と課題を理解できた」「私も環境課題解決に向けて尽力したいと思った」「進路を考えるきっかけになった」などの感想が相次いだ。■


(日経サイエンス2022年2月号に掲載)
※所属・肩書きは掲載当時

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協力:日経サイエンス 日本経済新聞社