SCOPE & ADVANCE

マイクロプラごみ掃除機〜日経サイエンス2022年1月号より

自走式の微小粒子で吸着・分解

 

衣料繊維や飲料ボトルなどプラスチック製品のかけらが極めて小さなマイクロプラスチックとなって,世界中の大気と水,土壌に入り込んでいる。水中のマイクロプラスチックの劣化を促進する方法が最近のACS Applied Materials & Interfaces誌に報告された。細菌サイズの小さなロボットを使う。少量の過酸化水素とともに水に加えると,マイクロプラスチック粒子をつかまえて分解し始める。

 

 

“A Maze in Plastic Wastes: Autonomous Motile Photocatalytic Microrobots against Microplastics,” by Seyyed Mohsen Beladi-Mousavi et al., in ACS Applied Materials & Interfaces, Vol. 13, No. 21; June 2, 2021 (microrobot)

この金属製のマイクロロボットは四隅が尖った星形で,磁性粒子をコーティングしてある。可視光にさらされると内部の電子が周囲の水と過酸化水素からエネルギーを吸収して反応を起こし(光触媒反応というプロセス),ロボットが動く。「動かない装置に比べ,はるかに広い範囲を掃除できる」と研究論文を共著したプラハ化学技術大学(チェコ)の研究者プメラ(Martin Pumera)はいう。マイクロロボットがプラスチックに吸着すると,光触媒反応によって荷電分子が生じ,これらがプラスチック分子内の化学結合を切断する。

 

研究チームは4種類のプラスチックでこのマイクロロボットを試した。どれも1週間後の段階で劣化が始まっており,重量の0.5~3%を失っていた。マイクロロボットを小さな水路で自走させた後に磁石で回収した別の試験では,経路沿いのプラスチック粒子の70%近くが収集された。

 

実用性のほどは?

プメラはこのボットを海に放ってマイクロプラスチックを捕獲し,その後回収して何度も再利用する使い方を思い描いている。だがカリフォルニア大学リバーサイド校でプラスチック汚染を研究しているカウジャー(Win Cowger,この研究には加わっていない)は,マイクロロボットが役立つとしたら飲料水や廃水の処理に使われているような閉鎖系システムに限られるだろうという。

 

また現在のマイクロロボットはプラスチック以外の物質を吸着する場合もあるほか,水中に大量に残しておくのは安全ではないかもしれないと指摘する。プメラのチームはこの2つの懸念に対処するため,過酸化水素なしで機能する別の材料で作ったマイクロロボットを試している。(続く)

 

続きは現在発売中の2022年1月号誌面でどうぞ。

 

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