中高生が学ぶ サイエンス講義

3M、豊島岡女子学園で授業 〜フィルターの仕組みや液体の酸素濃度を解説

 新型コロナウイルス禍で注目された体外式模型人工肺(エクモ)は重症患者の血液に酸素を取り込ませ、二酸化炭素を取り除いて体内に戻す。この血液中のガス交換で重要な役割を果たす装置の部品が中空糸分離膜だ。米スリーエム(3M)の日本法人スリーエム ジャパン(東京・品川)はフィルター技術に関する特別講義を、豊島岡女子学園中学校・高等学校(東京・豊島)で9月下旬に開催。生徒たちは実験をしながら化学の授業で習う「ヘンリーの法則」などの理解を深めた。

技術を組み合わせるイノベーション
 講義には6月に日本法人社長に就任した宮崎裕子氏が出席し、冒頭に挨拶した。グローバルで事業を展開する3Mの使命について「サイエンスで人々の暮らしを豊かにすること」と説明。ダイバーシティ(人材の多様性)の観点から科学の世界に女性がもっと増えてほしいと豊島岡女子の生徒たちに語りかけた。

 次に3Mのイノベーションの考え方について、同社の宇田川敦志コーポレートR&Dオペレーション統轄技術部長が「接着や不織布など51種類の基盤技術を色々と組み合わせて新製品・新市場を生み出し続けている」と解説。現在の3Mの製品は約5万5000種類以上にのぼるという。

 続いてフィルター製品技術部の小松玲子氏が教壇に立ち、講義の本編がスタートした。小松氏は入社2年目の技術者でフィルター関連製品の用途開発を担当している。フィルターは医薬品、飲食料品、半導体など様々な製品をつくる工程で使われ、それぞれにサイエンスが詰まっていると紹介。その一例として、エクモの装置や脱気装置に使われる中空糸分離膜でガス交換が行われる仕組みを説明した。

「ヘンリーの法則」を実験
 分離膜はストロー状の空洞がある細い中空糸を束ねた構造をしている。中空糸の内側に酸素を流してガス圧力を加えると、中空糸の表面にある直径30nm~50nmの穴を通じて中空糸の外側を流れる液体に酸素が取り込まれる仕組みという。液体(溶媒)に溶ける気体の濃度が、気体にかける圧力(分圧)に比例する「ヘンリーの法則」に基づいている現象だと解説した。

 生徒たちはヘンリーの法則を体感する実験に取り組んだ。まず中空糸分離膜モジュールに水を流し、気体の圧力を変えたときの水の酸素濃度を測定した。真空ポンプで気圧を下げると酸素濃度は低下し、ポンプを止めると濃度が元に戻るのを確認した。

 さらに小松氏は中空糸分離膜を使って事前に作製したペットボトルの炭酸水4本を教室のテーブルに並べた。ガスの圧力を変えて作製した炭酸水で、生徒4人がそれぞれの炭酸水に溶け込んだ二酸化炭素の量(ガスボリューム、GV)を測定した。飲料市場で最近増えている「強炭酸水」はこのGVが比較的大きい商品。測定の結果、圧力を高くかけて作った炭酸水ほどGVが高いことが確かめられた。

 「私たち技術者は、このように実験の結果と理論に整合性が取れているかどうかを確かめながら技術開発を進めている」と小松氏。「中空糸分離膜モジュールは液体から気体を抜くことも、溶かすこともできる優れもの」と付け加えた。生徒からは「医療分野に関心があって参加した。エクモの仕組みがよくわかった」(高1)「技術の組み合わせでイノベーションにつなげるという考えが新鮮だった」(同)などの感想が聞かれた。

(講義では全員がマスクを着用。撮影時だけ一時的に外した)■

(日経サイエンス2021年12月号に掲載)
※所属・肩書きは掲載当時

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協力:日経サイエンス 日本経済新聞社