SCOPE & ADVANCE

循環DNAで病気を早期発見〜日経サイエンス2021年12号より

隠れた問題を探る新たな血液検査

 

腫瘍や成長中の胎児を含め,体内組織のどこかで細胞が死ぬと,そのDNAのかけらが血流に入る。これら循環DNAの発生源を特定する新たな検査法が開発された。隠れたがんの発見や,臓器移植の成否の監視,胎児の出生前診断などが容易になりそうだ。開発チームはDNAに表れた2種類の違いを解析することで,DNA断片の起源をほぼ完璧な精度で非侵襲的に特定する方法を明らかにした。

 

循環DNAは「診断の金鉱脈」だとコーネル大学の生体医工学者ド・ヴラマンク(Iwijn De Vlaminck,この研究には加わっていない)はいう。例えば腫瘍のDNAは,従来のスクリーニング検査では腫瘍を検出できない段階から血中に現れることがある。だが,体内の細胞はどれもほぼ同じゲノムを持っているため,循環DNAを探す初期の血液検査には限界があったという。「私たちの新手法は,これら循環DNA分子がどこからやってきたかを非常に高い精度で示す」と,eLife誌に掲載された今回の研究論文の上級著者となった香港中文大学の化学病理学者ロー(Dennis Lo)はいう。

 

DNAメチル化の特徴も解析

「GETMap」と名づけられた新検査法は,DNAの遺伝コードの違い(これを見れば移植臓器や成長中の胎児に由来すると判明する可能性がある)に加え,「DNAメチル化」という現象も測定する(GETMapは「遺伝的エピジェネティック的組織マッピング」を意味する英語の頭字語)。細胞は特定のDNA配列にメチル基を付加して遺伝子のオン・オフを調節している。この「メチル化フィンガープリント」を調べると,そのDNAがあったもとの組織を明らかにできる。

 

研究チームは妊娠中の女性と肺移植患者,がん患者を対象にGETMap検査を試した。妊婦から採取した血液サンプルを調べた例では,胎児の細胞のDNA(胎盤に特有のメチル化の特徴を持つ)と母親のDNAを,既存の方法よりも容易に区別できた。(続く)

 

続きは現在発売中の2021年12月号誌面でどうぞ。

 

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