SCOPE & ADVANCE

骨オルガノイドが登場〜日経サイエンス2021年8月号より

実際の骨形成を反映した初のモデル

 

 医学研究において,実験室で育てたオルガノイド(臓器の構造と機能を模した小さな細胞組織)の有用性はますます高まっている。脳や肺などの臓器については何年も前からそうした小型モデルができているが,骨組織のオルガノイドを作るのは特別に難しい。細胞外マトリックスのなかに様々なタイプの細胞が存在し,それらがコラーゲンと無機質からなるこのネットワークを常に再構築しているからだ。

 

従来の試みでは,人体の骨組織の細胞が形成されて細胞外マトリックスと相互作用する様子を再現できていなかった。だが最近,実物そっくりのモデルが開発された。治療の難しい様々な骨疾患をより深く理解するのに役立ちそうだ。

 

機械的な力を模擬して幹細胞を分化

Advanced Functional Materials誌に掲載されたこの研究は,骨形成の重要な初期段階に関する「統一見解」を反映した初のオルガノイドだと,論文の主執筆者となった蘭ラドバウド大学医療センターの細胞生物学者アキバ(Anat Akiva)はいう。アキバらは骨髄幹細胞に機械的な力を加えて人体内で骨形成の際に組織に加わっている応力を模擬すると,骨を作り出す「骨芽細胞」と成長を調節する「骨細胞」への分化を誘導でき,分化した細胞が機能に必要なすべてのタンパク質を作り出すことを発見した。またこの過程は,人間の骨組織に非常によく似た細胞外マトリックスの成長を促進した。4週間の培養後,小さな円柱状の骨組織ができあがった。これは生体中の骨形成で最初に生じるタイプの骨で,後にもっと成熟した形態の組織に置き換えられる。(続く)

 

続きは現在発売中の2021年8月号誌面でどうぞ。

 

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