中高生が学ぶ サイエンス講義

清水建設がオンライン講義 〜日比谷高生、免震技術を学ぶ

 新型コロナウイルスの感染拡大で緊急事態宣言下にあった2021年1月、地震に強い建設の技術を学ぶ特別講義がオンライン形式で開かれ、東京都立日比谷高等学校の生徒が受講した。清水建設の技術研究所(東京・江東)と在宅の生徒23人をウェブ会議システム「Zoom」で結んで実施。生徒は「免震構造」の解説や技術研究所のバーチャルツアーを視聴。建物を支える技術の理解を深めた。 

歴史的建造物を守る
 講義は2部構成。第1部は同研究所の奥村俊彦上席マネージャーが地震と建設の関係を解説した。奥村氏は大規模地震の発生年表を示しながら「日本列島は阪神・淡路大震災の1995年から再び地震の活動期に入った」と指摘。建物を地震から守る技術として免震構造を導入する建物が1995年以降増え、今では全国で5000棟を超えているという。

 一般的な「耐震構造」は建物の強度を高め、建物全体で揺れに耐えるようにするのに対し、免震構造は建物と地面の間に特殊なゴムを積層した免震装置を入れて地面の揺れを建物に伝わりにくくする。奥村氏は室内の振動実験映像を見せながら「免震だと家具なども倒れにくく、建物内の安全性も高められる。構造も単純で信頼性が高い」と説明した。

 歴史的価値の高い建物を地震から守るため、デザインは変えずに免震に改修する「免震レトロフィット」と呼ぶ技術も紹介された。近代建築の巨匠ル・コルビュジエが基本設計し、世界文化遺産に登録されている国立西洋美術館(1959年竣工)を清水建設が2年近くかけて初めて免震構造に改修した時の工法を解説。ほかにも日本銀行本館や日本橋三越本店本館、大阪市中央公会堂(中之島公会堂)などに免震レトロフィットを導入している。

世界の地震を再現
 第2部は同研究所の林章二上席研究員が講師となり、動画を見せながら技術研究所施設を紹介した。2015年オープンの「先端地震防災研究棟」には東日本大震災など過去に発生した世界中の地震の揺れを再現できる装置があり、長周期地震動による高層ビルの揺れも再現できる。最近は建物構造に加え、吊り天井や間仕切り壁など内装材の耐震実験も増えているという。

 技術研究所「本館」と「風洞実験棟」は特殊な免震構造を採用。林氏は2011年に起きた東日本大震災の時の本館の揺れと免震装置の挙動データを示しながら、当時本館で勤務していた自らの体験を交えつつ免震の効果を説明した。また,超高層ビル建設時の耐風設計やビル風を予測し低減対策を立案するための風洞実験のほか、建設技術が震災被害を教訓として発展してきた歴史を解説した。

 感染症対策のためオンライン形式の講義となった。受講生からは「コロナ禍で企業見学もできず、進路決定も難しい。(オンラインの講義は)そんな時期だからこそ貴重な経験になった」「研究所をリアルに見学したくなった」「安全や環境のための様々な工夫に驚いた」「免震の具体的な構造を理解できた」などの感想が聞かれた。  ■

(日経サイエンス2021年5月号に掲載)
※所属・肩書きは掲載当時

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協力:日経サイエンス 日本経済新聞社