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捕食する藻類〜日経サイエンス2021年5月号より

光合成と両刀使いの藻類が

小惑星衝突後の暗闇を生き延びた

 6600万年前の小惑星衝突は恐竜を絶滅させただけでなく,海をほぼ単純な微生物だけしかいない原始的なスープに戻した。海の生態系が完全な崩壊を免れたのは,光合成の能力を維持しつつ他の生物を食べることもできた殻に覆われた藻類のおかげらしい。この両刀使いの技が,長く続いた暗闇の期間,海の複雑な食物網の基礎を守り続けたという。

現生の円石藻。運動に寄与する穴がある。

FROM “ALGAL PLANKTON TURN TO HUNTING TO SURVIVE AND RECOVER
FROM END-CRETACEOUS IMPACT DARKNESS,” BY SAMANTHA
J. GIBBS ET AL., IN SCIENCE ADVANCES, VOL. 6, NO. 44; OCTOBER 30, 2020

鎧をまとったプランクトン

 この捕食性のプランクトンは鎧(よろい)を着けた藻のような生物で,「円石藻」というグループに属する。円石藻は2億年ほど前から存在し,現在も海洋性プランクトンとして様々な形態のものが海に浮遊している。だがその存在は,白亜紀末の大量絶滅の後に特に重要な意味を持った。小惑星衝突で生じた破片や山火事の灰が空を覆い,太陽の光を2年間にわたって遮った時期だ。この長い「衝突の冬」の間,光合成はほぼ完全に停止した。

 「海洋の食物網の基礎は陸上と同様に光合成だが,海の場合は微小な細菌と藻類が光合成を担っている」と,Science Advances誌に掲載された今回の研究論文の主執筆者となった英サウサンプトン大学の古生物学者ギブズ(Samantha Gibbs)はいう。円石藻は白亜紀にこのエネルギー変換を担った生物のひとつで,円石藻の種の約90%は小惑星衝突後に絶滅した。

化石記録から進化をモデル化

 光合成に必要な光がなくなったため,円石藻のうち「衝突を生き延びたわずかな種は食物を捕捉して摂取できるタイプだった」とギブズはいう。円石藻の化石に見られる小さな穴は,これらの生き延びた種が鞭毛を持ち,それを使って他の生物を付け回していたことを示唆している。研究チームは化石記録に残る捕食性の円石藻の量を追跡し,この生物の進化をモデル化した。太陽が消えた世界に円石藻がどのように適応して生き延びたのか,そして太陽が戻った後に再び繁栄した過程を示した。

 円石藻のような光合成を利用する生物が太陽光のない世界をどのように耐えたのかは,専門家の長年の謎だった。「この研究は,この絶滅事象のパラドックスの解明に大きく前進する実に興味深い発見だ」とテキサス大学オースティン校の古生物学者ロウェリー(Christopher Lowery)は評する。(続く)



続きは現在発売中の2021年5月号誌面でどうぞ。

 

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