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ビワハゴロモの侵入〜日経サイエンス2021年5月号より

拡散を抑えるため卵を検出する新装置の開発が進む

 中国原産のガに似た昆虫,シタベニハゴロモが2014年にペンシルベニア州バークス郡で最初に発見されて以来,この体長2~3cmのビワハゴロモ科の虫は米国東海岸の林業と果樹,ワイン産業に大損害を与えている。これまでにペンシルベニア州の多くの郡のほか,ニュージャージーとデラウェア,メリーランド,バージニア,ウェストバージニア,ニューヨークの各州の一部に広がった。

GETTY IMAGES

 植物を害するこの外来種は,自動車の外板を含め,ほぼどんな表面にも卵を産みつける。そうした卵塊は「ヒッチハイクではるか遠くに達する場合があり,最も心配だ」とドレクセル大学の化学工学・生物工学者タン(Maureen Tang)はいう。タンの新たなプロジェクトでは,卵塊の写真をクラウドソーシングで集め,卵を見つける高度な人工知能アルゴリズムをそれらの写真を使って訓練している。

卵塊を携帯型の撮像装置で検出へ

 ビワハゴロモの成虫が食べる植物は70種を超え,蜜のような排泄物を残す。この排泄物はスズメバチなどのハチを誘引するほか,黒いすすのようなカビを生やして植物に大きなダメージを与えることもある。ビワハゴロモの成虫は寒くなると死ぬが,春になると30個から50個の卵からなる卵塊(外観は灰色のパテのように見える)から新しい世代が生まれる。

 開発中の画像処理アルゴリズムを数千枚の写真で完全に訓練したら,卵がどこまで広がっているかをリアルタイムで検出できるようになるだろうと,開発にあたっているドレクセル大学の機械工学者コントソス(Antonios Kontsos)はいう。まずは車両基地や出荷ヤードなど,貨物コンテナが長期間置かれていることが多い高リスクの場所で使われるだろうとタンはいう。それらのコンテナの下に卵塊がついているかどうかを人間が確認するのは難しく危険なためだ。ビワハゴロモが好むニワウルシ(Ailanthus altissima)の木は線路沿いに生えていることが多い。

 デジタル画像解析装置とドローンを使った害虫調査はすでに行われており,作物や樹林の上を飛ばせて顕著なダメージの有無を確認する。だが,今回のように卵を近くからとらえる独立型の検出システムは新しいとタンはいう。(続く)


続きは現在発売中の2021年5月号誌面でどうぞ。

 

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