東洋紡、循環型社会に挑む 〜洗足学園中高生が廃プラの課題考察
身近な素材のプラスチックが抱える環境問題とその対策を考える特別講義が洗足学園中学高等学校(川崎市)で2020年12月に開かれた。東洋紡の社員が「海洋プラスチックごみ」「地球温暖化」という2つの課題を解説。環境負荷を軽減する新材料の開発など、 課題解決に挑む同社の取り組みを紹介し、受講生に循環型社会を実現する重要性を訴えた。
プラスチックの環境負荷減らす
教壇に立ったのは東洋紡のリニューアブル・リソース事業開発部の久保田冬彦部長と、同社総合研究所の龍田真佐子氏。受講生はまずプラスチックの基礎知識として、ポリエチレンやポリプロピレンなど物性の異なる多様な素材があることや、ペットボトル原料になる代表的な素材ポリエステルを例に化学合成による製造法やリサイクルの方法などの説明を受けた。
廃プラ問題は中高生にも関心が高く、「環境に悪いなら使わない選択肢もあるのでは」と問う生徒も。久保田氏は「プラスチックは便利で役立つことが多く現代社会には欠かせない。悪い面を減らすことが重要」と応じ、環境負荷を減らす研究開発に力を入れていると語りかけた。
環境問題を多角的に捉える
龍田氏は海にマイクロプラスチックが残留する問題の対策として、生分解性プラスチックへの切り替えを示した。ただ、プラスチック製品に求められる耐久性と自然界での分解性は相反するため、両立させるのはチャレンジングな研究テーマになっているという。またプラスチック焼却時に温暖化原因となる二酸化炭素が増える問題については、石油の代わりにトウモロコシなどの植物を原料にする研究が進んでいると説明。東洋紡ではペットボトル素材PETの代替として、100%植物由来のPEFをオランダの企業と共同で開発する計画を進めているという。
2つの課題はいずれもリサイクルによるごみの減量が基本の対策になる。久保田氏と龍田氏は「社会で分別回収の仕組みを整えることと、環境負荷を抑える技術開発を同時に進めることが大切。循環型社会の実現へ挑戦していく」との思いを語った。受講生からは「プラスチック問題といっても単純でなく、多角的に物事を考える大切さがわかった」などの感想が聞かれた。■
(日経サイエンス2021年4月号に掲載)
※所属・肩書きは掲載当時
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協力:日経サイエンス 日本経済新聞社